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最終話 二人の場所1

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 トールがティナに告白し、ティナがトールの思いを受けとめた後。

 すっかり夜も更け、アウルムはルシオラと一緒にテントの中で眠っていた。
 ちなみにルシオラはまだ人型のままなので、小さい女の子と子狼が寄り添って眠る姿はとても愛らしくて微笑ましい。

「今日は色んなことがあったから、アウルムも疲れちゃったんだろうね」

「聖獣とは言ってもまだ子供だしね。それなのに俺がいない間ずっとティナを守ってくれて、本当に助かったよ。また明日にでもお礼を言わないとね」

「あ、じゃあ私もお礼を兼ねて、明日はアウルムが好きなものを作ってあげようかな」

 トールが言うように、アウルムはずっとティナのそばにいてくれて守ってくれた。
 それにアウルムのおかげで大変だったはずの旅が随分楽だったのだと、トールの話を聞いて実感したのだ。

「いいな。俺もティナの手料理が食べたい。ノアさんにもたくさん作っただろ? 俺、自慢されて悔しかったし、羨ましかった」

「えっ! トールもノアさんに会ったの?!」

「うん。ルシオラが人の気配がするって言うから、ティナかと思って近づいてみたら……大魔導士デュノアイエ様だったんで、すごく驚いたよ」

 それからティナはトールからノアの話を聞き、またティナもノアと過ごした日々をトールに話した。

「あー、くそ! ティナと一ヶ月も一緒に暮らすなんて! なんか先を越されたみたいですっごく悔しい!」

 いつも飄々としていたトールがヤキモチを焼いている姿は少し子供っぽくて、そのギャップにティナの胸が不覚にもときめいてしまう。

「え、えっと……! トールにももちろん作ってあげるよ!」

「本当? やった! 俺、ティナが俺だけのために作ってくれた料理が食べたい」

「う、うん……! トールの口に合うかわからないけど……」

 ティナが一日かけて作った料理は精霊たちとアウルムに食べられてしまい、結局トールの口には入らなかった。
 だからトールのティナの料理に対する執着はますます募っているようだ。

 ティナはトールのためにも、これからはたくさん、飽きるぐらい料理を作ってあげようと思う。
 きっとトールなら、ティナが作った料理はなんでも美味しいと言ってくれるだろう。

「あ、そうだ。これ、ノアさんから預かってきた。ティナにって」

 トールはそう言うと、魔石が付いたメダルのようなものを取り出した。

「え、ノアさんから? これは……魔道具?」

 魔石の周りにはまるで細工のように綿密に刻まれた術式が刻まれている。おそらく、何かの魔道具だとティナは予想する。

「うん、そう。魔石に魔力を流したらノアさんの小屋に転移出来るんだって」

「えぇっ?! すごいっ! ノアさんってそんな魔道具も作れるの?!」

 ティナはノアのことをすごい人だと思っていたが、彼はさらにすごかった。
 この魔道具のおかげで、これからはいつでもノアの小屋に遊びにいけると思うと、とても嬉しくなる。

「……俺、ノアさんに時空間魔法を教えてもらおうかな」

 ノアの魔道具に喜ぶティナを見たトールが、拗ねた口調で呟いた。

「え? トールが?」

「うん。そうすれば、俺もティナに転移の魔道具を作ってあげられるかなって」

 何故かトールはノアにライバル心を持っているらしい。
 ティナからすれば、ノアは優しいお爺ちゃん的存在で、家族のように想っているだけなのだが。
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