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本編 平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。
62.情けない人?
しおりを挟む飲み込んだ水餃子が破れ、アツアツのスープが咽喉で溢れだした。
「あつっ……」
「大丈夫?!七海ちゃん」
信が慌てて氷の入った水を差しだす。
七海はそれを受け取って、ゴクリゴクリと飲み干した。
「火傷しなかった……?」
心配そうに覗き込む瞳は、いつもの優しい信のものだった。
「……ちょっと熱かったけど、大丈夫です」
「水、もう一杯飲んだ方が良い」
「有難うございます」
信から受け取ったコップを今度は少しずつ咽喉の火照りを冷やす様に嚥下する。
すると胸に仕えていた、先ほど感じた不穏な空気もスルリと飲み下す事ができた。
ニコリと笑えば、信はホッとした様子で息を吐く。
「……ゴメンね。少し意地悪を言った」
「え?」
少し眉根を寄せ、信は七海に向かって言った。
そしてフイッと恥ずかしそうに視線を外し続ける。
「嫉妬したんだ。ずっと隠していた気持ちをキチンと表に出したら―――止まらなくなっちゃった。この年まで知らなかったけど―――俺、結構嫉妬深い性質らしい」
「信さん」
「情けないね。……今までの彼女の気持ちがやっと分かった気がする。例え七海ちゃんが何とも思っていなくても―――七海ちゃんの事を狙っている男が、俺の知らない場所で七海ちゃんと楽しい時間を共有していると思うと……不安で仕方が無くなって来るんだ」
信はジョッキをあおり、カウンターの向こうの男性にお代わりを頼んだ。
そして七海を見てヘニャリと弱々しく笑うと、顔を両手で覆った。
「っあー、俺なっさけね~~」
七海は驚いていた。
こんな信を目にするのは初めての事だったから。
しかし彼女は彼の意見に同意は出来なかった。
「信さんは情けなくなんか、無いです。例え情けなくても……そんな姿もカッコイイから、全然、大丈夫です……!」
拳を握りしめて、力説した。
何故自分が熱くなっているのか、よく分からなかったけれども。
すると顔を覆っていた手を少しずらし、信が七海をチラリと見た。
「ほんと?」
「ホント、ホント」
『面食い』の名に懸けて、七海は胸を張って大きく頷いた。
「でも七海ちゃんは―――俺の事を好きな訳では無いよね……?」
両手をテーブルに下ろし、信は溜息を吐いた。
七海は答えに窮し、拳を握ったまま言葉を飲み込んだ。
信は七海の方に向き直りその精悍な瞳に熱を込めて、言葉を失い戸惑う彼女を見据えた。
「彼氏役―――誰にやらせるつもり?……俺にやらせてはくれないの……?」
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