青は藍より出でて藍より青し

フジキフジコ

文字の大きさ
12 / 99
青は藍より出でて藍より青し

擬宝珠水仙〔1〕

有島優吾ありしまゆうごがはじめて彼を見たのは、通学途中だった。
彼は、普通の神経の高校生なら、まず間違いなく避けて通るであろう一団の真ん中にいた。
同じ制服姿の男を3人、従えるように歩いている彼にすれ違った瞬間に興味を引かれた。
ただ純粋に綺麗だと思って見惚れたと言った方が正しいかもしれない。
呆けたように後ろ姿が小さくなるまで見送って、あの人を描きたい、そう思った。

次に会ったのは、夜のクラブだった。
一人で、つまらなそうに酒を飲んでるところを、優吾は少し離れたところから熱い眼差しで見つめていた。
自分を連れて来た、そのクラブの常連だというクラスメートに「あの綺麗な人を知ってるか」と聞くと、クラスメートは露骨に嫌な顔をした。
「知ってるもなにも。あの人有名だぜ」
「やっぱり?だよね、あんなに綺麗な人、ちょっといないもんね」
クラスメートは呆れたように顔を顰めた。
「そういう意味じゃない。ヤクザの跡継ぎだよ、あの人。名前は確か綾瀬尚紀…」
「ヤクザ?」
「そうヤクザ。間違っても近付くなよ」

あの人がヤクザ?と、優吾は純粋に驚いた。
ヤクザなんて映画でしか見たことがないが、全然イメージと違う。
でも彼の一種異様な近づき難い迫力はそのせいかもしれない。
「でもオレ、あの人を描きたい。どうしても」
クラスメートは首を捻った。
有島優吾が、高校生ながら買い手がつくほどの画才を持つことは、優吾が財閥、有島コンツェルンの御曹司だということと同じくらい有名な話だが、確か優吾は人物画は描かないはずだった。
芸術家は気紛れだから、それはいい。でも。
「やめとけよ。絶対に関わっちゃいけない人間が世の中にはいるんだ」
クラスメートは慎重に彼に進言した。

ところが優吾は次の日から綾瀬を追いかけはじめた。
学校の帰り道を待ち伏せして隠れて後をつける。
ストーカーと変わらない。
当然、綾瀬の家の前で不審人物として組員に捕まった。
けれど変に度胸の据わった男で、自分は綾瀬さんに憧れているのでこの組に世話になりたいと思っている、と脅えた様子も見せず言ってのけた。

自室で顛末を聞いて、綾瀬は面倒そうに優吾と体面した。
居間のソファーに畏まって座っていたのは有名私立高の制服を着た、大柄な身体に似合わない子供っぽさの残る顔の、まだ少年と呼んだ方が相応しいような男だった。

「おまえがストーカーか。馬鹿だな。そういうことは相手を考えてしろ」
興味のなさそうな声で綾瀬は言った。
組に入りたいと言ってくる奇特な男は数知れないほどいるが、基本的に飛び込みは相手にしない。
だが目の前の、毛並みの良さそうな高校生はそういう類ではないらしい。
得体が知れないが、興味もない。

「今回だけは見逃してやる。とっとと帰るんだな」
「ここで一緒に生活させてください。下働きでもなんでも!オレ、します」
「おまえ…救いようのない馬鹿だな」
そんな会話をしているうちに葉月がやってきて、綾瀬に何事か耳打ちした。
綾瀬は若干表情を変えて、優吾に「好きにしろ」と言った。



感想 8

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

元カレに追い出された専門学生がネカフェでP活相手のパパちんぽに理解らせられてトロトロのメロメロになっちゃう話

ルシーアンナ
BL
既婚子持ちバイ×専門学生 Pixiv https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27436158 ムーンライトノベルズ https://novel18.syosetu.com/n1512ls/ fujossy https://fujossy.jp/books/31185