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ラグエリア大陸編~生動の章~
第6話『アリオンの村』
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グロアの町を旅立ってから3週間が経とうとしていた。
その間に2つの村を通り、ようやくアリオンの村が見えたところである。
「すぐそこに見えるのがリアナ湖、その後ろに見えるのがアビリオン山、あっちがホルムの森で奥に広がるのがセリレナ海か」
「その真ん中に細々とあるのがアリオンの村ですね」
「うん。なんか、開拓が中途半端って感じだな」
海側にある村であるが、北、西、南には微妙に伸びていないので山側、湖側、森側の間に中途半端に『隙間』がある。
村の入り口に着くと『ある』と言う程度の木の柵で村が囲まれている。
見張りもいない。
中に入ると子供たちが駆け回っているのが見えた。
「お兄ちゃん、だあれ?」
「旅の人?」
「冒険者?」
すごい勢いで声をかけられる。
子供パワースゲェな。
「俺はハルト。ここの村長さんのところに案内してくれないか?」
「村長?」
「死んじゃったよ」
「ええ!?じゃあ、この村を仕切っている人は?」
「それならねぇ、リュナ姉ちゃんだよ」
「リュナ姉ちゃん。今、畑仕事をしているよ」
「こっちこっち」
子供たちに連れられて村の中を歩く。
今だ大人の村人に会えていない。
南側に広がる畑に着くと大勢の大人たちが仕事中であった。
子供たちの話によると、この時間は畑仕事か海での漁か森での採取で大人たちは家にはいないとのこと。
早朝のこの時間だから朝の仕事をして、そのあとで各家庭で朝食となるのだ。
「みんな、その人は誰?」
「旅のお兄ちゃんだよ」
「リュナ姉ちゃんに会いたいって」
「私に?」
「俺の名前はハルト。この村に住みたいと思って来ました」
「こんな何もない辺鄙な村に?」
「海や山、森に湖に囲まれた良いところじゃないですか。ちょっとの不便なんて問題無いですよ」
「別に土地は余ってるし住むのは構わないけど……犯罪者じゃないわよね?」
「グロアの町で作った身分証があります。これで証明になりませんか?」
「……確かに犯罪歴は無いようね。家は何処に建てる?」
「う~ん……湖側に建てようかな」
「あなた、自分で建てるの?」
「そのつもり。それまでは野宿しながらゆっくりやるよ」
「だったら、私の家に部屋が余ってるから貸してあげるわ」
「良いんですか?」
「まあ、村長代理としては住民の安全は確保しないとね。その代わり、朝はここで私と畑仕事してもらうわよ」
「もちろん手伝わせてもらうよ」
畑仕事を終えて、リュナの家に行く。
部屋の一室に案内され、部屋を『清浄化呪文』で汚れを落とす。
ついでに自分に入浴洗浄呪文を使い、普段着に着替えて部屋を出る。
「ついでにこの家にも『清浄化呪文』…と」
家全体に清浄化呪文をかけ、リュナのいるところに向かう。
「今、朝食を用意してるから座ってて」
「手伝うよ」
ザックリと不揃いに切られた野菜。
しかも、皮付きのままである。
俺はアイテムボックスからナイフを取り出し丁寧に皮を剥いていく。
火にかけられた水入り鍋に投入。
ついでにアイテムボックスからクラブラビットの肉を取り出し一口サイズに切り分けていく。
もう1つの火窯の上にフライパンを置き、バターを一欠け入れてクラブラビット肉をソテーする。
塩・胡椒を効かせて川がパリッとしてところで鍋に入れる。
そして、『シチュー粉』を入れる。
最後に塩・胡椒で味を調えて完成。
あれ?途中から料理を全部俺がしていたような……。
「ハルトって料理できるのね」
「まあ、人並みに」
「味見していい?」
「どうぞ」
「――っ!?美味しい!」
だろうね。
塩だけでなく胡椒を使っているし、何よりシチュー粉を使っているので旨味成分はバッチリだ。
「パンは昨日の焼いた余りがあるし、あとはサラダでいいよね」
「じゃあ、俺はシチューを皿に盛るよ」
サラダはやっぱり生のままなので、マヨネーズをかけることにする。
「なに、この白いの?」
「サラダによく合うから食べてみてよ」
「どれどれ……んっ!美味しい!」
「でしょ」
サラダを勢いよく食べていくリュナ。
まあ、この反応はよく分かる。
「マスター。私も食べたいです」
「えっ?誰?」
「ああ。アカリ、姿を見せて良いぞ。リュナ、俺の家族のアカリだ」
「アカリです。よろしくお願いいたします」
「妖精?」
「羽妖精だ。物知りで有能な相棒だよ」
「へ~。よろしくね、アカリ」
みんなで朝食を取り、食後に土地に案内してもらう。
「ここから先はまだ開拓が進んでないけど、自由にしてもらって構わないわ」
「了解。ゆっくり進めさせてもらうよ」
自宅に帰っていくリュナを見送り、振り返るハルト。
そこには湖までの間に斑に生えた木々が見える。
「何と言うか良い景観とは言えないな」
「ですね」
「んじゃ、さっそく始めますか」
両手を地面につけてイメージ魔法で土に干渉する魔法『地形変動呪文』を使い木を根っこから引っこ抜く。
どんどん倒れていく木々。村の端から端と湖までのと道筋を完全に切り開いていた。
いったん木々をアイテムボックスに入れ、再度地形変動呪文で地面を平地に整地する。
湖までは完全に開けたことで景色はそれなりに綺麗だが、整地しただけなので景観的にはちょっと残念な感じである。
「さて、家をどう建てるかだな」
「どうとは?」
「玄関をどの向きにするかってことだな」
北玄関は風水的によくないと聞いたことがある。
そうなると、その他ってことになる。
村側か湖側か森側という選択になるわけだ。
「村側がベストかな」
「ということは東玄関にするわけですね」
「そうなるな。南側には思い切って畑を作るつもりだし、西は湖を眺められるようにしようと思う」
「家はどんな感じのを建てるつもりですか?」
「土台をしっかりさせた感じにはするつもりだけど、基本はログハウス風かな」
後はどの程度の広さにするかだな。
そのためにも材料は多いに越したことは無い。
まずは材料集めだな。
「その前に、この村の防壁を何とかすべきでは?」
「……アカリの言うことももっともだな」
「土魔法で壁を作って『錬成』で別の硬度のあるものに変換すればいいのか」
「森に作った畑を囲んでいた壁ですね。あの強度なら大丈夫でしょう」
「じゃあ、サクッと作っちゃうか」
一度、リュナの家に戻り今の話をする。
「壁ねぇ。そりゃ、やってもらえるなら嬉しいけど……出来るの?」
「問題はどの程度の大きさにするかにもよるけど」
「そうねぇ……3メートルほどの高さがあればいいんじゃないかしら?」
3メートルか。なら見張り台の櫓も必要か。
「よし。それじゃあ、さっそく作りに行きますか」
「防壁造りに行くって感じじゃないわね……」
村の入り口に行き改めて村の敷地を見渡す。
やはり、村よりも敷地の方が広い。
これはこれから農地など広げることも考慮しているのだろう。
「じゃあ、湖を囲むように防壁を造るよ。『土形成呪文』」
土が盛り上がり3メートル級の土壁ができる。
厚みは1メートルほどにしてみた。
「よし。次は『錬成呪文』」
土壁が色を変えていく。
淡い青緑…『魔銀』の壁に変化したのだ。
「これだけ強度があれば大丈夫だな」
「大丈夫どころじゃないわよ。村に造る防壁じゃないわよ、これ」
「そうか?丈夫なのに越したことないと思うんだけど……」
「まあ、造っちゃったものは仕方ないわね」
その内、村も住みよくしていくつもりだしこの程度で驚いてもらっても困る。
さて、住居を建てる用意をしなくちゃな。
俺はまず海岸へと向かうのだった。
その間に2つの村を通り、ようやくアリオンの村が見えたところである。
「すぐそこに見えるのがリアナ湖、その後ろに見えるのがアビリオン山、あっちがホルムの森で奥に広がるのがセリレナ海か」
「その真ん中に細々とあるのがアリオンの村ですね」
「うん。なんか、開拓が中途半端って感じだな」
海側にある村であるが、北、西、南には微妙に伸びていないので山側、湖側、森側の間に中途半端に『隙間』がある。
村の入り口に着くと『ある』と言う程度の木の柵で村が囲まれている。
見張りもいない。
中に入ると子供たちが駆け回っているのが見えた。
「お兄ちゃん、だあれ?」
「旅の人?」
「冒険者?」
すごい勢いで声をかけられる。
子供パワースゲェな。
「俺はハルト。ここの村長さんのところに案内してくれないか?」
「村長?」
「死んじゃったよ」
「ええ!?じゃあ、この村を仕切っている人は?」
「それならねぇ、リュナ姉ちゃんだよ」
「リュナ姉ちゃん。今、畑仕事をしているよ」
「こっちこっち」
子供たちに連れられて村の中を歩く。
今だ大人の村人に会えていない。
南側に広がる畑に着くと大勢の大人たちが仕事中であった。
子供たちの話によると、この時間は畑仕事か海での漁か森での採取で大人たちは家にはいないとのこと。
早朝のこの時間だから朝の仕事をして、そのあとで各家庭で朝食となるのだ。
「みんな、その人は誰?」
「旅のお兄ちゃんだよ」
「リュナ姉ちゃんに会いたいって」
「私に?」
「俺の名前はハルト。この村に住みたいと思って来ました」
「こんな何もない辺鄙な村に?」
「海や山、森に湖に囲まれた良いところじゃないですか。ちょっとの不便なんて問題無いですよ」
「別に土地は余ってるし住むのは構わないけど……犯罪者じゃないわよね?」
「グロアの町で作った身分証があります。これで証明になりませんか?」
「……確かに犯罪歴は無いようね。家は何処に建てる?」
「う~ん……湖側に建てようかな」
「あなた、自分で建てるの?」
「そのつもり。それまでは野宿しながらゆっくりやるよ」
「だったら、私の家に部屋が余ってるから貸してあげるわ」
「良いんですか?」
「まあ、村長代理としては住民の安全は確保しないとね。その代わり、朝はここで私と畑仕事してもらうわよ」
「もちろん手伝わせてもらうよ」
畑仕事を終えて、リュナの家に行く。
部屋の一室に案内され、部屋を『清浄化呪文』で汚れを落とす。
ついでに自分に入浴洗浄呪文を使い、普段着に着替えて部屋を出る。
「ついでにこの家にも『清浄化呪文』…と」
家全体に清浄化呪文をかけ、リュナのいるところに向かう。
「今、朝食を用意してるから座ってて」
「手伝うよ」
ザックリと不揃いに切られた野菜。
しかも、皮付きのままである。
俺はアイテムボックスからナイフを取り出し丁寧に皮を剥いていく。
火にかけられた水入り鍋に投入。
ついでにアイテムボックスからクラブラビットの肉を取り出し一口サイズに切り分けていく。
もう1つの火窯の上にフライパンを置き、バターを一欠け入れてクラブラビット肉をソテーする。
塩・胡椒を効かせて川がパリッとしてところで鍋に入れる。
そして、『シチュー粉』を入れる。
最後に塩・胡椒で味を調えて完成。
あれ?途中から料理を全部俺がしていたような……。
「ハルトって料理できるのね」
「まあ、人並みに」
「味見していい?」
「どうぞ」
「――っ!?美味しい!」
だろうね。
塩だけでなく胡椒を使っているし、何よりシチュー粉を使っているので旨味成分はバッチリだ。
「パンは昨日の焼いた余りがあるし、あとはサラダでいいよね」
「じゃあ、俺はシチューを皿に盛るよ」
サラダはやっぱり生のままなので、マヨネーズをかけることにする。
「なに、この白いの?」
「サラダによく合うから食べてみてよ」
「どれどれ……んっ!美味しい!」
「でしょ」
サラダを勢いよく食べていくリュナ。
まあ、この反応はよく分かる。
「マスター。私も食べたいです」
「えっ?誰?」
「ああ。アカリ、姿を見せて良いぞ。リュナ、俺の家族のアカリだ」
「アカリです。よろしくお願いいたします」
「妖精?」
「羽妖精だ。物知りで有能な相棒だよ」
「へ~。よろしくね、アカリ」
みんなで朝食を取り、食後に土地に案内してもらう。
「ここから先はまだ開拓が進んでないけど、自由にしてもらって構わないわ」
「了解。ゆっくり進めさせてもらうよ」
自宅に帰っていくリュナを見送り、振り返るハルト。
そこには湖までの間に斑に生えた木々が見える。
「何と言うか良い景観とは言えないな」
「ですね」
「んじゃ、さっそく始めますか」
両手を地面につけてイメージ魔法で土に干渉する魔法『地形変動呪文』を使い木を根っこから引っこ抜く。
どんどん倒れていく木々。村の端から端と湖までのと道筋を完全に切り開いていた。
いったん木々をアイテムボックスに入れ、再度地形変動呪文で地面を平地に整地する。
湖までは完全に開けたことで景色はそれなりに綺麗だが、整地しただけなので景観的にはちょっと残念な感じである。
「さて、家をどう建てるかだな」
「どうとは?」
「玄関をどの向きにするかってことだな」
北玄関は風水的によくないと聞いたことがある。
そうなると、その他ってことになる。
村側か湖側か森側という選択になるわけだ。
「村側がベストかな」
「ということは東玄関にするわけですね」
「そうなるな。南側には思い切って畑を作るつもりだし、西は湖を眺められるようにしようと思う」
「家はどんな感じのを建てるつもりですか?」
「土台をしっかりさせた感じにはするつもりだけど、基本はログハウス風かな」
後はどの程度の広さにするかだな。
そのためにも材料は多いに越したことは無い。
まずは材料集めだな。
「その前に、この村の防壁を何とかすべきでは?」
「……アカリの言うことももっともだな」
「土魔法で壁を作って『錬成』で別の硬度のあるものに変換すればいいのか」
「森に作った畑を囲んでいた壁ですね。あの強度なら大丈夫でしょう」
「じゃあ、サクッと作っちゃうか」
一度、リュナの家に戻り今の話をする。
「壁ねぇ。そりゃ、やってもらえるなら嬉しいけど……出来るの?」
「問題はどの程度の大きさにするかにもよるけど」
「そうねぇ……3メートルほどの高さがあればいいんじゃないかしら?」
3メートルか。なら見張り台の櫓も必要か。
「よし。それじゃあ、さっそく作りに行きますか」
「防壁造りに行くって感じじゃないわね……」
村の入り口に行き改めて村の敷地を見渡す。
やはり、村よりも敷地の方が広い。
これはこれから農地など広げることも考慮しているのだろう。
「じゃあ、湖を囲むように防壁を造るよ。『土形成呪文』」
土が盛り上がり3メートル級の土壁ができる。
厚みは1メートルほどにしてみた。
「よし。次は『錬成呪文』」
土壁が色を変えていく。
淡い青緑…『魔銀』の壁に変化したのだ。
「これだけ強度があれば大丈夫だな」
「大丈夫どころじゃないわよ。村に造る防壁じゃないわよ、これ」
「そうか?丈夫なのに越したことないと思うんだけど……」
「まあ、造っちゃったものは仕方ないわね」
その内、村も住みよくしていくつもりだしこの程度で驚いてもらっても困る。
さて、住居を建てる用意をしなくちゃな。
俺はまず海岸へと向かうのだった。
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