乙女ゲームの悪役ボスに生まれ変わったけど、ヒロイン可愛すぎてつらい。

ファネシス

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第1章

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私達は窓から屋敷の中へと侵入した。
中々、内装も豪奢で床一面が大理石。廊下には赤い絨毯が敷いてあり、お貴族様のお屋敷~という感じだ。

「お前達、無事だったのか!」

部屋を出て廊下に出るとスウォンが操られたと思われる生徒複数を相手にしていた。
近くにフィオナはいないようだ。はぐれたのだろうか。

「スウォン、フィオナはどうしたんだ?」

ルヴィナスが私の尋ねたい事を先に質問してくれた。

「すまない。はぐれた。屋敷に入ったはいいものの、すぐにバレてな。他の生徒達に囲まれた。そこで分断されてしまったんだ。……スリーピング!」

スウォンは生徒達を眠りに落としながら、説明をしている。会話をしながら魔法を打つなんて、中々出来る人はいない。集中力が分散されるからだ。スウォンが本当に実力者なのだとわかる。
だが、フィオナとはぐれるなんて。彼女に何かあったらどうするつもりだ。スウォンに怒っても仕方がないのに、私の中で嫌な感情が渦巻く。

「スリーピング!……生徒達の様子も明らかにおかしいし、下手に攻撃することもできなくてな。手間だが、こうやって一人ずつ眠りに落とすしかなかった。すまない。」

スリーピングは対個体にしか効かない。複数の人間にかけるのはほぼ不可能だ。ゼノくらいの力があれば別であるが。

「言い訳なんて会長らしくないですね。ともかく、ここを切り抜けるしかなさそうです。スリーピング!」

私もまた一人生徒を眠りに落とす。
良かった。まだ、魔法は使えるようだ。
しばらくして、周囲の生徒はみんな眠りについた。

「ふぅ、片付いたか?」

ルヴィナスが周囲を見渡し額の汗を拭う。

「そう、みたい……ですね。」

私は肩で息をしていた。普段よりも魔法を使うのがとてもしんどい。精神の集中が普段よりも倍以上かかる。

「フィオナの元へ急ぐぞ。」

スウォンだけが一人涼しい顔をしていた。私たちより多くの生徒に魔法をかけたのに。本当に優秀なんだな。

私たちはその場を後にして先へ進んだ。フィオナの叫び声が聞こえてからずいぶん経ってる。おそらくゲームの展開上、無事だとは思うが早く合流はしたい。

しばらくすると廊下の突き当たりにフィオナと数人の生徒が見えた。どうやら逃げているうちに追い込まれたらしい。この状況は見覚えがある。おそらくはここでフィオナの魔法が暴発する。

「フィオナ!」

スウォンがフィオナの名前を呼び駆け寄ろうとするが、一人の生徒がこちらに気づき魔法を放ってきた。

「ウインド。」

風魔法だ。風が吹きスウォンは押し戻されてしまった。

「くそっ!」

スウォンが悔しそうに歯噛みした。眠りの魔法を放とうとスウォンが詠唱すると、他の生徒も一緒になり風魔法を放ってくる。
ここでモタモタしている間に他の生徒達も集まってきてしまった。

「いつの間にこんなに集まってきたんだ。」

ルヴィナスがスリーピングを放ちながらつぶやいた。

「下手に攻撃魔法を放つわけにもいきませんしね……。」

おそらく操られているだけの生徒達に怪我を負わせるわけにはいかない。
おかしい、そろそろフィオナの魔法が暴発するはずなんだが……。

「ブリザード。」

フィオナを取り囲んでいた生徒の一人が彼女に向かって上級魔法を放つ。
私は焦った。そんなものを食らったら氷漬けになって凍死してしまう!

「フィオナ!逃げて!」

なんで?なんで魔法が暴発しないの!
ゲームの通りに進むんじゃないの?

「うぅ、ファイアー!」

フィオナがとっさにブリザードの威力を弱めようとしたのか火魔法の詠唱が響いた。

ジュッ
ビキビキビキ…

炎がかき消されたような音と何かが凍る音がした。私は頭の中が真っ白になる。フィオナが死んでしまう!

「フィオナ!」

私は生徒の合間を無理やり潜り抜けてフィオナの元へとたどり着いた。
フィオナがとっさに放った火魔法のおかげか全身は凍りついていないが、右腕が氷漬けになっている。

「シェリア……。逃げて……。」

寒いのか声が震えながらうわ言のように呟くフィオナ。早くしかるべき場所で治療しなければ腕は動かなくなるだろう。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
私がルート通りに進むと思ってフィオナを一人にしてしまったから。私のせいだ。私が守ると決めていたのに。

『ほら、彼らを殺しましょう。』

頭の中で誰かの声が響く。

『だって、フィオナを傷つけたのよ?』

でも、だからって殺すなんて。

『いいの?このまま、みすみす大切なものを奪われて。守りたいんじゃなかったの?』

守りたい、フィオナだけは。

『なら、使うのよ。ほら……』

そうね、これ以上、私のものを誰にも奪わせてはだめだもの。

「…シェリア?……髪が……?黒に染まって……。」

フィオナが、私を虚ろな目で見ながら不思議そうに言う。

「……私の髪、もともと黒なのよ。」

「え?」

そうだ、私の髪はもともと真っ黒だった。
闇属性を持つものは何故か髪が黒くなってしまう。小さい頃この髪が嫌いだったけ。

「フィオナ、あなたは私が守るから。」

私は自分自身にも決意するように告げた。
そうだ、彼女は私が守る。どんな奴にだって渡しはしない。
私は直接闇に力に問いかける。

「闇よ、爆ぜよ。」
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