195 / 206
誕生1
しおりを挟む
満月の夜、月の光を浴びて本来の姿になった精霊たちが喜ぶ中、長らく眠りについていた精霊王ルーアシェイアがついに目覚め、ティナの前に姿を現した。
《私の力が弱まったのは、世界中にある精霊の住処が、いつからか荒れ果ててきたからなんだ》
ルーアシェイア曰く、以前はこの湖のように聖気溢れる清浄な場所が世界中に幾つもあり、精霊たちもたくさん暮らしていたという。
「荒れ果てて……? それはどうしてですか?」
《瘴気だよ。聖気に溢れていた場所が、大量に発生した瘴気のせいで荒れてしまったんだ》
「瘴気が……」
ティナはルーアシェイアの話を聞いて疑問に思う。普通、聖気が溢れていた場所に属性が全く正反対な瘴気が自然発生することはあり得ないのだ。
《私はすべての精霊と繋がっているからね。だから離れた場所にいる精霊が受けた瘴気の影響も受けてしまうんだ》
ルーアシェイアが弱っていたのは、瘴気の影響を間接的に受けていたからだった。
「あの……っ、それは、こことは違う場所に弱っている精霊さんがたくさんいるってことですかっ?!」
弱っている精霊たちを想像するだけで、ティナの胸がひどく痛む。この湖にいる精霊は今日、月の光を浴びてとても元気な姿を見せてくれた。
だからすっかり安心していたのに、ティナが知らない場所で苦しんでいる精霊たちがいると思うと、居ても立っても居られない。
《大丈夫だよ。こうして私の力が回復したんだ。私と繋がっている精霊たちも徐々に回復していくはずだ》
「……っ、よかった……っ!!」
精霊たちが無事だと聞いたティナは、心の底から安堵した。
もし苦しんでいる精霊がいたら、すぐにでも駆けつけようと本気で思っていたのだ。
そんなティナの意気込みを感じたのか、ルーアシェイアがふわり、と微笑んだ。
輝くような美しさに、ティナは夜なのに眩しさを感じてしまう。
《其方のおかげで今宵、新しい眷属たちが誕生する。一緒に見届けてくれるか?》
「え? 精霊さんが生まれるんですか……? うわぁ……っ!! 是非! 是非ご一緒させてくださいっ!!」
《うむ》
ティナが了承した次の瞬間、ティナたちは精霊樹の前に転移していた。
「──っ、あれ? あれれっ?!」
転移魔法の詠唱も魔法陣もなく、ルーアシェイアは空間移動を実現した。
大精霊ともなると、世界の法則とは関係なく理を曲げることが出来るらしい。
《ほら、間もなくだ》
「え──……」
ルーアシェイアの言葉にティナが見上げると、精霊樹自体が淡く光っていた。
そして実っていた何百もの実の光がぱあっと強くなったかと思うと、光が一斉に弾けた。
精霊の実が放つ光が、暗闇を明るく照らし出す。
弾けた光は粒子となって、精霊樹の周りに降り注いだ。
その光はまるで、この世界の闇を払拭するかのような、聖浄な光だった。
「──……っ」
《美しい光景だろう?》
あまりにも美しいものを見ると、言葉なんて全く出てこなくて、ただその光景に魅入ることしか出来ない。
だからティナは、ルーアシェイアの問いかけにただ一言、「──はい……っ!」としか答えられなかった。
しかしルーアシェイアはその一言で、全てを察してくれたようだ。
《私の力が弱まったのは、世界中にある精霊の住処が、いつからか荒れ果ててきたからなんだ》
ルーアシェイア曰く、以前はこの湖のように聖気溢れる清浄な場所が世界中に幾つもあり、精霊たちもたくさん暮らしていたという。
「荒れ果てて……? それはどうしてですか?」
《瘴気だよ。聖気に溢れていた場所が、大量に発生した瘴気のせいで荒れてしまったんだ》
「瘴気が……」
ティナはルーアシェイアの話を聞いて疑問に思う。普通、聖気が溢れていた場所に属性が全く正反対な瘴気が自然発生することはあり得ないのだ。
《私はすべての精霊と繋がっているからね。だから離れた場所にいる精霊が受けた瘴気の影響も受けてしまうんだ》
ルーアシェイアが弱っていたのは、瘴気の影響を間接的に受けていたからだった。
「あの……っ、それは、こことは違う場所に弱っている精霊さんがたくさんいるってことですかっ?!」
弱っている精霊たちを想像するだけで、ティナの胸がひどく痛む。この湖にいる精霊は今日、月の光を浴びてとても元気な姿を見せてくれた。
だからすっかり安心していたのに、ティナが知らない場所で苦しんでいる精霊たちがいると思うと、居ても立っても居られない。
《大丈夫だよ。こうして私の力が回復したんだ。私と繋がっている精霊たちも徐々に回復していくはずだ》
「……っ、よかった……っ!!」
精霊たちが無事だと聞いたティナは、心の底から安堵した。
もし苦しんでいる精霊がいたら、すぐにでも駆けつけようと本気で思っていたのだ。
そんなティナの意気込みを感じたのか、ルーアシェイアがふわり、と微笑んだ。
輝くような美しさに、ティナは夜なのに眩しさを感じてしまう。
《其方のおかげで今宵、新しい眷属たちが誕生する。一緒に見届けてくれるか?》
「え? 精霊さんが生まれるんですか……? うわぁ……っ!! 是非! 是非ご一緒させてくださいっ!!」
《うむ》
ティナが了承した次の瞬間、ティナたちは精霊樹の前に転移していた。
「──っ、あれ? あれれっ?!」
転移魔法の詠唱も魔法陣もなく、ルーアシェイアは空間移動を実現した。
大精霊ともなると、世界の法則とは関係なく理を曲げることが出来るらしい。
《ほら、間もなくだ》
「え──……」
ルーアシェイアの言葉にティナが見上げると、精霊樹自体が淡く光っていた。
そして実っていた何百もの実の光がぱあっと強くなったかと思うと、光が一斉に弾けた。
精霊の実が放つ光が、暗闇を明るく照らし出す。
弾けた光は粒子となって、精霊樹の周りに降り注いだ。
その光はまるで、この世界の闇を払拭するかのような、聖浄な光だった。
「──……っ」
《美しい光景だろう?》
あまりにも美しいものを見ると、言葉なんて全く出てこなくて、ただその光景に魅入ることしか出来ない。
だからティナは、ルーアシェイアの問いかけにただ一言、「──はい……っ!」としか答えられなかった。
しかしルーアシェイアはその一言で、全てを察してくれたようだ。
応援ありがとうございます!
158
お気に入りに追加
1,966
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる