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後日談 黛家の妊婦さん1
(122)教育方針?
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(121)話の補足のようなお話です。
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「いいか、まず女性には優しく接しろ」
コクリと翔太は頷いた。
「今はお前は小さいかもしれない。そして勿論、お前より大きい女も小学校にはたくさんいると思う。大人の女性だってそうだ。だけど―――女性って言うのは本来男より、か弱い生き物なんだ」
翔太はジッと真剣に黛の語りかける言葉に耳を傾けていた。
「いつもお前と『たたかいごっこ』をしてくれた七海も、女だ。だから優しくしなくちゃならない。しかもお腹に赤ちゃんがいる。俺がいない時は、お前が七海と赤ちゃんを守るんだ。だからお腹に頭から突進するなんて、もってのほかだ」
「あの……黛君、翔太はまだ六歳だし……」
小さな翔太の肩を大きな手で掴み、教えを授けるように語りかける黛の言葉に―――とうとう耐えられなくなって七海は声を上げた。
七海にとっては翔太はまだまだ幼い子供だ。大きな大人である七海を守れなんて言って、翔太自身が危ない目にあったりしないか心配になったのだ。
「翔太はもう、頭では理解できる年齢だ。こういう事はいきなり身に就くものじゃない、出来るようになる前にちゃんと言葉にしてまず、伝える事が大事なんだ。『男女七歳にして席を同じゅうせず』っていうだろ?基本的にもう男女の違いが理解できる年齢なんだ」
「でも……」
「俺―――!」
戸惑う七海の言葉を遮るように、翔太は声を張り上げた。
「七海に優しくする……!」
小さな拳を握りしめ決意をにじませる翔太。黛が大きく頷いて見せると、得意げに胸を張った。
その様子があまりにも可愛らしくて。七海は「うーん」と一言唸って、それからガクリと肩を落とした。諦めたように溜息を吐き、翔太の前にしゃがみ込む。そして正面から目線を合わせ―――ニコリと微笑んで見せた。
「ありがとう、翔太。翔太の気持ち……嬉しいし、頼もしいよ。でも、危なくない範囲でお願いね」
丁寧にゆっくりと、七海は翔太にお礼の気持ちを返した。
すると翔太はキラキラと目を輝かせて、シッカリと大きく頷いたのだった。
「何だか翔太、ちょっと見ない間にすっごく大人になった気がするなぁ……」
思いっきり遊び通した翔太は疲れ切ってスヤスヤと寝息を立てている。居間で子供番組を見ていたと思ったら、ソファに突っ伏して眠ってしまっていた。ぷくりとした頬っぺたを愛でながら、七海はそう呟いた。
「ところで黛君『男女七歳にして席を……』って随分古い事言うのね。これって要するに男尊女卑とか……そう言う時代のことわざじゃないの?」
話が途中になっていたため、その場で解消できずにいた疑問を七海は口にした。『席を分ける』と聞いて―――畳の上で男性がご飯を食べている間、台所の冷たい板の間で女性がご飯を食べる昔の決まりごとだとか、小学校の授業で男女のクラスを分けてそれぞれ違う授業を受けさせるような……そんな古い時代のイメージが、七海の中に浮かびあがって来たのだ。
七海に問いかけられて、黛は首をひねった。
「そうか?『席』って言うのは当時の『むしろ』や『ござ』の事で、座りもするけれど寝る時に使うから―――要するに数えで七歳、今の時代で言うと六歳になったら男女はもう同衾させてはいけないって意味だった筈だぞ」
「……『どうきん』ってナニ?」
聞きなれない言葉に、今度は七海が首をひねった。
「『一緒に布団で寝る』って意味だ。昔の女子は十二歳くらいで結婚したらしいからな、六歳からもう男女の区別を付けるよう意識を育てなさいって言う儒教の決まり事だって俺は何かで読んだぞ。まあ原文では『食を共にせず』って続くから、七海の言うように食事場所を分けろって意味もあったかもしれないけどな」
「ふーん……なるほどねぇ、確かに小学校くらいから女子は女子、男子は男子って分かれて遊んでたような気がするから、教えるまでも無く子供達自身も違いを意識し始めるものなのかもね。と言う事は……六歳が、大人の始まりってこと?」
するとうつ伏せになっていた翔太が、ソファの上でごろりと仰向けになった。七海はクスリと笑ってしゃがみ込み、激しい寝相でアピールする翔太の頬を人差し指で、優しく突いてみた。
「こーんなモッチモチの頬っぺたの男の子は……まだまだ私にとって『大人の始まり』って言うより可愛い『お子ちゃま』の括りに、入れたくなっちゃうな。これってある意味、大人の我儘なのかな?」
愛しそうに微笑む七海に、黛もフッと眉を緩めた。
「確かにこのほっぺは貴重だな!」
そう言って黛は笑いながら、七海が触っている側ではない頬を指で優しく押した。
「柔らかいなー」
「ね」
それから二人は暫くの間―――フニフニと翔太の頬っぺたを堪能して過ごしたのであった。
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これにて、翔太のお泊り会は終了です。
これをきっかけに黛を見習って翔太がイケメン行動を発揮するようになるのは―――もう少し後のお話となります。……なんて、そこまで続いたりは多分しませんのでご安心を(笑)
お読みいただき、有難うございました。
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「いいか、まず女性には優しく接しろ」
コクリと翔太は頷いた。
「今はお前は小さいかもしれない。そして勿論、お前より大きい女も小学校にはたくさんいると思う。大人の女性だってそうだ。だけど―――女性って言うのは本来男より、か弱い生き物なんだ」
翔太はジッと真剣に黛の語りかける言葉に耳を傾けていた。
「いつもお前と『たたかいごっこ』をしてくれた七海も、女だ。だから優しくしなくちゃならない。しかもお腹に赤ちゃんがいる。俺がいない時は、お前が七海と赤ちゃんを守るんだ。だからお腹に頭から突進するなんて、もってのほかだ」
「あの……黛君、翔太はまだ六歳だし……」
小さな翔太の肩を大きな手で掴み、教えを授けるように語りかける黛の言葉に―――とうとう耐えられなくなって七海は声を上げた。
七海にとっては翔太はまだまだ幼い子供だ。大きな大人である七海を守れなんて言って、翔太自身が危ない目にあったりしないか心配になったのだ。
「翔太はもう、頭では理解できる年齢だ。こういう事はいきなり身に就くものじゃない、出来るようになる前にちゃんと言葉にしてまず、伝える事が大事なんだ。『男女七歳にして席を同じゅうせず』っていうだろ?基本的にもう男女の違いが理解できる年齢なんだ」
「でも……」
「俺―――!」
戸惑う七海の言葉を遮るように、翔太は声を張り上げた。
「七海に優しくする……!」
小さな拳を握りしめ決意をにじませる翔太。黛が大きく頷いて見せると、得意げに胸を張った。
その様子があまりにも可愛らしくて。七海は「うーん」と一言唸って、それからガクリと肩を落とした。諦めたように溜息を吐き、翔太の前にしゃがみ込む。そして正面から目線を合わせ―――ニコリと微笑んで見せた。
「ありがとう、翔太。翔太の気持ち……嬉しいし、頼もしいよ。でも、危なくない範囲でお願いね」
丁寧にゆっくりと、七海は翔太にお礼の気持ちを返した。
すると翔太はキラキラと目を輝かせて、シッカリと大きく頷いたのだった。
「何だか翔太、ちょっと見ない間にすっごく大人になった気がするなぁ……」
思いっきり遊び通した翔太は疲れ切ってスヤスヤと寝息を立てている。居間で子供番組を見ていたと思ったら、ソファに突っ伏して眠ってしまっていた。ぷくりとした頬っぺたを愛でながら、七海はそう呟いた。
「ところで黛君『男女七歳にして席を……』って随分古い事言うのね。これって要するに男尊女卑とか……そう言う時代のことわざじゃないの?」
話が途中になっていたため、その場で解消できずにいた疑問を七海は口にした。『席を分ける』と聞いて―――畳の上で男性がご飯を食べている間、台所の冷たい板の間で女性がご飯を食べる昔の決まりごとだとか、小学校の授業で男女のクラスを分けてそれぞれ違う授業を受けさせるような……そんな古い時代のイメージが、七海の中に浮かびあがって来たのだ。
七海に問いかけられて、黛は首をひねった。
「そうか?『席』って言うのは当時の『むしろ』や『ござ』の事で、座りもするけれど寝る時に使うから―――要するに数えで七歳、今の時代で言うと六歳になったら男女はもう同衾させてはいけないって意味だった筈だぞ」
「……『どうきん』ってナニ?」
聞きなれない言葉に、今度は七海が首をひねった。
「『一緒に布団で寝る』って意味だ。昔の女子は十二歳くらいで結婚したらしいからな、六歳からもう男女の区別を付けるよう意識を育てなさいって言う儒教の決まり事だって俺は何かで読んだぞ。まあ原文では『食を共にせず』って続くから、七海の言うように食事場所を分けろって意味もあったかもしれないけどな」
「ふーん……なるほどねぇ、確かに小学校くらいから女子は女子、男子は男子って分かれて遊んでたような気がするから、教えるまでも無く子供達自身も違いを意識し始めるものなのかもね。と言う事は……六歳が、大人の始まりってこと?」
するとうつ伏せになっていた翔太が、ソファの上でごろりと仰向けになった。七海はクスリと笑ってしゃがみ込み、激しい寝相でアピールする翔太の頬を人差し指で、優しく突いてみた。
「こーんなモッチモチの頬っぺたの男の子は……まだまだ私にとって『大人の始まり』って言うより可愛い『お子ちゃま』の括りに、入れたくなっちゃうな。これってある意味、大人の我儘なのかな?」
愛しそうに微笑む七海に、黛もフッと眉を緩めた。
「確かにこのほっぺは貴重だな!」
そう言って黛は笑いながら、七海が触っている側ではない頬を指で優しく押した。
「柔らかいなー」
「ね」
それから二人は暫くの間―――フニフニと翔太の頬っぺたを堪能して過ごしたのであった。
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これにて、翔太のお泊り会は終了です。
これをきっかけに黛を見習って翔太がイケメン行動を発揮するようになるのは―――もう少し後のお話となります。……なんて、そこまで続いたりは多分しませんのでご安心を(笑)
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