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(3)コスプレ会場にて

真里亜には

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 「アルテミスの美少女たち」のキャラクターにはそれぞれモデルがいるという。成海によれば詳しいことは個人が特定されるので明らかにできないけど、高校時代の先輩で今でいう百合百合の関係の仲間がいたという。だから真里亜も基美も現実に存在したとある女性だという。もっとも相当脚色はしているとはいうけども。

 「基美、さっきあなたを撮影していたギャラリーで結構ハイスペックなカメラを持っていた学生風の男の子がいたけど、なんだか内臓に似ていない?」

 志桜里はすぐに弘樹のことだと分かった。幼い頃には姉弟とよく間違われたほど似ている顔つきだったからだ。中学生の時に弘樹に面白半分に化粧をしてみたら、女の子のようになったこともあった。

 ”それってオレンジのカメラバックを持ってた人”
 それは弘樹の父が息子にプレゼントしたバックのことだった。あのような派手なバックを持っていたギャラリーは他にいなかったからだ。

 「そうよ、なんかあの子って真里亜のイメージに合うのよ」
 成海が言った事に志桜里よりも早く反応し磁気ボードに文字を書き込んだのは「紘子」の内臓だった。

 ”先生、男ですよ!”

 「なんかイメージが合うのよねえ。真里亜のモデルにした先輩って、女らしい綺麗な人なのに男勝り、というか男のような力強さがあって・・・ほら、作中の真里亜もそうじゃないの。時折、男がするような思い切った行動をするじゃないのよ?
 だから、いっそうのこと男でも構わないかと。それにね、基美というキャラクターとの相性がよさそうな気がするのよ。だからダメもとでもやってくれないかと聞きたいなあって」

 それを聞いて志桜里は心の中で動揺していた。弘樹は従姉弟であるし元カレだと! もし血縁関係がなければ本当に今でも関係を続けたかったんだと! それに、男女の関係にもなりたかったんだと!

 ”先生、その男知っていますよ!”
 またも「紘子」が筆談した。でも志桜里は口に出したかった。あの男は私がもっと知っている関係だと!

 そのあと一行は休憩室でマスクを外してトイレに行ったり軽めの食事をして、再び着ぐるみ姿に戻るときが来た。午後からは依頼があった「アルテミスの美少女たち」の同人誌を扱うブースなどによることになっていたので、午前のようには出来ないはずだった。だからもうコスプレ会場には戻れないかもしれなかった。それは契約上真里亜の内臓は午後3時で終了だったので、全員そこで終わりのはずだったからだ。

 そういった予定が伝えられ、志桜里が「基美」のマスクを被ろうとしたとき、成海にこういった。

 「先生、さっきの男の子ですけどあの人は従姉弟で元カレです! 先生は以前お話ししていたアレを真里亜としてくれないかっていっておられましたが、あの人とならやっても良いですよ! そういった関係になるのが本望でしたから」
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