【完結】月下の聖女〜婚約破棄された元聖女、冒険者になって悠々自適に過ごす予定が、追いかけてきた同級生に何故か溺愛されています。

五城楼スケ(デコスケ)

文字の大きさ
73 / 79

後悔3

しおりを挟む
 きっとアンネマリーは自分のために、勇気を出して告発してくれたのだろう。

 そんなアンネマリーの健気さを愛しく思うと同時に、フレードリクの心の中でクリスティナに対する怒りが爆発する。今まで溜まっていた鬱憤も原因だったのかもしれない。

 そして彼はその感情が赴くまま、クリスティナに婚約破棄を宣言したのだった。

 ──クリスティナに課せられた王妃教育や瘴気浄化の巡業が、巡り巡って自分のためなのだと、考えもせずに。




 * * * * * *




「陛下!! ラサーク地方で瘴気溜まりが発生しました!!」

「何だと?! クヴェトン地方の瘴気もまだ浄化出来ておらんというのにっ!!」

「浄化出来る神官の数が足りません!! アコンニエミ国に救援を要請しなければ、このままでは……っ!」

 セーデルルンド王国の王宮にある、国王の執務室では役人たちが慌ただしく業務に当たっていた。

 大神官オスカリウスから威圧を受け、失神した後しばらく寝込んでいたフレードリクが、久しぶりに執務室に顔を出してみると、何やら大変なことが起こっているようだった。

「これは一体……?!」

 初めて見る執務室の緊迫した雰囲気に驚いたフレードリクは、近くを通りかかった役人に何が起こったのか問いただす。

「俺がいない間、何があった?!」

「フ、フレードリク様っ?! あ、これはその、クヴェトン地方で瘴気溜まりが見付かり、浄化にあたっていたところに、ラサーク地方で新たな瘴気溜まりが発生したらしいのですが……浄化が上手く行っておらず、大神官様にお伺いをするところでして……っ!」

「何……?! どうしてこんなことに……? あっ……!」

 フレードリクは疑問に思ったものの、その原因が自分であることに気がついた。
 <稀代の聖女>であるクリスティナを追い出したから、浄化が追いついていないのだと。

 しかしクリスティナがいなくなった途端、こんな大事になるとはフレードリクも全く予想できなかったのだ。

「フレードリクっ!! やっと来たかこの愚か者っ!! お前は自分が何をしでかしたのかわかっているのかっ!!!」

 フレードリクに気がついた国王が、険しい表情で怒鳴りつける。温厚だった父親の初めて見る姿に、フレードリクが恐怖で竦み上がる。

「ち、父上……! それはクリスティナが、私を裏切って下賤な者たちと通じていたからで……っ!」

「お前が言う下賤な者たちとは、どこの誰のことだ?! お前はちゃんとその者たちのことを調査したのだろうなっ?!」

「あ、いや、それは……っ」

 フレードリクは返答に躊躇する。アンネマリーの話を聞き、怒りで我を忘れたまま冷静な判断が出来ず、調査も何もしなかったからだ。

「しかしアンネマリーが嘘をつくはずがありません!! クリスティナは賤しい男たちと親しい仲だと……っ」

「黙れっ!! お前はこの国の冒険者たちを敵に回すつもりかっ!!」

「──え?」

「お前たちが言う下賤な者たちとは、冒険者ギルド王都本部に所属する優秀な冒険者たちのことだっ!! お前は冒険者たちを侮辱したのだぞっ!!」

 この国に限らず、冒険者は無くてはならない存在である。しかも冒険者ギルドに入るためには試験が必要で、ある程度腕に覚えがある者でないと冒険者になることはできないのだ。
 それが一国を統括する本部の冒険者たちであれば、その実力は疑うべくもなく、また同時に身元が保証されていることになる。

 確かにアンネマリーは嘘をついていない。しかし正しい情報でも無かったのだ。

「……っ?! そ、そんな……っ!!」

 フレードリクが己の所業を悔いても既に時は遅く、<聖女>の加護を失った王国は衰退の一途を辿ることになる。
しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

処理中です...