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第三十八話 今度こそ好きだと言いたい (寿々子サイド)

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始業式の日の朝。

昨日の夜も海春くんのことを想っていた。

眠い。少し睡眠が足りないところがある。

しかし、そういうことは言っていられない。

わたしは今日、海春くんに告白しようと決めた。

春休み中、悩み続けたわたし。

もうこれ以上、告白しないでいることに耐えられなくなっていた。

断られてもいい、今日断られたとしても、また時間をあけて、告白すればいい。

想いを持ち続けることが大切。

それだけ海春くんを恋人にしたいという気持ちが強くなっていた。

しかし……。

うまく告白できるのだろうか。それがまた悩むところ。

とにかく、あいさつの後、すぐに二人きりになる為の約束を取り付けなくてはならない。

それがわたしに出来るのだろうか。

今まではそれが出来なかった。

告白しようとすれば、恥ずかしい気持ちは一旦忘れて、熱を込めていかなくてはいけない。

そう思っているうちに、時間はどんどん経っていく。

もう学校へ行かなくてはいけない。

わたしは、身支度を整え始める。



学校では、生徒たちがグラウンドに集まってきたが、わたしは特に立ち止まることもなく、自分の教室に向かう。

海春くんのことで頭が一杯だったからだ。

教室に着くと、星好くんと鈴乃ちゃんにあいさつする。

二人とも今日も仲睦まじい様子だ。

こんな風に海春くんとなれたらなあ……。

と思っていたら、鈴乃ちゃんが星好くんの頬をつねり始めた。

星好くんが、他の女の子と話しだしたのが気に入らないらしい。

話すくらいいい気はするんだけど。

鈴乃ちゃんは、いつでも星好くんが自分の方を向いていないとダメなのかな。

星好くんも大変だけど、鈴乃ちゃんもそれだけ星好くんのことが好きだと言うことなんだろう。

ちょっと行き過ぎな気はするけど、こういう愛の表現のあると思う。

わたしはそこまではできないと思うけど。

そう思っていると、りなこちゃんが傍に来る。

「おはよう。寿々子ちゃん」

「おはよう。りなこちゃん」

わたしたちは、教室の端の方へ移動する。

「なんとかこの四月中に、海春くんには告白したいところね。もうその決心はできた?」

春休み中もりなこちゃんとは、ルインや電話のやり取りをしていた。

りなこちゃんの方は、なるべく海春くんの話題を出さないように気をつかってくれていたが、わたしの方は、どうし
ても海春くんのことを話題にしたくなる。

それだけ海春くんのことを想っているということだと思う。

そんなわたしをいつも元気づけてくれるりなこちゃん。ありがたいと思う。

「うん。四月中と言わず、四月中旬までには告白できるようにしょうと思っている」

「期待しているわ」

「もし断られたとしても、何度でも告白するつもりでいる」

「その気持ちが大切よね」

「りなこちゃんのようなラブラブカップルを目指していくね」

「まあわたしたちの場合、もう少し彼の方が積極的になってくれるといいんだけど。まだキスをしていないのよ」

顔を赤らめながら言うりなこちゃん。

りなこちゃんの話によると、彼はまだまだ遠慮しているところがあるとのこと。

でも以前と違って、「好き」という言葉は積極的に言ってくれるようになったので、うれしいと言っていた。

ごちそうさまです。

「とにかく想いを伝えていけば、きっと恋人どうしになれる」

「ありがとう。わたし、海春くんと絶対恋人どうしになってみせるわ」

「そう。その気持ちでいくのよ」

そう言うと、りなこちゃんは微笑んだ。



しかし……。

結局、始業式の日は、告白ができなかった。

どうしても、二人っきりになりたいということを、わたしから言うことができない。

これで何度目なんだろうか。

わたしは、ガックリしながら家路につく。

こんなことを繰り返していたら、いつまで経っても告白ができない。

どうすればいいんだろう。

いや、そんなことを思っているんだったら、それこそ今から海春くんの家に行くべきなんだろう。家に行って、告白することができればいいのと思う。

しかし、それは春休みの時に悩んで断念したことだ。

小学校三年生の時に、海春くんの誘いを断らなければ……。

そして、せめてあの後、すぐにわたしから海春くんを誘っていれば……。

その思いはどうしてもある。

今のわたしだったら、海春くんにすべてを捧げることができる。

もう海春くんに寂しい思いはさせない。

毎日海春くんの家に通って、炊事。洗濯、そうじをしていきたい。

一人くらしの彼の負担を、少しでも減らしていければと思っている。

料理はまだ下手な方だけど、今一生懸命努力している。海春くんにおいしいと言われたら、こんなにうれしいことはない。

まずわたしの想いを伝える。この好きという気持ちを海春くんに伝える。

それができなければ、わたしは海春くんの為に何もすることはできない。

もうこれ以上、時間を無駄にしてはいけない。

次の月曜日。

今度こそわたしは、海春くんに告白する。

もう幼馴染としての存在だけではなく、それを越えた恋人どうしになり、ラブラブになっていく。

そして、婚約、結婚をする。

わたしは、心に決めるのだった。
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