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2 第二話

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 幸いあの後魔物に襲われることは無かった。近くにそれなりに大きい街があったのも幸運だ。

「身分証の提示を」

 街に入る際に身分証を求められたため、俺は冒険者登録証を取り出して見せた。
 冒険者登録証は冒険者ギルドから発行されている身分証で有り、どの街でも基本的に統一されている。
 だが、目の前の男性は何故か何度も俺の登録証を見ては唸っていた。

「おかしいな。ギルド石が反応しない……」

 ギルド石……? そんな聞いたことの無い言葉を男は呟いた。

「君、ちょっと来てもらおうか」
「はい……」

 他の人とは違う道へと連れていかれる。気づけば数人の衛兵が後ろから付いてきていた。
 これ、もしかしたら不味いのでは……。

 案内されたのは石造りの小汚い部屋だった。床には血の跡もあるし、どこからどう見ても歓迎されているという雰囲気では無い。

「単刀直入に聞くが、君は本当に冒険者なのだね?」
「は、はい」
「しかしだね。この登録証にギルド石が反応しないのだ。偽造……じゃあないだろうね?」
「そんなことはありません!」

 咄嗟に声に出ていた。偽造なんて絶対にあり得ない。何よりやる意味も無い。
 中には冒険者としての格を上げるために偽造する者もいるみたいだが、俺は断じてそんなことはしていない。

「はぁ……埒が明かないな。お前ら、やれ」
「ウス」
「お、おいっいきなりなんだ……!?」

 男の一声と共に衛兵達が俺の体を拘束した。

「素直に言った方が身のためだ」
「だから俺は偽造なんかしていない……!」
「はぁ、仕方が無いな。忠告はしたぞ」
「おい待て……何をする気だ……」

 衛兵は俺の腕を持ち上げ、そのまま親指を握った。

「まずは一本……!」
「やめろぉぉっ……!! ……ぁ?」

 衛兵は全体重をかけて俺の親指を折ろうとしていた。だが、俺の指はどういう訳かびくともしていないようだった。

「どうなってんだ……?」
「それはこちらが言いたい。貴様、どんな小細工をした?」

 小細工って……何もしていないんだけどな……。

 衛兵はその後もどうにかして俺の指を折ろうと奮闘していたのだが、彼が指を折るよりも先に部屋の扉が強く開け放たれた。

「ちょっと……! 何やってんの……!?」

 そこに立っていたのは一人の少女だった。
 金髪のショートに色白で整った顔。間違いなく美少女と言えるものだ。そんな少女がこんな暗く汚い場所に何の用なのだろうか。

 と思えばその少女は俺の方に向かってきた。え、俺何かしたのか……って今こうしてここに居る時点で何かやったようなものなのか。

「大丈夫か?」
「……え?」

 さらに不味い状況になるのかと思えば、その少女は何と俺に労いの言葉を投げかけて来た。

「この者をすぐに冒険者ギルドに案内して」
「だ、だがその者は身分証が……」
「そんなの私がどうにかする」

 少女はそれだけで軽く数人は殺せそうな目力で男にそう命じた。
 となるとこの子はかなりの権力者か何かなのか?

「はぁ……すまなかった」
「俺はその、だ……大丈夫ですから……」

 正直わからないことだらけで大丈夫とは言い難いが、それでも話を面倒くさくする恐れがあるのなら今は話を合わせておこう。
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