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後日談 黛家の妊婦さん1
(115)お手伝い(★)
しおりを挟む久し振りに黛家が舞台です。
しょうもない話を思いついてしまいました。
『平凡地味子~』後日談『黛家の新婚さん』
……の更に後日談『黛家の妊婦さん』になります。
※なろう版とは一部表現に変更があります。
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研修医として二年目、研修先が変わった黛の勤務はシフト制に変わった。八時間勤務で三交代。と言っても、緊急医療センターに運ばれてくる患者が時間通りに来て時間通りに帰るとは限らないので、帰る時間も食事を取る時間もまちまちになってしまう。
身重になった七海の負担を減らす為にも、黛は愛情弁当を諦める事にした。
一方七海はと言うと、申し訳ないと思いつつも黛の帰宅時間を気にしない事にしている。帰り時間の定まらない夫をジッと待つ妻がいると黛の負担になるだろうし、帰って来るのを期待してガッカリする事を繰り返していると、ストレスになってお腹の胎児にも良くないような気がしたからだ。母親からも出来るだけやらなくて良いコトは手を掛けず、母体を優先するようにアドバイスを受けた。夫である黛も七海がゆったりマイペースに暮らす事を望んでいたので、その厚意に甘えてなるべく無理はしないように心掛けている。
と言う訳で同じ家に住んでいるのに、今は別居夫婦のような距離感で二人は暮らしている。時折七海は義父である龍一と二人暮らしのような気分になる時もあるくらいだ。いつ黛が帰って来るのかを気にせずに日常生活を送る事が徐々に普通になって行ったある日の夜のこと。
ガチャリと寝室の扉が開いて、黛が突然現れた。
シャツの前を開けた格好で油断していた七海が、驚いて固まる。次の瞬間慌ててバッとシャツを合わせて体を隠した。
「び、吃驚した……!」
驚く七海の様子に、黛は首を傾げた。何か見せられないような事をしているのか、と。
「ただいま。……何してんの?」
黛は最近帰宅すると直ぐにシャワーを浴び、洗える服は全て洗濯機に放り込み全自動で洗濯と乾燥のスイッチを押し洗ってしまう事にしている。なるべく外や病院からウィルスや菌を家の中に持ち込まないよう心掛けていた。着替えも浴室に準備しているので、サッパリして部屋着に着替えて寝室に入って来た所だった。
「おかえり。えーと……妊娠線予防のクリームを塗ろうかと」
もうすぐ妊娠四ヶ月となる七海のお腹は少しふっくらし始めている。今後徐々にお腹の膨みが大きくなって来るので、妊娠線予防を行い始めたのだ。
妊娠により急激に皮膚が伸ばされるとお腹にヒビの入ったような線ができる事があるらしい。それを予防するためにつわりが終わった頃から皮膚を柔軟に保つためクリームなどでケアすると良いそうだ。それを知った七海は、ネット通販で無添加のクリームを購入して、毎日お風呂上りにお腹に塗るよう心掛けていたのだ。
「へー……そんな事、してたんだ。」
黛は最近家に居る時間が少なく、七海がそんなケアをしている事を知らなかった。七海の手からクリームのボトルを奪い、成分表をチェックしつつ黛は説明書きに目を通した。
「これ、今から塗るの?」
「あ、うん」
「塗ってやるよ」
ボトルを持ったまま、黛はニッコリと微笑んだ。
「え……いや、いいよ。疲れてるでしょ」
ボトルを取り返そうと七海が手を伸ばすと、黛はヒョイっとそれを持ち上げて追及の手を躱してしまう。
「まあまあ……俺に任せなさいって」
「……」
何となく嫌な予感がしないでもないが、なかなか会えない夫が気を使って手伝ってくれると言うのだ。七海はとりあえず一歩引いて黛の言うとおりに任せてみる事にした。
「ちょっ……そこお腹じゃないでしょ!」
「スマン、手が滑った」
「もー!ワザとでしょ。くすぐったい……っ、真面目にやってよお……!」
案の定黛は手を滑らせて、お腹以外にも手を伸ばして来た。
くすぐったがる七海に執拗に手を伸ばしてニヤニヤしていた黛だったが。
やはりしつこくし過ぎてしまい―――久々に頭突きをくらって頭を抱える事になったのだった。
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黛は懲りない男です。
そして仕事のストレスはイチャイチャで解消できるようです。便利な体質ですね。
お読みいただき、有難うございました。
応援ありがとうございます!
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