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聖女召喚は成功した、、、ハズ?
聖女召喚した理由
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「おいっ!何故聖女の姿が見当たらないのだ!」
魔法陣からすーっと金色の光が消えていくのを呆然と見続ける人々の中で一番先に我に返ったヨルムンド王国第二王子のジョセフは叫んだ。
聖女召喚は成功したはずだった。魔術師6名による聖女召喚の儀式は粛々と行われ成功を現す金色の光を放つ魔法陣をその場に居た者全てが歓喜の声を上げて見つめていたのだ。
しかしいくら待っても魔法陣の中央に現れる者は居なかった。只々虚しく光り続ける魔法陣。それもやがて光は弱くなっていきとうとう魔法陣から光は失われた。
「いや、これはっ、確かに聖女召喚の儀は成功したのです!」
予想外の展開に魔術師団長は狼狽えながらも答えた。
「しかし聖女は現れなかったではないか!」
確かにジョセフも魔法陣が金色に輝いたのを見た。だが聖女の姿は何処にも見当たらない。焦りと苛立ちを抑え口を閉じたジョセフの横から銀髪の長髪を一つで結び前に垂らした白い服の青年が声を出した。
「もしかしたら魔法陣に不備があったのではないでしょうか?聖女召喚は確かに成功したと思われます。しかし聖女様はこことは違う場所に召喚されてしまったのでは?」
銀髪の青年ディーン・ロンドはこの国の大神官の息子であり本人も神官をしていた。そしてジョセフの幼馴染でもあった。
「ディーン、何か感じるのか?」
「確かではありませんがこの魔法陣が強く金色に輝いた時、聖女様の存在を感じられました。しかしその気配はスッと何処かに遠ざかって行ったのを感じたのです。」
「んー、あぁ確かに。ココの文字が少し変かも?召喚場所の座標軸がそれでズレたんじゃないかなぁ。」
そう言ったのは魔術師のローブを纏った茶髪の髪と琥珀色の瞳を持った青年が言った。名をテオドア・ジョスターと言う彼は6人の魔術師とは別にディーンの側にいた。彼もまたジョセフとは幼馴染であり彼の側近の一人でもあった。
「なっ!私がミスをしたとでも言うのか!」
魔術師たちの中で一番上等な生地のローブを纏った男がテオドアをキッと睨む。
「だから聖女召喚は成功したって神官様も言っているじゃないですか団長。ちょっと違う場所に召喚しちゃっただけで。」
副団長であるテオドアは魔術師としての才はこの国の魔術師団随一と呼び声の高い者であったが魔術師団長アサルトとは水と油の如く性格が合わず関係は良好とは言い難かった。プライドが高く生真面目なアサルトがいつも軽い口調で飄々としながらも成果を出すテオドアを日々目の敵にしており今回の儀式でも召喚するメンバーから外していた。
「ここで下らない言い争いをしていても仕方ないだろう!テオ、聖女様が召喚された場所は特定出来るのか?」
低くよく通る声でジョセフの後ろに控えていた騎士が話に割って入る。紺色に近い黒髪を短く切り揃え翠の瞳の彼はロイド・グレハムと言う近衛騎士でジョセフ付きだ。乳兄弟の間柄のジョセフに忠誠を誓い実直に剣の腕を磨いて騎士として実力をつけてきた男である。
「ちょっと待って、ロイ。」
ロイドの言葉でアサルトへの関心は無くなったのか、テオドアは魔法陣をしっかりと眺め始め何か呪文の様なものを唱えると魔法陣から一筋の光が西の方角に伸びてやがて消えた。途端に騒めき出す魔術師たち。
「光が指し示した方角だと思う。たぶん勇者村の方角じゃないかなぁ。」
「勇者の村?西の辺境地だな。王城からだと馬車で7日ほどかかる場所か。なら今すぐ出発するぞ。」
ジョセフが踵を返して召喚の間から出て行こうとする。
「お待ち下さい、ジョセフ様。勇者の村と言うとあの噂の出どころでもあります。その場所の近くに聖女様が召喚されたというのも偶然では無いのかも知れません。そのまま魔王討伐出来る様に準備された方が宜しいかと。」
宰相がラード国王を見遣りながら言った。
「うむ、確かにそうだな。ジョセフよ。魔王復活の真偽の確認と未だ現れない勇者の代わりとなり聖女様と共に魔王の完全復活を阻止するのだ。ディーン、テオドア、ロイド、お前たちも共に旅をし2人を手助けしてくれ。」
国王は我が子に魔王討伐の命を下すという苦渋の決断に少し顔を歪め臣下に対するように重々しく言った。2、3年前に『魔王が誕生したらしい』と言う噂が西の辺境の地から流れ始め数ヶ月前には『魔王復活の兆しあり』と女神の神託が神殿に降りていた。
本来なら『魔王復活』と共に勇者や聖女も現れるはずだった。しかし魔王に関連する小さな噂はポツリポツリと流れてくるが肝心の勇者と聖女の噂は全く聴こえて来ない。名乗り出る者も居ない。
このままでは神託の通り魔王が完全復活を果たしこの国を滅ぼそうとするかも知れない。
一向に現れる気配の無い勇者と聖女に頭抱えた国王と国の上層部は一つの決断をした。それが『異界からの聖女召喚』だった。過去の文献でも魔王が現れた際に『聖女召喚の儀』を行った記録があった。
聖女さえ居れば完全復活前の魔王であれば勇者でなくとも倒す事が出来るとの記録も残っていた。
そしてこの国で若干22歳ではあるが剣神と称えられる第二王子が魔王討伐に出ると名乗り出た。彼の周りには次期大神官候補と言われるディーン、天才魔術師の呼び声高いテオドア、そして幼少の頃からジョセフと剣を交えてきた近衛騎士ロイドが居る。そこに聖女が加われば恐らくこの国最強のパーティーとなるだろう。
そうして聖女召喚の儀が行われたのだった。手違いで別の場所に召喚されてしまった聖女を見つけ出し魔王討伐の仲間に加わって貰うべくジョセフたちは翌日には旅の支度を整え先ずは聖女を見つけ出さねば、とひっそりと王城の裏門から出立したのだった。
魔法陣からすーっと金色の光が消えていくのを呆然と見続ける人々の中で一番先に我に返ったヨルムンド王国第二王子のジョセフは叫んだ。
聖女召喚は成功したはずだった。魔術師6名による聖女召喚の儀式は粛々と行われ成功を現す金色の光を放つ魔法陣をその場に居た者全てが歓喜の声を上げて見つめていたのだ。
しかしいくら待っても魔法陣の中央に現れる者は居なかった。只々虚しく光り続ける魔法陣。それもやがて光は弱くなっていきとうとう魔法陣から光は失われた。
「いや、これはっ、確かに聖女召喚の儀は成功したのです!」
予想外の展開に魔術師団長は狼狽えながらも答えた。
「しかし聖女は現れなかったではないか!」
確かにジョセフも魔法陣が金色に輝いたのを見た。だが聖女の姿は何処にも見当たらない。焦りと苛立ちを抑え口を閉じたジョセフの横から銀髪の長髪を一つで結び前に垂らした白い服の青年が声を出した。
「もしかしたら魔法陣に不備があったのではないでしょうか?聖女召喚は確かに成功したと思われます。しかし聖女様はこことは違う場所に召喚されてしまったのでは?」
銀髪の青年ディーン・ロンドはこの国の大神官の息子であり本人も神官をしていた。そしてジョセフの幼馴染でもあった。
「ディーン、何か感じるのか?」
「確かではありませんがこの魔法陣が強く金色に輝いた時、聖女様の存在を感じられました。しかしその気配はスッと何処かに遠ざかって行ったのを感じたのです。」
「んー、あぁ確かに。ココの文字が少し変かも?召喚場所の座標軸がそれでズレたんじゃないかなぁ。」
そう言ったのは魔術師のローブを纏った茶髪の髪と琥珀色の瞳を持った青年が言った。名をテオドア・ジョスターと言う彼は6人の魔術師とは別にディーンの側にいた。彼もまたジョセフとは幼馴染であり彼の側近の一人でもあった。
「なっ!私がミスをしたとでも言うのか!」
魔術師たちの中で一番上等な生地のローブを纏った男がテオドアをキッと睨む。
「だから聖女召喚は成功したって神官様も言っているじゃないですか団長。ちょっと違う場所に召喚しちゃっただけで。」
副団長であるテオドアは魔術師としての才はこの国の魔術師団随一と呼び声の高い者であったが魔術師団長アサルトとは水と油の如く性格が合わず関係は良好とは言い難かった。プライドが高く生真面目なアサルトがいつも軽い口調で飄々としながらも成果を出すテオドアを日々目の敵にしており今回の儀式でも召喚するメンバーから外していた。
「ここで下らない言い争いをしていても仕方ないだろう!テオ、聖女様が召喚された場所は特定出来るのか?」
低くよく通る声でジョセフの後ろに控えていた騎士が話に割って入る。紺色に近い黒髪を短く切り揃え翠の瞳の彼はロイド・グレハムと言う近衛騎士でジョセフ付きだ。乳兄弟の間柄のジョセフに忠誠を誓い実直に剣の腕を磨いて騎士として実力をつけてきた男である。
「ちょっと待って、ロイ。」
ロイドの言葉でアサルトへの関心は無くなったのか、テオドアは魔法陣をしっかりと眺め始め何か呪文の様なものを唱えると魔法陣から一筋の光が西の方角に伸びてやがて消えた。途端に騒めき出す魔術師たち。
「光が指し示した方角だと思う。たぶん勇者村の方角じゃないかなぁ。」
「勇者の村?西の辺境地だな。王城からだと馬車で7日ほどかかる場所か。なら今すぐ出発するぞ。」
ジョセフが踵を返して召喚の間から出て行こうとする。
「お待ち下さい、ジョセフ様。勇者の村と言うとあの噂の出どころでもあります。その場所の近くに聖女様が召喚されたというのも偶然では無いのかも知れません。そのまま魔王討伐出来る様に準備された方が宜しいかと。」
宰相がラード国王を見遣りながら言った。
「うむ、確かにそうだな。ジョセフよ。魔王復活の真偽の確認と未だ現れない勇者の代わりとなり聖女様と共に魔王の完全復活を阻止するのだ。ディーン、テオドア、ロイド、お前たちも共に旅をし2人を手助けしてくれ。」
国王は我が子に魔王討伐の命を下すという苦渋の決断に少し顔を歪め臣下に対するように重々しく言った。2、3年前に『魔王が誕生したらしい』と言う噂が西の辺境の地から流れ始め数ヶ月前には『魔王復活の兆しあり』と女神の神託が神殿に降りていた。
本来なら『魔王復活』と共に勇者や聖女も現れるはずだった。しかし魔王に関連する小さな噂はポツリポツリと流れてくるが肝心の勇者と聖女の噂は全く聴こえて来ない。名乗り出る者も居ない。
このままでは神託の通り魔王が完全復活を果たしこの国を滅ぼそうとするかも知れない。
一向に現れる気配の無い勇者と聖女に頭抱えた国王と国の上層部は一つの決断をした。それが『異界からの聖女召喚』だった。過去の文献でも魔王が現れた際に『聖女召喚の儀』を行った記録があった。
聖女さえ居れば完全復活前の魔王であれば勇者でなくとも倒す事が出来るとの記録も残っていた。
そしてこの国で若干22歳ではあるが剣神と称えられる第二王子が魔王討伐に出ると名乗り出た。彼の周りには次期大神官候補と言われるディーン、天才魔術師の呼び声高いテオドア、そして幼少の頃からジョセフと剣を交えてきた近衛騎士ロイドが居る。そこに聖女が加われば恐らくこの国最強のパーティーとなるだろう。
そうして聖女召喚の儀が行われたのだった。手違いで別の場所に召喚されてしまった聖女を見つけ出し魔王討伐の仲間に加わって貰うべくジョセフたちは翌日には旅の支度を整え先ずは聖女を見つけ出さねば、とひっそりと王城の裏門から出立したのだった。
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