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(3)コスプレ会場にて

あの男の子はねえ

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 志桜里と比べ弘樹の方が背が低かった。しかも顔つきが似通っていたので歳の差がある姉弟のように見られることが多かった。それだけ雰囲気が似ていたという事だ。でもコミックフェスの会場の二人は異様な光景だった。方や二・五次元キャラクターの内臓、そして方やそのキャラクターを撮影するマニアックなカメラ小僧だった。しかも後者は相手が自分が最も知っている異性の一人だと気付いてもいなかった。

 そんな時、志桜里を内臓としている「基美」に肩を寄せる者がいた。友人の愛梨を内臓した「紘子」だった。それはまるで「基美」の邪魔をするかのようだった。その様子を見たギャラリーからシャッター音がしきりに聞こえてきた。こんなシチュエーションもなかなかあかったからだ。

 そのギャラリーの中に弘樹もいたがなぜか志桜里には自分の方ばかり注目しているように感じていた。もし、素顔の志桜里だったら恥ずかしい所だったが、いまは自分ではない別物だからお構いなかった。

 弘樹が視線から消えた後、志桜里は成海と愛梨と一緒に休憩スペースに行く事になった。ただ、スペースを使うレイヤーも多く順番待ちになってしまった。そこの行列は一般客とは隔絶したところだったのでしゃべっても問題なかったが、なぜか二人の着ぐるみ美少女はなりきっているのか磁気ボードでコミュニケーションしていた。

 ”しおり暑いわね。あなたたいじょうぶ?”

 ”へいきよ。気持ちいいぐらいよ”

 ”ホント? すごいわね。さっきの学生みたいなカメラ小僧覚えている。やたらと高性能な機材持っていた。それにわたしよりもしおりを撮っていた”

 ”ええ”
 直観的にそれは弘樹の事だと分かった。彼のように著名なカメラマンだった叔父さんの機材を持っていたのは他にいなかったからだ。

 ”あのカメラ小僧。着ぐるみの女の子ばっかとってるので有名よ”

 ”なんで知っているの?”

 ”彼、SNSで画像公開しているから。あたし別のキャラクターの内臓していたとき何度も見たから”

 そう”書く”愛梨は成海による今日の「アルテミスの美少女たち」以外にも魔法少女の着ぐるみの内臓をしているので確かなようだった。

 ”そうなんだ。彼どう思う?”
 志桜里は不安になっていた。幼馴染で従姉弟で元カレの評価が気になっていた。もしかすると弘樹はエッチなやつだと思われているのではないかと考えてしまったからだ。

 ”いい作品とっているからいいよ! けっこう被写体とるの上手いよ!”

 その文章を読んで志桜里は安心したが、その後ろから成海が近づいていた。
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