Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳

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第四章

第六話 バロン階級って言っても、所詮は上の階級からしたらザコだよな。

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ゆっくりと歩きながら、一体の魔物がこちらに向ってくる。

 人の形をしており、顔には仮面を被っていた。そして右手には赤い液体の入ったグラスを持っている。

「俺はバロン階級だ。今までお前たちが戦ってきたノーマル種のザコとは次元が違う」

 バロン階級は、男爵の爵位を与えられた魔物や魔族の階級だ。ハイクラスやエレメントクラスに比べれば脅威にあたる存在。Aランクの冒険者が数人いてやっと互角に渡り合えるだろう。

 だけど、俺にはそんなことは関係ない。

「バロン階級だがなんだか知らないが、今の俺たちは無敵だぜ!」

「ヒャッハー! 死ね!」

 先ほどの戦いで自信を持ったのか、バロン階級の魔族相手に、複数の冒険者たちが接近すると剣を振り下ろす。

 彼らの一撃は魔族に直撃した。だが、刃が触れているはずなのに鮮血が流れる様子がない。

「な、何だと!」

「刃が通らない!

「クハハハハ! 強化魔法を使っているようだが、この程度か! 期待外れだ! この魔法を使った術者もたいしたことがないな!」

「何ですって! シロウの魔法をバカにしますの!」

 魔族が嘲笑うと、どうやら挑発に乗ってしまったようだ。マリーが声を荒げる。

「ほう、こいつらに強化の魔法を使った者はシロウというのか。この程度の強化魔法しか使えないとは、笑わせてくれる。いかなるザコでもマシにさせるのが、バフ使いというもの。あ、いや失敬、これが人間の全力であった。ザコなりに頑張った結果がこれと言うわけだ。クハハハハ」

 再びバロン階級の魔族がバカにするように笑う。

「シロウ! あんな魔族、今直ぐに瞬殺してくださらない? 見ていてムカつきますわ! それにださい仮面なんか着けておりますし」

「だ、ださいだと! この俺のセンスをバカにするとはいい度胸だな! まずはお前から消し炭にしてくれる!」

 マリーの言葉に傷ついてしまったのか、魔物は上空に火球を生み出す。その大きさは十メートルはありそうなほど巨大だった。

「デ、デスボールだと!」

 オルテガは驚きの声を上げる。デスボールは、ファイヤーボールのパワーアップ版だ。熱量も火力も桁違いの威力を持つ。

「フハハハハハ! どうだ! 俺の魔法は! このまま町ごと燃やし尽くしてくれる!」

 魔族は三度目になる笑い声を上げると、口角を上げた。

 その光景を見て、俺はつい溜息を吐く。

 デスボールぐらいで粋がるなよ。そんな魔法を使えるからって、別に凄くないのになぁ。見ていてなんだか可哀そうに見えてくる。あんな魔法で力を誇示こじしているところが本当に哀れだ。誰か注意をしてくれるやつはいなかったのだろうか。

「シロウ! まずいですわよ。まさかデスボールが使えるなんて思ってもいませんでしたわ」

「くそう。ここまでか」

 マリーやオルテガの態度を見て、俺は首を傾げる。

 あいつら、何であんな絶望感を漂わせているような顔つきをするんだ? デスボールってそんなに強い魔法ではないだろう? 更に上の魔法もあるんだし。さすがにもうワンランク上の魔法を使ってきたら、俺も一応焦るけど、今はそんなに焦るときではないだろうに。

 どうして彼女たちが焦っているのか理解できないけど、なるべく早く安心させてやったほうがいいだろうな。

「ライトウォールXゼロ、Y十、Z十五、R五」

 俺は淡々と魔法を唱える。その瞬間、魔物が生み出したデスボールを光の球体が包み込む。

 アルファベットと数字で座標を示し、空気中の光子に対して気温を低下させ、最後に質量を持たせる粒子を纏わらせる。

 これにより触れることのできる光の壁が出現し、巨大な火球を内部に封じ込めたのだ。

「フハハハハハ! さぁ泣き叫べ! 俺はお前たち人間の恐怖に満ちた顔が大好き…………え?」

 四度目の笑い声を上げながら、バロン階級の魔族は上空に顔を向ける。その瞬間、やつの表情は困惑へと変わっていった。

「何で俺のデスボールが消えているううううぅぅぅぅぅぅ! あの光の玉は何だああああああぁぁぁぁぁぁ!」

 上空にあるはずの火球がなくなり、代わりに光の球体が出現していることに、魔族は驚きの声を上げる。

 やつの態度を見て、俺は溜息を吐かざるを得なくなった。

 ほらぁ、デスボール如きで粋がっているから、対策を取られたときのダメージがデカくなるじゃないか。あの魔法を誇るなとまでは言わないけどさぁ、少なくとも対策を取られたときの心構えぐらいは持っておけよ。

「何でだああああああぁぁぁぁぁぁ! 可笑しい! こんなのあり得ないいいいぃぃぃぃぃ!」

 現実を受け止めきれないのか、バロン階級の魔族は両手を頭に置きながら、叫び声を上げる。

「あり得なくはないだろう? 実際に目の前で起きているのだから」

「信じない! 俺は信じないいいいぃぃぃぃぃぃ!」

 目の前の現実を拒絶する魔物を見て、俺はしたくもない溜息が口から漏れる。

 まったく、いい加減にしてくれよ。信じたくない気持ちはわからなくもないけど、目の前の現実を受け止めることで、成長することもあるんだからさ。嘆く暇があるのなら、次に活かそうと前向きに考えてくれよ。

 そんなことを思いつつも、仮面の男は絶叫し続ける。はっきり言って隙だらけだ。

 これ以上、やつの濁声だみごえを聞きたくない。終わらせるとしよう。

「ショック」

「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 失神魔法を唱えた瞬間、魔族の神経が活性化され、心臓に戻る血液量が減少して失神を促された。

 悲鳴を上げるとやつは地面に倒れた。











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