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知らない第三者

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 一度、大地と合流しようと思い、上の階に行く事にした。今の所、最後の鍵は見つかっていない。

 大地は見つけただろうか。

 ゆっくりと階段を上りながら、何となく狼の絵画を見た。その時、違和感を覚えた。
 何か変わった? さっき見た時確か狼の鼻黒かった。それなのに今はキラキラと輝く赤だった。

 もしかしてこれが鍵か。本当に性格が悪過ぎる。彰の手に届かない場所に設置するなんて。

 そう思い、手を伸ばしたが途中で止めた。

 彰は頑張って探しているのに、全て俺たちの手で渡してしまっても良いのだろうか……。そう思って、彰の手が届く位置まで、絵画の高さを低くした。これなら彰も分かるだろう。

 甘すぎるだろうか。それでも可愛い彰が喜ぶのならそれでも良いかと思った。

 鍵を見つけたと大地に伝えて、次の謎を探さないとと思い階段を駆け上がった。
 大地を探して、階全ての部屋を見て回ったが大地は居なかった。
 もしかして、監視室だろうか……。

 そう思い、近くの客室から隠し通路に入って監視室に向かった。

 薄暗い中を歩き、もうすぐ監視室という所で誰かに右手を掴まれて引き摺られ、近くの空洞に引き込まれた。

 乱暴にその手を振り切り、駆け出そうとしたその時に聞き覚えのある声が聞こえた。

「待って海斗! 俺だよ! 大地!」

「大地?」

 暗い中で姿は見えないがこの声は大地だ。

「何でこんな事?」

「海斗だけに聞いて欲しい事があったから……」

 俺にだけ聞いて欲しいこと? もしかして彰に関して何か見つけたのだろうか?

「何があった?」

「俺達の他に誰かいる……」

「どういう事だ」

「さっき、鍵を探してたんだけど。誰かが隠し通路に入っていったのを見たんだ」

「兄さん達じゃないのか?」

「違う。背中しか見えなかったけど、あんなに太った奴見た事ない」

 確かに俺達兄弟の中でガタイの良いのは拓也兄さんだが太っているとは違う。

「この事、兄さん達に言ったか?」

「言ってない」

「少し黙っていた方がいいかも知れない……」

 くそ、嫌な憶測を思い付いてしまった。そうでない事を祈るしかない。

「どうして?」

「もしかすると……」

「二人して暗闇で何を話してる?」

 いきなり部屋を光でてらされた為、目が眩んだ。薄く目を開き、光に慣れた視界で見た懐中電灯を持った人物は拓也兄さんだった。

「なんだ拓也兄さんか……」

 そう言った大地は鬱陶しそうにしていた。

「何だとは何だよ。久しぶりに会ったって言うのに」

「それで何の用だ?」

 そんなのどうでも良いと言う様に言い放った。

「海斗……良太の兄貴が呼んでる」

「分かった」

 大地と共に拓也兄さんを置いて監視室へと向かった。大地に言いたい事があったのに、邪魔が入った。くそ、この屋敷は今どうなってるんだ。

 監視室に入った途端に、ナイフが俺の頭目掛けて飛んできた。躱そうとしたが背後には大地がいる。躱せば大地に刺さってしまう。

 瞬時にナイフを素手で叩き落とした。

「何を!」

「それはこっちのセリフだ」

 そう言った良太兄さんの手にはもう一本のナイフが握られていた。

「はぁ?」

「双子共々、ルール違反を侵すなんてどう言う事だ」

「あんなルール守るなんて誰が言った!」

 良かった。謎解きの事を言われるんじゃ無いかとひやひやした。

「僕を怒らせたいのか……」

 そう言った良太兄さんの瞳は狂気に染まっていた。昔の良太兄さんは家族に刃物を向ける人じゃ無かった。この人はもう、あの頃の優しい兄さんじゃない!

「海斗! 良太兄さんの言う事聞きなさい! 良太兄さんもナイフはいけないと思いますよ」

「聖司、お前はどっちの味方だよ」

「私は中立です」

「良太兄さん、他のルールは守るよ。だけど、あの子のアフターは勝手にさせて貰う」

 彰のアフターは譲れない。

「……勝手にしろ。だが、フォローも程々にしないとどうなるか分かってんだろうな」

 ここは譲った方がいいかも知れない。あまりにも頑なになれば、被害を被るのは彰だ。

「分かってる」

「それなら良いが、な!」

 そう言って良太兄さんの手から放たれたナイフがある絵を貫いた。その絵は、可愛い羊が野山を駆け回っている絵だった。ナイフが深々と羊を胴を貫いていた。まるで彰を殺すと言われている様で、少し寒気がした。

「さぁて、時間だ。次は聖司だったか。コールは幸平やるか?」

 良太兄さんから、幸平がマイクを受け取っていた。

「良いの? あの子ビビらせて見たかったんだよね。そうだ、自慰させちゃっても良い?」

「良いが、そんな事どうやらせる気だ」

「可愛くイけたら、謎解きのヒントをあげるとか、捕まった時一回だけ逃してあげるとかどうかな?」

「それ本当にやるんですか?」

 疑わしいと言うように聖司兄さんが視線を向けている。

「嘘に決まってんだろ。イった後にダメ出しして残念でしたって感じにするんだよ。それから、いかにエロくていやらしい姿だったか感想を言ってやるんだ。壊れちゃうかもなぁ」

 幸平がいやらしく笑った。外道め。彰はただですら怯えてるのに、そんな事したら本当に壊れてしまうかも知れない。

 そんなの事やらせるか! 幸平に近づき、マイクを奪い取った。

「あ! おい!」

 マイクを取り返そうと伸びてくる幸平の手を躱し、マイクのスイッチをオンにした。
 連動しているのか、チャイムが鳴り響いた。

「時間となりました。第三の狼が放たれます。羊さん可愛い!!」

 そう言って、マイクをオフにして良太兄さんにマイクを投げ渡した。

「海斗! 何すんだ!」

「お前、頭可笑しいだよ! だから、すぐ彼女に振られんだ! それと、敬称つけろ!」

「はぁ! 何だと! 頭可笑しいと振られたのは関係ないだろ!」

「ほう、頭が可笑しいのは認めるのか?」

「うるせえ!」

 幸平が俺の胸ぐらを掴んできた。幸平ごとき躱すのは簡単だが、あえて掴まれてやった。俺の中で幸平にしてしまった事は俺にそうさせるだけ大きくなってしまった。

「やめなさい! 海斗、幸平!」

「そうだよ。海斗、喧嘩しても幸平の変態は治らないって!」

 俺達を止めようと、聖司兄さんと大地が間に入ってきた。

「大地、それ喧嘩止める気ないだろ」

 大地にダメ出ししつつも、拓也兄さんが今だ暴れる幸平を羽交い締めして押さえていた。

「黙れ!!」

 良太兄さんの一喝でみんな黙り込んだ。

「取りあえず、聖司と双子はとっと行け!」

 その言葉に従い、大地と共に監視室を出て行こうとした。

「海斗! 後で覚えてろ!」

 幸平のその言葉を無視し、監視室を後にした。心の中で涙を零し謝り続けながら、次の謎を探しに向かった。
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