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何でもないようにさらっと言ってのける元哉に、僕はいつも驚かされます。
あそこまで家族に愛されているというのに、仕事仲間にも頼りにされているというのに、それら全てを捨てても良いと思えるほどのものを僕は持っていないのに。
どうして、元哉は。


「そんなこと、簡単に言わないでください」


「簡単ではないさ。事の重さも理解して言っている。それに君が軽い言葉が嫌いなのはよく知っているからな。おかげで何回フラれたことか」


あまりにも自然に口説いてくるものだから、誰にでも言っているのだと思っていたのですよね。
それを元哉の元恋人である女性にさらっと伝えたら。


「え?!何、元哉、毒でも盛られたの?!」


そう驚いていました。
元哉は毒でも盛られないと人を口説けないように思われていたようです。
そこであぁ、僕と彼女とでは違うのだなと思ったのです。
男性だから、女性だからというのもあるのでしょうけど。


「真君、俺は君の気持ちを優先したい。だから、君の気持ちが定まったら言って欲しい。俺はいつまでも待ってるから」


「………分かりました。その時が来たらお伝えします」


そんなときが良いのですけどね。
あんな素晴らしいご家族に、僕のことを紹介して欲しいと願うときなど来るのか分かりませんが、そのときは、どうか元哉の大切なもの全てが失われませんように。








おわり







最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
無事ここまで書き終えることが出来ましたのは、お付き合いいただいた皆様のおかげです。
次回作も少しでもお楽しみいただけましたら光栄です。
今後ともよろしくお願いいたします。
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