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第二十一話 賊の要求

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「もう一度だけチャンスをやる。お金を出せ。そうすればお前はここを通ることができる。こんな簡単なことはないだろう」

周囲は囲まれ、脱出の可能性はほぼゼロ。

普通の状態でも難しいのに、わたしの体は疲れ切っている。

おとなしくお金を出すべきだろうか。

主人やその奥さんも、賊の万が一襲われた時はお金を差し出すしかないと言っていた。

今までは、お金さえ相手に差し出せば、生命を取ることはなかったそうだ。

しかし、わたしにはお金は少ししかない。

全額を差し出すことになるだろうが、そんなことをしたら、どちらにしても生きていけない。

王都までたどり着くことはできないからだ。

いや、それよりも大切なことがある。

それはプライドだ。

わたしは、子爵家の令嬢で貴族の一員だった。

賊に襲われたからと言って、屈服するのは恥だ。

そんな恥を背負ってまで生きていたくはない。

もう既に婚約を破棄され、家を追放されるという屈辱を味わった身。

これ以上恥を背負うぐらいだったら、ここで生命を奪われた方がましだ。

わたしは決断した。

「お断りします」

はっきりと、そして力強く言った。

体は疲れ切っている。でも気力はまだ残っている。

相手はとても驚いたようだった。

「お嬢さん、自分が何を言っているのかわかっているのか? お金を我々に差し出さないということは、ここでお前の生命が終わるということだぞ!」

リーダーと思われる男は、剣をわたしに突きつけながら言う。

「いいんです。もともとわたしには、お金はほとんどありません。そして、ここで恥をしのんでお金を差し出すぐらいだったら、ここで生命を失うことを選びます」

「なんて強情な女なんだ……、お前、生きたくないというのか?」

「生きたくないとは言ってません。わたしだって、自分で言うのもなんですが、まだ若いのでまだ生きていきたい気持ちは強いです。でもあなたたちの要求に屈してまで生きるというのは、わたしのプライドが許さないのです!」

「全く嫌な女だ。でも根性が座っていることだけは認めてやる。俺たちに剣を向けられても全く動じないんだからな」

「褒めていただいてありがとうございます」

「別に褒めてはいない! 全く、お金さえ差し出せば、ここを通るのを許すと言ってやっているのに!」

憤懣やる方ないと言った様子。

しばらくの間、彼は同じ態勢を維持していたが、

「じゃあ、最後にもう一度譲歩してやる。お金がほとんどないと言っていたな?」

と言った。

「言いました。もうほとんどありません」

「ならば、土下座して我々に許しを請うのならば、ここを通してやる」

彼がそう言うと、他の四人は、

「それでいいのですか? お金をこいつから取るべきでは?」

と言ってくる。

「この女、嫌なやつだが、その根性は少しだけいいと思った。だからチャンスをあげるのよ」

他の四人は不満そうだったが、

「リーダーがそう言うなら」

と口々に行って、彼の言うことに従った。

しかし、わたしは、土下座などするつもりはない。

彼等に屈することに変わりはないからだ。

「土下座するということは、結局、あなたたちに屈服することになるのです。そんなことはできません!」

わたしは、そう力強く言った。

「よくもまあ、俺の前でそういうことが言えるものだ。俺がここまで譲歩したというのに、なぜまだ屈しないのだ! 腹が立ってしょうがない!」

彼は、また怒り始める。

「ここまでコケにするのだったら、もう決断するしかないな」

彼はそう言うと、一旦自分の手元に剣を戻した。
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