禁断-兄妹愛- ≪18禁≫

フジキフジコ

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最終章≪それから≫

2.あなたは誰

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目が覚めると、そこは多分、病室だった。

「花音、大丈夫か。おまえ、気を失ったんだよ」
翔平が、心配そうにわたしの顔を覗きこんで、そう言った。

「10時間くらい、起きなかったから、心配した。よかった、目覚めてくれて」
ほっとしたように、言う。
だから、あんなに長い夢を見たんだ、と思った。
とても長い夢を見ていたような気がする。

「花音、奏さん、来てるよ」

目が覚めたときから、部屋に兄がいることはわかっていた。
気配?匂い?
なぜだろう、わたしには、わかっていた。

「お兄ちゃん…」

顔を動かして、兄を見て、そう呼んだ。

いまはもう、この人が、わたしの兄ではないとわかっているけど、じゃあ、他にどう呼べばいいのだろう。

「花音…」

その人は、わたしが兄だと思い、一緒に暮らしていた人は、わたしの側に来て、わたしの名前を呼んだ。
以前と変わらない口調で。

「誰、なんですか?あなたは、誰?」
わたしは、言った。
他人の口調で。



***



翔平は、病室を出た。
二人で話した方がいいだろ、と言って。

ちゃんと話を聞きたくて、わたしは上体を起こそうとした。
長い時間、眠っていたせいか、力が入らない。
兄…だと思っていた人が、手伝ってくれて、楽に座れるように、背中の後ろに枕を置いてくれた。

ベッドの横に置かれた椅子に座って、わたしの顔を真っ直ぐ見て、その人は言った。

「嘘をついて、ごめん。オレの本当の名前は、成田薫」

「なりた…かおる、さん」

その名前には覚えがあった。

「…あの、お墓の?」

お父さんとお母さんの墓地と同じところにあったお墓。
わたしも花を添え、手を合わせた。

「じゃあ、あれが、お兄ちゃん…」

墓石に刻まれた名前の人がここにいるなら、その名前の下で眠っているのが、本物の結野奏、ということなんだろうと、自然に思った。

薫さんは、頷いて、言った。
「奏は3年前にシアトルで死んだんだ。脳腫瘍だった」
「3年も、前に?」

まだ、お父さんもお母さんも生きていた頃だ。

「お父さんたちは、知ってたんですか」
「知らない。戸籍上、死んだのは、成田薫で、結野奏は生きているから」
「どういうこと?」
「オレと奏は、名前を、身分を交換したんだ」
「交換した?なぜ?なんのために?」

そんなことが出来るの?
どうしてそんなことをしたの?
わたしの頭は疑問でいっぱいになる。

「とても長い話になるし、君には辛い話もあるかもしれない」

辛い話、という薫さんこそ、苦しそうな顔をしている。
もしかしたら、話したくないのかもしれない。
わたしは、聞かない方がいいのかもしれない。

でも、わたしはもう逃げたくない。
自分に起きたことは、知っておきたい。

「大丈夫、話して」

それから、その人…薫さんは、自分と、兄の話をした。




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