追放令嬢、魔導と科学で文明開花いたしますわ〜辺境から始める世界再設計〜

☆ほしい

文字の大きさ
62 / 66

第62話

しおりを挟む
 わたくしは次なる敵性反応の座標を即座に捕捉し、現場へと転移いたしましたの。転移直後、肌を刺すような圧力とともに、空間そのものが異常な振動を始めましたの。

 なるほど、これは通常の次元干渉波ではありませんわ。むしろ、空間の論理構造を裏返そうとする……いえ、“書き換え”を伴う魔導的侵略現象。これまでの敵とは、根本から異なる波動特性を持っていますの。

 「リゼ、波動解析を急ぎなさい。可能なら、敵の根源演算構造を抽出しなさい」

 「了解です! ただし、相当な干渉密度……完全解析には時間がかかりそうです!」

 「よろしいわ、時間はわたくしが稼ぎますわ」

 視界を埋め尽くすように現れたのは、金属光沢を帯びた球体群でしたの。だが単なる兵器ではございませんの。その中心には脈動するような有機核が存在し、まるで意思を持って動いているように見えますの。自己判断、自己適応、自己増殖型――すなわち、魔導生命体の応用種ですわね。しかも、この反応は……セラフィムのそれと類似していますわ。

 「成程、貴女たち……セラフィムの残滓から抽出された模倣体ですのね。クロノス機関、ついに魂まで技術として扱い始めたのかしら」

 球体群が一斉に震え、無数の刃状の触手を伸ばしてまいりましたの。空間を切断する軌跡が迫りくる中、わたくしは即座に反応。

 「《重層障壁・クロノライズ》起動」

 六重構造の魔導防壁がわたくしの周囲を覆い、初撃をすべて弾き返しましたの。その隙に、わたくしは展開していた魔導式を変換し、迎撃モードへと移行。

 「《位相加速式・ブレイズノート》、全力展開。周囲四十メートル、焼却領域として指定」

 空間が燃え上がるように変質し、敵の前衛球体が一斉に融解しましたの。しかし、奥からさらに同型の球体が迫ってきますわ。どうやら、単体の撃破には意味がない。敵全体でひとつの演算ネットワークを構築している様子。となれば、やるべきことはひとつですわ。

 「リゼ、相互演算ルートを突き止めなさい。中央ノードを突けば全体を停止させられますわ」

 「はい! 該当ノード、特定……中央塔地下第七層のエネルギー中枢を核にしてます!」

 「そこですわね。ならば、切り裂いてあげますわ」

 わたくしは転移術式を再展開し、指定座標へと一瞬で跳びましたの。そこには、無数の演算触手がうねる中心核が鎮座しておりましたの。もはや塔の構造ごと取り込もうとしていますわ。

 「《断絶干渉術式・レムナントバインド》展開。演算ネットワークの流動性を封鎖しますわ」

 青白い術式陣が展開され、中心核の波動が一時的に停止しましたの。この隙を逃す手はありませんわ。

 「《次元粒子衝撃槍・ヴァルシオン》、発射」

 魔導演算によって構成された実体化槍が空間を突き破り、敵の核へと直撃。強烈な振動とともに、周囲の触手が爆散しましたの。しかし、まだ反応がありますわ。中枢演算コアは破壊されていない。

 「ほう、しぶといですわね。では、最終段階に移行しましょうか」

 わたくしは《プロメテウス》の最深部と接続し、秘匿されていたエネルギーコア《セレスティアル・リアクター》を解放しましたの。高次元魔導炉心により、魔力演算速度は従来の千倍にまで跳ね上がりますの。

 「限界を超えるのが、わたくしという存在ですわ」

 生成された《オメガ級魔導剣・アルティメットルミナス》を手に、中心核へと一気に斬り込みましたの。刃が空間を裂き、因果律ごと断ち切った瞬間――核が崩壊し、敵の全演算構造が停止。

 リゼからの通信が入りましたの。

 「敵性魔導ネットワーク、完全停止を確認! 全区域において敵機能、凍結状態です!」

 「当然の結果ですわ」

 わたくしは剣を収め、崩れ落ちる構造体を見下ろしましたの。だが、ほんの一瞬だけ、視界の端に微細な光点が走りましたの。わたくしはそれを逃さず、即座に追跡。

 「リゼ、エネルギー残滓を追跡。微細粒子帯域に逃走経路が存在しますわ」

 「該当座標をマーク! 東部地下施設《エクシード・ラボ》に向かってます!」

 「やはりそこでしたのね。ならば、全防衛隊に通達。ラボ施設への立ち入りを即時禁止。わたくしが直接向かいますわ」

 《エクシード・ラボ》――それは未来都市《アウローラ》建設以前、旧帝国時代に使用されていた、古代魔術と科学融合の実験拠点。かつて廃棄されたはずの施設ですが、今でもわたくしの管理下にありましたの。どうやら、そこにクロノス機関が最後の手を隠していたようですわ。

 「ふふ、最後の舞台にふさわしい場所ですわね。クロノス機関、貴様たちの企み、余さず暴いて差し上げますわ」

 転移ゲートを構築し、《エクシード・ラボ》の最深部へと向かう道を切り拓きましたの。わたくしの周囲には、空間そのものを拒絶するような圧力が漂っておりますわ。

 そこに待ち受けるのは、ただの敵ではありませんわね。わたくしの記録によれば、あの施設には、かつて開発されかけていた“全世界再構築機構”――通称《エンジェル・コード》が眠っているはず。セラフィムを模倣して構築された意識ネットワーク、その集合体を用いて、世界そのものを書き換えるという禁忌の技術。

 「来ましたわね、最終計画の痕跡が。リゼ、全ネットワークを《クローズドリンク》へ移行。外部干渉を遮断しなさい。ここから先は、わたくし一人で対処いたしますわ」

 「……はい、お嬢様。どうか、ご無事で」

 転移が完了し、わたくしは《エクシード・ラボ》最深部――中枢制御室へと到達しましたの。だが、扉の向こうから感じる波動は、まるでセラフィムそのもの。いいえ、それ以上の圧力すら伴っておりますの。

 「ふふ、ようやくここまで来ましたわね。さあ、クロノス機関。全ての真実を見せていただきますわ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...