【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり

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初恋の人

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誓約魔法というよりは宣言に近いお父様の言葉に会場内が騒然となる。


「もしかして今のが誓約魔法だとでも言うのか?」

「まさかっ!ただ偉そうに宣言しただけだろう」

そんな声があちこちから聞こえてくる。半信半疑というよりは全く信じていない事が伺える。


 しかし、国王陛下を始め王族の方々と一部の高位貴族たちは顔が強張っている。お父様の希少スキル『誓約魔法』は国へと報告されているが、秘匿扱いにはなっていないのだ。

お父様が所持しているスキルの誓約魔法は、私とは違って幾つかの魔法が使える。

 魔道具のように用紙に誓約内容を書けば魔法が掛かり誓約書としての効力を持つ、という魔法だけでなく、として効力を持つ魔法も使える。しかも相手の同意も署名も必要が無い。


 そして恐ろしいのが、お父様が誓約を破った時に与えられる罰則ペナルティーを口にしていない事だ。
通常は言葉の誓約であっても破った時の罰則も口にしている。
そうでなければ、お父様にとって都合が良いだけの一方的なモノになってしまうからだ。

 けれど罰則を口にしなくても誓約書は完成する。その場合は事になる。


 軽い罰則ならば問題はない。けれどこの場でお父様の言った内容は国で秘匿扱いされる程の重要機密だ。
だからこその誓約魔法だと気付けた人がどれぐらい居ただろう。


 その罰則が軽いモノである訳が無い事に気付いた王族の方々や一部の人の表情に気付いていた人が一人でも多ければいい。
 人当たりはいいけれど腹黒い部分も持ち合わせているお父様が、罰則の恐ろしさを親切にこの場で説明する事は無いだろうから。


 罰則を受けた者は魔法を掛けたお父様にしか罰則を解除する事は出来ない。
 腹黒くても残忍な性格では無いお父様が命を脅かす罰則をつける事はないだろうけれど、明日以降、ルーデンブルグ邸へと助けを求める訪問客が押し寄せる事になるだろうと思うと、皆の口が固い様に、と祈るしかない。


「なんだ、ただの脅し文句ではないか。やはり苦し紛れの嘘だったようだな」


ルナティア嬢や後ろの取り巻きたちと笑いながらそう言った殿下を驚きの目で見る王族の方々に同情を禁じ得ない。

彼はお父様のスキルを知らなかったのか。


 王族は教育を受ける際に、国に報告されている希少スキルについて学んでいる筈なのだ。
その証拠に殿下の弟妹も驚きの表情を浮かべ兄である殿下を見つめているのに、それすらもレオンハルト殿下は気付いていない。

「レオンハルト殿下、父のスキルは本物です。必ず誓約を守ると心に留め置いて下さいませ」


「下らない戯言はもういい。お前の特殊スキルとやらを早く見せてみろ!

使えるものならばな」


仲間内で笑い合いながら蔑むように私を睨みつける殿下に小さくため息を吐く。


・・・忠告はした。

彼は最後まで自分の間違いに気付けなかったけれど。



それでも、、、初恋の人に



 私がフッと笑みを漏らすと殿下たちは怪訝な表情や馬鹿にされたと勘違いして顔を真っ赤にしている取り巻きもいる。
そんな事は気にせずに私は魔力を体に張り巡らせて祈るように手を組んだ。そして深く深呼吸をすると口を開いた。


「女神降臨っ!」


一言、たったこの一言が私の特殊スキル『女神降臨』を使う時の言葉だ。


その瞬間、私の手から白い光が溢れて目が眩む程の光が会場を包み込み、そして光は消えた。


「はぁ~い。マリちゃん、呼んだ?」


何とも気の抜ける様な口調で突然、空中に現れた女性はピンクブロンドの髪をフワリ、フワリとさせながらゆっくりと私の目の前に降りてきた。


「ルナリス様、お久しぶりです」


ルナリス様と直接お会いするのは、あの日以来の事で実に十年ぶりの再会だった。


「んもぅっ!違うでしょっ。ルーナでしょ。

いつもルーナって呼んでくれるのにぃ~、マリちゃんたら他人行儀なんだからっ!」


 小さな子を叱るようにメッ、と言いながらルナリス様は、私の両手を取ってブンブンと上下に振る。彼女はいつもこのような感じで神様とは思えない態度で私に話し掛けてくる。

 けれどこの大勢が見守る中では例え親しい間柄だったとしても、我が国の守護神、女神ルナリス様を愛称呼びで呼ぶなど出来ないわよね。


「えっ!?やだっ、どうして女の人が宙に浮いて出て来たの!?」


 状況を察する事の出来ないルナティア嬢の声で、ここがルーデンブルグ邸では無い事を思い出す。

普段は私の部屋で声のみで二人きりで会話をしていたので、今は周囲に人が居る事をウッカリ忘れていたわ。


「ん?あら、レオンじゃない。元気?」


神様も場の空気を読むという事はしない、らしい。


ルナティア嬢の声で振り返ったルナリス様は、青い瞳をキラキラさせながらレオンハルト殿下に手を振りながら声を掛けた。


十年振りの再会でも女神ルナリス様にとっては、昨日の事の様に感じているのでしょうね。


「ル、ルーナ、、、、」



どうやらルナリス様を見て、レオンハルト殿下も十年前の記憶が呼び起こされたようだ。
殿下は初恋の人の突然の登場に目はルナリス様に釘付けになっているけれど、初恋の人ルーナがの女神様だった事に気づいているのかしら?



「ん、そうだよ~。あの時の串焼は美味しかったよねぇ。またマリちゃんと三人で食べに行きたいね」


・・・それは絶対に遠慮させて頂きますわ。
それにこの歳で、この面子でお忍びで出掛けるのは無理でしょう。八歳の時だって忍べていなかったのに。


 ふと気づけば私とレオンハルト殿下とルナティア嬢、そして取り巻き以外のこの場にいる人たちが、ルナリス様に向かって膝を付いて頭を下げていた。勿論、お父様もだ。


「えっ、皆、何で蹲っているのぉ?普段通りにしててよぉ。

じゃないと私、目立っちゃうじゃない。恥ずかしいっ!」


その目立っている人にさっきから『マリちゃん』呼びされている私の方が恥ずかしいと思う。

と言うのは置いておいて、皆が跪いたままでは一緒に立っている私も恥ずかしいので、ルナリス様にお願いして、女神ルナリス様のお言葉として立ちあ上がって貰った。


「マ、マリエッタ!こ、これは一体どういう事なんだ!?」


 ルナティア嬢を初恋の人と勘違いしていた殿下は、ご本人登場で流石に直ぐにルナリス様が初恋の人である、と分かったようだけれど、その相手がまさかの女神ルナリス様だった事にやっと気付いたみたい。

ルナリス様からはなんとなく神々しいオーラも出ているのに気付くのが遅すぎじゃない?


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ここまでお読み下さりありがとうございます。

「いいね」やエールでの応援もいつもありがとうございます。

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