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瑠璃も玻璃も照らせば光る

7.謀略

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一週間後。

新宿のホテルの喫茶室で享和会系小林組の組長、小林敬三が射殺された。
犯人は逃走したものの、すぐに逮捕された。
小林組と対立していた日渡組の組員、勝本仁かつもとじんだった。
たまたま喫茶室にいた一般人が一人、流れ弾に当たり、巻添えで死んだ。
その件で綾瀬は任意の事情徴収を受けたが、事件との関係性はないとされ、わずか2時間で解放された。

綾瀬が呼び出しを受けて新宿署に向かう前、篤郎は松本に電話をかけた。
電話口に出た松本は困惑していた。
『佐久間、あれを送ってきたのはおまえか』
「ちゃんと、届いたんだ。よかった。つまらないものだけど、進呈するよ」
『ふざけるなっ!受け取れるわけがないだろ。なんなんだよ、あの金は!』

怒ってはいるものの、精一杯声を潜めていることがわかって、篤郎は笑った。
もちろん、松本の立場を考えて、携帯ではなく、わざわざ本庁の交換から二課に繋いでもらったのだ。
「おまえに嘘をついた。おまえが警察官になったことは知ってたんだ。本庁に来る前は麻生署にいただろ。そこで大きな詐欺事件を解決して評価を得ていたことも知っている。将来を嘱望されてるらしいじゃないか。本部長の娘との結婚も決まりそうなんだってな。おめでとう!優秀なおまえのことだから、いずれ、本庁に呼ばれるんじゃないかと思って、コツコツとおまえの普通口座に積立しておいて、良かったよ」
『オレの口座じゃない』
「おまえの名義だったろ。使うか使わないかはおまえの自由だ。オレに必要なのは、本庁二課の松本警部補の普通口座に組から不定期に送金があったという事実だけだから」

受話器の向こうからは沈黙が流れてきた。
「まあ、そんなのは単なる小細工だよ。おまえが本気になって身の潔白を証明しようと思えば出来るはずだ。だけど、おまえとオレが旧知の間柄だったっていう事実は消せない。いくらおまえが潔白を証明出来ても、誰かの心にはいつまでも疑惑が残る。松本はヤクザから金品を受け取ってるんじゃないかってな。その誰かがおまえの出世に無関係な人だといいけど」
『なにが、目的なんだ。佐久間』
「やだなあ、おまえを脅迫するつもりなんかないよ。心に留めておいて欲しいだけだ」
『心にとめる?なにを、だ。おまえが性根まで腐ったヤクザになったってことをか!』
松本は怒鳴った。

「正解、それでいい。ひとつだけ、お願いがある。これからウチの三代目が新宿署に向かう。向こうの一課だかマル暴だかに、くれぐれも丁寧に話を聞くように注意してくれないか。もし、泣いて帰ってきたら許さない。名誉棄損かセクハラで告訴するから、そのつもりで」
松本が力任せに受話器を置いたのだろう、ガチャンという音がして電話は切れた。



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