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第六十五話 お茶会の始まり

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そして、翌日の朝。

夜、雪が降っていたが、朝には止んだ。

まだ空の多くは雲に覆われたままだが、少しずつ雲の量が減り始めているので、午後には晴れてきそうだ。

朝、朝食を食べた後、少し外に出てみたが、雪が周囲に積もっていることもあり、空気はいつもより冷たい気がする。

いつもはその冷たさを、少しつらく思うところだけど。

でも今日は、そこまでつらいとは思わない。

心がそれだけウキウキしているということだろう。

部屋に戻った後は、本を読んだり、対策案の構想を練ったりした。

殿下は、

「休日は、なるべく仕事のことは忘れた方がいいです」

とおっしゃってくれていたが、やはり忘れることは難しいので、仕事の中の一つである構想案を練ることは、時間を区切って行うことにした。

ラディアーヌ様の侍女が来る時間が近づいていくと、朝一旦身支度を整えてはいたが、もう一度整え直した。

ラディアーヌ様に失礼のないようにしなければならないと思う。

そして、身支度を整え直してから少し経った時。

ドアをノックする音がする。

「お嬢様、御迎えの方がまいりました」

リデーヌさんの声。

「どうぞお入りください」

「失礼します」

ドアが開くと、リデーヌさんと、ラディアーヌ様の侍女らしき女性が入ってきた。

「それでは、これからラディアーヌ様のところにご案内いたします」

「よろしくお願いします」

わたしは、侍女に案内されて、ラディアーヌ様の部屋へと向かった。



ラディアーヌ様の部屋は、殿下のいる建物やわたしのいる建物とは別の建物の中にある。

わたしの部屋からは、少し離れていた。

この王宮にきて、自分以外の個人の部屋に入るのは初めてだ。

しかも、王女様の部屋。

緊張してくる。

ラディアーヌ様の侍女がドアをノックし、

「ラディアーヌ様、フローラリンデ様をお連れいたしました」

と言う。

「案内御苦労様でした。フローラリンデさん、どうぞお入りください」

侍女がドアを開け、わたしは、

「それでは入らせてもらいます。失礼いたします」

と言って部屋の中に入った。

しかし、ラディアーヌ様の次の指示を仰ぐ為、一旦ドアの近くで待機する。

「どうぞ。今日はこちらでお茶会を行います」

ラディアーヌ様は、テーブルの前にある席に座るようにうながす。

「ありがとうございます」

わたしは、席の前まで行く。

「ようこそいらっしゃいました」

微笑むラディアーヌ様。

「お招きいただき、ありがとうございます」

わたしは頭を下げる。

「そんな、かしこまらなくてもいいですわよ。さあ、おかけになってください」

ラディアーヌ様とわたしは、着席した。

テーブルには、お菓子が並んでいて、紅茶のポットとティーカップが置かれている。

まずわたしたちは紅茶とお菓子の味を楽しむ。

優雅な雰囲気だ。

お茶会自体、久しぶりなわたし。

子爵家でのお茶会には、継母の方針で参加できなくなっていたので、もう何年も参加していないし、友達とのお茶会も二年ぐらい開いていなかった。

それだけに、今日は招かれただけでもうれしい。

「フローラリンデさん、わたし、もっとあなたと仲良くなっていきたいです。あなたはわたしに遠慮している気がします。遠慮なんかしなくていいですのに」

「わたしは貴族ではありませんので、王女様ということになると、身分がかなり違います。遠慮というか、礼儀をもって接していかなくてはいけないと思っています。第一、こうして招待していただけるだけでも、普通はありえないのですから」

「そんなことは言わないでください。言っていることは理解しますが、わたしはあなたのことを、もっと理解したいです。あなたともっと打ち解けたいです。あなたともっと親しくなっていきたいと思っています」

ラディアーヌ様は微笑みながらそう言った。
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