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結婚してください
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ルイが倒したケルベロスの魔石をお土産に、私は仲直りしたルイと一緒に我が家の洞窟に戻って来た
私とルイの姿を見つけた子狼達は、転がるようにして私達の側にやってくる
《ましゅたー、ごめんね》
《ましゅたー、だいしゅき》
《ましゅた、きらいになっちゃやだ》
みんな可哀想なくらい耳がシュンと折れ、尻尾が垂れ下がって後ろ足の間に挟まってしまっている
「みんな、ただいま。お利口にしてたかな?心配させてごめんね。直ぐにご飯作るから、待っててね」
私は挨拶もそこそこに、夕飯の準備に取り掛かる
今日の献立は既に決まっている
今日は絶対にカレーだ
私は、子狼達に穏やかに微笑むと、以前からこう言うこともあろうかとフライングして作っていた乳鉢と乳棒を取り出して、ルイにスパイス毎に細かくすり潰すようにお願いする
「ヒロ、これ、何?」
ルイはスパイスを初めて見るらしく、手に持って眺めたり匂いを嗅いだりしている
「これね、スパイスって言うの。それぞれ名前が付いてるんだけど……今は面倒臭いからその説明はまた今度ね。
でね、これはみんなすり潰して使うんだけど、これを料理に使う事で、例えば肉の臭みが消えたり、ピリッと辛みが出たり、飲み物に入れて体を温めたりと、すごい料理の幅が広がるんだよ!もう、凄いんだから!ずっと探しててやっと見つけたんだよ!もう、嬉しくてね……」
チュッ
「え?」
ルイからほっぺにキスされた
「ヒロ、可愛い」
不覚にも、顔が真っ赤になってしまった
それを見たルイがそれはそれは嬉しそうに微笑んだ
「ルイ、今、キスした?」
「うん、したよ。ヒロが、可愛い、かった、から。嫌、だった?」
「嫌……じゃないけど、びっくりした、から……」
「嫌、じゃない、なら、しても、いい、てこと?」
「違う!そんな意味じゃない。もう、するのはダメだよ」
「どうして?」
「どうしても」
「それ、理由、なって、ない」
「理由なんてなくても、ダメなものはダメなの」
「ふ~ん……ヒロ、また、後でね」
ルイは優しく微笑むと、スパイスをすり潰し始めた
その日は、私達が帰宅したのが遅く一度にたくさんの米を精米する時間がなかったので、夕食は玄米ライスにした
そして隠し味にヨーグルトとバナナと蜂蜜を入れた、野菜たっぷり中辛のポークカレーを作った
我ながら、会心の出来だった
「ヒロ、これは、あの、もぐもぐ……スパイス、とか、いうのを、もぐもぐ……使ったの?」
「ルイ、食べながら話すの禁止ね」
「わかった。ヒロ、これ、美味しい、オレ、好き」
《ましゅたー、これ、ちょっとだけ、からいれしゅ》
《ましゅたー、からい、はひ、はひ、はひ…》
《ましゅた、これ、にがて》
ルイはお気に召したようだけど、お子ちゃまの魔狼達には、まだカレーは早すぎたみたいだ
それでも、全員完食したけどね
ルイは玄米ライスがなくなるまで、おかわりしていた
お陰でかなり作ったはずのカレーは、気付けば殆どなくなっていた
流石のルイさんです
次に作る時は魔狼達には、甘口のカレーを別に用意しようと思ったのだった
その日の夜、私はいつもの藁の寝床で寝る用意をしていた
「ヒロ、少し、話し、しよ」
「うん、いいよ」
私は何気なく藁の寝床の端に座った
ルイはそんな私の隣にぴったりと体を密着させて座って来た
「ねえ……ヒロ……オレ、世界で、一番、ヒロが、好きだよ。ヒロを、好きな事、誰にも、負けない、自信ある。今日、ヒロ、いなくなって、オレ、思った。オレ、ヒロ、の事、世界で、一番、好き、だけど、ヒロが、世界で、一番、好きだと、思うの、オレで、あって、欲しい。オレ、ヒロの、1番に、なりたい。オレと、ヒロ、種族、違う。でも、俺、ヒロの、一番に、なりたい」
「ルイ……」
真っ直ぐにヒロを見つめるルイが、ヒロの手を取る
「ヒロ、オレと、結婚、して、ください」
多分ここにいる限り、この世界ではこの先もずっと2人きりなのだろう
それを考えれば、たとえ種族が違っても2人が結ばれるのは、ごく自然な流れなんだと思う
けれど、ルイは私を好きだから、私の一番になりたいと言ってくれた
胴長短足でガニ股だし、猫背の上に毛深くて殆ど猿と見間違うような顔で、ちっともかっこよくないけれど、でも、誰よりも強くてそして優しくて、私の事を世界一好きだと言ってくれる
きっとこの先何があっても、ルイは命がけで私を愛してくれるだろう
だから、私は素直にルイの手を取ろうと思った
たとえ種族が違っても、2人ならばきっと乗り越えられると、私にはそれが真実だと思えた
「ルイ、私もルイが好き。私をルイのお嫁さんにしてください。よろしくお願いします」
そう言うや否や、私はキツく抱きしめられ思い切りキスをされた
「ヒロ、ヒロ、好きだよ。ヒロ、一つに、なりたい。いい?」
私は恥ずかしくて俯いたまま頷いた
雄としてのルイは、どこまでも優しかった
「ヒロ、オレ、受け止めて」
そして初めてルイと一つになった時、急にルイが眩い光に包まれた
私はその眩しさに、思わずキツく目を瞑ってしまった
ようやく眩い光が収まって目を開けた時、そこにはルイではない、誰かがいた
「貴方、だれ?」
私とルイの姿を見つけた子狼達は、転がるようにして私達の側にやってくる
《ましゅたー、ごめんね》
《ましゅたー、だいしゅき》
《ましゅた、きらいになっちゃやだ》
みんな可哀想なくらい耳がシュンと折れ、尻尾が垂れ下がって後ろ足の間に挟まってしまっている
「みんな、ただいま。お利口にしてたかな?心配させてごめんね。直ぐにご飯作るから、待っててね」
私は挨拶もそこそこに、夕飯の準備に取り掛かる
今日の献立は既に決まっている
今日は絶対にカレーだ
私は、子狼達に穏やかに微笑むと、以前からこう言うこともあろうかとフライングして作っていた乳鉢と乳棒を取り出して、ルイにスパイス毎に細かくすり潰すようにお願いする
「ヒロ、これ、何?」
ルイはスパイスを初めて見るらしく、手に持って眺めたり匂いを嗅いだりしている
「これね、スパイスって言うの。それぞれ名前が付いてるんだけど……今は面倒臭いからその説明はまた今度ね。
でね、これはみんなすり潰して使うんだけど、これを料理に使う事で、例えば肉の臭みが消えたり、ピリッと辛みが出たり、飲み物に入れて体を温めたりと、すごい料理の幅が広がるんだよ!もう、凄いんだから!ずっと探しててやっと見つけたんだよ!もう、嬉しくてね……」
チュッ
「え?」
ルイからほっぺにキスされた
「ヒロ、可愛い」
不覚にも、顔が真っ赤になってしまった
それを見たルイがそれはそれは嬉しそうに微笑んだ
「ルイ、今、キスした?」
「うん、したよ。ヒロが、可愛い、かった、から。嫌、だった?」
「嫌……じゃないけど、びっくりした、から……」
「嫌、じゃない、なら、しても、いい、てこと?」
「違う!そんな意味じゃない。もう、するのはダメだよ」
「どうして?」
「どうしても」
「それ、理由、なって、ない」
「理由なんてなくても、ダメなものはダメなの」
「ふ~ん……ヒロ、また、後でね」
ルイは優しく微笑むと、スパイスをすり潰し始めた
その日は、私達が帰宅したのが遅く一度にたくさんの米を精米する時間がなかったので、夕食は玄米ライスにした
そして隠し味にヨーグルトとバナナと蜂蜜を入れた、野菜たっぷり中辛のポークカレーを作った
我ながら、会心の出来だった
「ヒロ、これは、あの、もぐもぐ……スパイス、とか、いうのを、もぐもぐ……使ったの?」
「ルイ、食べながら話すの禁止ね」
「わかった。ヒロ、これ、美味しい、オレ、好き」
《ましゅたー、これ、ちょっとだけ、からいれしゅ》
《ましゅたー、からい、はひ、はひ、はひ…》
《ましゅた、これ、にがて》
ルイはお気に召したようだけど、お子ちゃまの魔狼達には、まだカレーは早すぎたみたいだ
それでも、全員完食したけどね
ルイは玄米ライスがなくなるまで、おかわりしていた
お陰でかなり作ったはずのカレーは、気付けば殆どなくなっていた
流石のルイさんです
次に作る時は魔狼達には、甘口のカレーを別に用意しようと思ったのだった
その日の夜、私はいつもの藁の寝床で寝る用意をしていた
「ヒロ、少し、話し、しよ」
「うん、いいよ」
私は何気なく藁の寝床の端に座った
ルイはそんな私の隣にぴったりと体を密着させて座って来た
「ねえ……ヒロ……オレ、世界で、一番、ヒロが、好きだよ。ヒロを、好きな事、誰にも、負けない、自信ある。今日、ヒロ、いなくなって、オレ、思った。オレ、ヒロ、の事、世界で、一番、好き、だけど、ヒロが、世界で、一番、好きだと、思うの、オレで、あって、欲しい。オレ、ヒロの、1番に、なりたい。オレと、ヒロ、種族、違う。でも、俺、ヒロの、一番に、なりたい」
「ルイ……」
真っ直ぐにヒロを見つめるルイが、ヒロの手を取る
「ヒロ、オレと、結婚、して、ください」
多分ここにいる限り、この世界ではこの先もずっと2人きりなのだろう
それを考えれば、たとえ種族が違っても2人が結ばれるのは、ごく自然な流れなんだと思う
けれど、ルイは私を好きだから、私の一番になりたいと言ってくれた
胴長短足でガニ股だし、猫背の上に毛深くて殆ど猿と見間違うような顔で、ちっともかっこよくないけれど、でも、誰よりも強くてそして優しくて、私の事を世界一好きだと言ってくれる
きっとこの先何があっても、ルイは命がけで私を愛してくれるだろう
だから、私は素直にルイの手を取ろうと思った
たとえ種族が違っても、2人ならばきっと乗り越えられると、私にはそれが真実だと思えた
「ルイ、私もルイが好き。私をルイのお嫁さんにしてください。よろしくお願いします」
そう言うや否や、私はキツく抱きしめられ思い切りキスをされた
「ヒロ、ヒロ、好きだよ。ヒロ、一つに、なりたい。いい?」
私は恥ずかしくて俯いたまま頷いた
雄としてのルイは、どこまでも優しかった
「ヒロ、オレ、受け止めて」
そして初めてルイと一つになった時、急にルイが眩い光に包まれた
私はその眩しさに、思わずキツく目を瞑ってしまった
ようやく眩い光が収まって目を開けた時、そこにはルイではない、誰かがいた
「貴方、だれ?」
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