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第1章
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いよいよ放課後。交流イベントが行われる。
すでに校庭には生徒が集まり、きゃいきゃいと賑わっていた。
私とフィオナは2人でやや隅の方で始まりを待っていた。
「はいはーい!新入生の皆さん、学校生活には慣れましたかー?」
風魔法で声を遠く大きく飛ばしているのだろう。私たちは隅の方でよく見えないが人だかりの先から声が聞こえてきた。
「俺は生徒会副会長のルイス=ターマライト=ウイグル。新入生のみんな、よろしくね!」
…!
名前を聞いた途端、また彼の情報が頭の中に流れてきた。
彼は生徒会副会長。あの俺様会長スウォンの補佐をしている。スウォンは実はかなり真面目なので、ルイスの明るさと陽気さで丁度釣り合いが取れていると評判だ。
こちらから姿が見えないが、容姿はオレンジがかった金髪で、長さは肩につくかつかないくらいだ。目は綺麗なブルー。透き通るような海の色だ。特徴的なのは左目の下に泣きぼくろがあり、ややタレ目なところだ。
ノリが良く生徒にも慕われ、先生にも可愛がられている。
「さて、歓迎のレクリエーションだけど。生真面目な会長は普通に鬼ごっことか言い出すから、俺がちょっとアレンジを加えたよ!」
ちらっと背伸びして様子を伺うと、スウォン会長がほっとけ、とばかりに腕組みをしてそっぽを向いている。
確かに、会長はレクリエーションとか考えるの苦手そうだもんね。
「鬼ごっこはかわりないんだけど、追加ルールを加えました~!さてさてー、説明しまーす。」
彼曰く、
全員、鬼、そして逃げる役。
そして、捕まった人はその人の言う事を1つ聞く。
「と、まあこんな感じです。捕まえる方法は問わないよ。こうやって…。」
彼が説明する声が一瞬途切れる。
「テレポートとか使って捕まえてもオーケー!」
急に横斜め後ろ…つまり、フィオナの背後からルイスの声が聞こえた。
あろうことかルイスはテレポートでフィオナの背後に移動し、後ろから抱きついていた。
「きゃっ!」
フィオナは可愛らしく悲鳴をあげた。
「…君、かわいいね。俺、一目惚れしちゃったかもしれない。」
魔法で声を飛ばさず、フィオナの耳元でぼそりと彼はつぶやいた。小さな声だが、隣にいる私には十二分に聞こえる。
ぬおおおお
私の愛する妹に何をするー!
私の怒りをよそに周りはざわめき始める。
また、あの子だわ。
ほんと、迷惑ー!
フィオナはより一層嫌われたようだ。
これもヒロインの業なのだろうか。着々と逆ハーレムを築き上げているといえよう。
周囲の動揺などいざ知らず、ルイスはどこ吹く風だ。
「もちろん、俺もそこの会長も教師陣も全校生徒、参加してるから。これを機にお目当な人にグッと近づけるかもしれないよ~?」
ざわっ
この副会長は人の興味を引き、煽るのが得意みたいだ。
かくいう私も俄然やる気が出てきた。
フィオナを捕まえればあんなことやこんなこと…できちゃうかもしれないってことだよね。ふふふふふ…。
そしたら、姉妹エンドだって夢じゃないかも…?
「…シェリア、なんか顔が怖いよ?」
フィオナが私を不安げな目で見ている。
待ってて、フィオナ。変な男に捕まる前にお姉ちゃんが捕まえてあげるからね!
「さてさて~、1分後に開始するよ。散った、散った~」
そうして、オリエンテーションはスタートしたのであった。
ーーー
みんなが散り散りに逃げ去り、そんなドタバタでフィオナを見失ってしまった。
「うーん。フィオナを捕まえて一緒に買い物デートとかしようと思ってたのに。」
私が考えることなんてそんな可愛らしいもので、どこぞの攻略対象キャラさんよりピュアなものである。
「ディスピア」
私はお得意の隠れ魔法を使った。
あまり無防備に不用意な行動を避けたい。
はてさて、フィオナはどこへ行ったんだろうか?
校庭
校舎
中庭
裏の森
うーん…
ふと思い浮かんだ4つの選択肢。
フィオナが行きそうな場所…。
あの子は自然が大好きだから裏の森の方へ行ったんじゃないだろうか?
それにあそこは隠れやすいし、逃げる場所にはうってつけだ。
私は森へ向かうことにした。
森へ向かう道すがらたくさんの生徒達が私に気付かず過ぎ去っていく。
どうやら、私の魔法は完璧なようだ。
…この前の時、変態教師にあっさりと魔法がばれてから、私の魔法が失敗していたのかと考えたが杞憂のようだ。
特に問題に巻き込まれることもなく裏の森まで向かうことができた。
この学園の敷地はとても広い。
学校、校舎、中庭、森。とりわけ森の中は一段と広く、あまり奥地に行くのは危険なため禁じられている。
私は森の入り口に着くと周りの様子を伺った。
どうやら、あまり人はいなさそうだ。
フィオナがいればいいのだが…。
彼女の光属性はとても珍しいので、独特の魔力痕跡がある。私はそれをたどることにした。
「サーチ・フィオナ」
ふおおおぉぉ
そんな音とともに青白い紐状の光が私の足元から浮かび、螺旋状にわたしの周りを回る。
しばらくすると、紐状の光は道先を案内するかのように空中を漂い始めた。
探す対象が近くにいない場合は螺旋状に回った後、消えてしまうのだが…。
どうやら、フィオナは近くにいるようだ。
私はスイスイと泳いでいく光を追いかけた。
そんなわたしを見ている人陰がいることも知らずに。
「…。」
ーーー
みつけた!
私は心の中でガッツポーズをした。
フィオナは小川のほとりで体育座りをして1人ポツネンといた。
これはチャンスだ。
いきなり現れて、捕まってくれというのも彼女に不審がられるだろうか。
私は頭の中でどうするか思考した。
よし、作戦はこうだ!
以下、私の痛い妄想、いや作戦である。
「フィオナ。つーかまえたー♪」
「きゃっ。シェリア、背後から抱きつくなんてびっくりするじゃない!」
「うふふ。でも、これでフィオナは私の言うことを1つ聞かなくちゃね。」
「ええっ、そんなぁ。」
「私が捕まえたのだもの。言うこと聞いてね?」
「うぅ…」
「私と休日、お買い物に行きましょう!」
「シェリア…! ええ、ぜひ!」
「その日は一日、フィオナは私のものよ?」
「シェリア…。大好きよ!」
うふふふふふふ!
よし、これだ。この作戦で行こう!
そしてあわよくば買い物デート中に疲れたなとか言って最後に人気のない公園で彼女に膝枕してもらうのだ。
前世のギャルゲを思い出す。私は膝枕イベントが大好きだったらしい。
「いざ、膝枕!」
私はフィオナの元へと一歩踏み出した。
と、思ったが一歩も前へと進めなかった。
私は突如、背後から誰かに抱きしめられ拘束されたのだ。
「つーかまえたー♪」
それ、私のセリフううう!
「き、キリト先生!?」
おのれ。また、こやつか。
何処まで私の邪魔をする気なのだ?
おっ、今の言葉悪役っぽい。じゃなくて!
「裏の森に行く君を見かけてね。このレクリエーション。ルイスの提案で教師も強制参加なんだ。」
そういえば、副会長そんなこと言ってたなあ。
「いろんな子に追いかけられるのも疲れちゃったし、適当に誰かを捕まえて終わらそうと思ってね。」
ニコニコーっと彼は言う。
いや、じゃあ他の人を捕まえればいいだろう。わざわざ私を捕まえに来なくても。
私は少しでも離れようとジタバタともがくが、逆に拘束を強くされてしまった。
…苦しい。
「そしたら、1人で変な寸劇をしてる君を見かけたわけだ。」
…どうやら、私は妄想を頭で抑えきれず口や態度で出していたらしい。
ぎゃああああ!恥ずかしい!
「じゃっ、シェリアちゃん。校庭に戻ろうか?」
「い、いやです。なんで変態教師に捕まらなきゃいけないんですか!」
ぬおー、フィオナちゃんの膝枕がそこまで来ているのに、逃すわけにはいかないのだ!
「誰が変態教師だ。君は俺に捕まったんだから、言うことを聞かなきゃダメだろう?」
いつもはニコニコーという感じだが、今はニヤニヤといった感じで私に詰め寄る。
わざわざ、私の妄想のセリフをかじっている。性格の悪いやつだ。
「性格悪いですね。」
「俺はみんなに優しい教師だよ?」
私たち2人が牽制し合っていると
「きゃああああああ!」
フィオナの叫び声が聞こえてきた。
「!」
私と変態教師は同時にフィオナの方を見る。
すると彼女は水棲モンスターの群れに囲まれていた。数十匹はいるだろうか。
「水棲モンスターか。下級のゼリー種…。まだ、学園に紛れ込んでたのがいたのか。」
キリトがぼそりと呟く。
これは、俺様会長のイベントだ!
会長が現れてフィオナを助けてくれるのだ。そうして仲が深まる。やはり、フィオナは俺様会長ルートに進んでいるようだ。
キリト先生はゼリーを倒すためだろう。魔法を使おうと呪文を唱え始めた。
いかん、恐らくここでキリト先生がモンスターを倒すとキリトルートにいってしまう。
キリトのルートはどう足掻いても私は死ぬし、唯一、私が死なないエンドはフィオナは監禁されてしまう。キリトルートに私たち2人の幸せは存在しない。キリトのフィオナへの思いを邪魔するようで申し訳ないが、ここは妨害させてもらう。
「えい。」
私は背後から抱きしめられていた体の向きを反転し、キリトの方へ向き直る。
そして、彼が唱えかけていた呪文を阻止するため自分の手で彼の口を塞いだ。
「ん!?」
予想外だったのだろう。キリトが呪文を中断され、それが私が原因だと知ると邪魔をするなと凍るような冷たい視線で私を見た。
こ、こえええええ
まあ、キリトからしたら危ない目に合っている生徒を助けようとしているわけだし、理にかなった行動をしている。
むしろ、私の行動が理解不能で間違っているだろう。
でも、こんな殺気のこもった目線で見られると恐ろしいわ!
「スノー・ブラスト!」
私たちがいる茂みとは逆方向から魔法をかける音がした。
会長だ。彼は水系統の魔法が得意なのだ。
ピキイイイイン
たちまち一斉に凍りつくゼリー達。
さすがスウォン会長。
「大丈夫か?フィオナ?」
スウォンは座り込んでいるフィオナの元へと駆けつけた。
…もう、大丈夫だろう。どうやら、無事にスウォンのルートへ行ったみたいだ。
ほっと胸をなでおろした時、指先にじわっと濡れた感触が伝わった。
「えっ?」
舐められた。と理解するには数秒かかった。
「ぎゃあっ……んぐ、んんーー!」
思わず悲鳴を上げかけたとき、キリトの手で口を塞がれる。
なななな、何すんじゃボケーーーーっ!!
悪態をついてやりたいところだが、口がふさがれているため言い返すこともできない。
「…君は、悪い子だね。スウォンが来たから良かったものの、来なかったらどうするつもりだったのかな?」
いや、来ること分かってたからなんですけども。流石に妹に危機が迫ってたら私だって手助けに入っていますって。
「んー、んー!」
そう言ってやりたいとこだが、口は塞がれてるし、言ったところで理解してもらえるとも思えない。少し前世の記憶があるんですー。なんて言っても頭がおかしいとしか思われないだろう。
「…スウォンとフィオナちゃんの邪魔をしちゃ悪いから、場所を変えようか。」
どうやら、あの二人はこちらに気づいていないようだ。二人の世界を気づき上げてるみたい。
流石にキリトも二人の邪魔をする気は無さそうだ。
よいしょっ…
そんな掛け声とともに私の体は宙に浮いた。キリトに持ち上げられたのだ。
…俗にいう、俵担ぎで。
「私は米か!?」
ツッコミを入れるが、彼は意に介さずスタスタと森を離れていく。
「ちょっ、ちょっと。この体制みぞおちが痛いんですが!」
「…。」
私の文句に一言も発さず、無言で歩いていくキリト先生。
怖い。怖すぎるようーーー。
なんだかんだで校舎付近まで来てしまう。他の生徒もまばらに見え始めた。
「あれって。キリト先生とシェリアさんよね?」
「教師に捕まるってついてないわね。シェリアさん。」
ひそひそとこちらを見て話す生徒の声が聞こえる。
やめてえぇぇ。
すでに校庭には生徒が集まり、きゃいきゃいと賑わっていた。
私とフィオナは2人でやや隅の方で始まりを待っていた。
「はいはーい!新入生の皆さん、学校生活には慣れましたかー?」
風魔法で声を遠く大きく飛ばしているのだろう。私たちは隅の方でよく見えないが人だかりの先から声が聞こえてきた。
「俺は生徒会副会長のルイス=ターマライト=ウイグル。新入生のみんな、よろしくね!」
…!
名前を聞いた途端、また彼の情報が頭の中に流れてきた。
彼は生徒会副会長。あの俺様会長スウォンの補佐をしている。スウォンは実はかなり真面目なので、ルイスの明るさと陽気さで丁度釣り合いが取れていると評判だ。
こちらから姿が見えないが、容姿はオレンジがかった金髪で、長さは肩につくかつかないくらいだ。目は綺麗なブルー。透き通るような海の色だ。特徴的なのは左目の下に泣きぼくろがあり、ややタレ目なところだ。
ノリが良く生徒にも慕われ、先生にも可愛がられている。
「さて、歓迎のレクリエーションだけど。生真面目な会長は普通に鬼ごっことか言い出すから、俺がちょっとアレンジを加えたよ!」
ちらっと背伸びして様子を伺うと、スウォン会長がほっとけ、とばかりに腕組みをしてそっぽを向いている。
確かに、会長はレクリエーションとか考えるの苦手そうだもんね。
「鬼ごっこはかわりないんだけど、追加ルールを加えました~!さてさてー、説明しまーす。」
彼曰く、
全員、鬼、そして逃げる役。
そして、捕まった人はその人の言う事を1つ聞く。
「と、まあこんな感じです。捕まえる方法は問わないよ。こうやって…。」
彼が説明する声が一瞬途切れる。
「テレポートとか使って捕まえてもオーケー!」
急に横斜め後ろ…つまり、フィオナの背後からルイスの声が聞こえた。
あろうことかルイスはテレポートでフィオナの背後に移動し、後ろから抱きついていた。
「きゃっ!」
フィオナは可愛らしく悲鳴をあげた。
「…君、かわいいね。俺、一目惚れしちゃったかもしれない。」
魔法で声を飛ばさず、フィオナの耳元でぼそりと彼はつぶやいた。小さな声だが、隣にいる私には十二分に聞こえる。
ぬおおおお
私の愛する妹に何をするー!
私の怒りをよそに周りはざわめき始める。
また、あの子だわ。
ほんと、迷惑ー!
フィオナはより一層嫌われたようだ。
これもヒロインの業なのだろうか。着々と逆ハーレムを築き上げているといえよう。
周囲の動揺などいざ知らず、ルイスはどこ吹く風だ。
「もちろん、俺もそこの会長も教師陣も全校生徒、参加してるから。これを機にお目当な人にグッと近づけるかもしれないよ~?」
ざわっ
この副会長は人の興味を引き、煽るのが得意みたいだ。
かくいう私も俄然やる気が出てきた。
フィオナを捕まえればあんなことやこんなこと…できちゃうかもしれないってことだよね。ふふふふふ…。
そしたら、姉妹エンドだって夢じゃないかも…?
「…シェリア、なんか顔が怖いよ?」
フィオナが私を不安げな目で見ている。
待ってて、フィオナ。変な男に捕まる前にお姉ちゃんが捕まえてあげるからね!
「さてさて~、1分後に開始するよ。散った、散った~」
そうして、オリエンテーションはスタートしたのであった。
ーーー
みんなが散り散りに逃げ去り、そんなドタバタでフィオナを見失ってしまった。
「うーん。フィオナを捕まえて一緒に買い物デートとかしようと思ってたのに。」
私が考えることなんてそんな可愛らしいもので、どこぞの攻略対象キャラさんよりピュアなものである。
「ディスピア」
私はお得意の隠れ魔法を使った。
あまり無防備に不用意な行動を避けたい。
はてさて、フィオナはどこへ行ったんだろうか?
校庭
校舎
中庭
裏の森
うーん…
ふと思い浮かんだ4つの選択肢。
フィオナが行きそうな場所…。
あの子は自然が大好きだから裏の森の方へ行ったんじゃないだろうか?
それにあそこは隠れやすいし、逃げる場所にはうってつけだ。
私は森へ向かうことにした。
森へ向かう道すがらたくさんの生徒達が私に気付かず過ぎ去っていく。
どうやら、私の魔法は完璧なようだ。
…この前の時、変態教師にあっさりと魔法がばれてから、私の魔法が失敗していたのかと考えたが杞憂のようだ。
特に問題に巻き込まれることもなく裏の森まで向かうことができた。
この学園の敷地はとても広い。
学校、校舎、中庭、森。とりわけ森の中は一段と広く、あまり奥地に行くのは危険なため禁じられている。
私は森の入り口に着くと周りの様子を伺った。
どうやら、あまり人はいなさそうだ。
フィオナがいればいいのだが…。
彼女の光属性はとても珍しいので、独特の魔力痕跡がある。私はそれをたどることにした。
「サーチ・フィオナ」
ふおおおぉぉ
そんな音とともに青白い紐状の光が私の足元から浮かび、螺旋状にわたしの周りを回る。
しばらくすると、紐状の光は道先を案内するかのように空中を漂い始めた。
探す対象が近くにいない場合は螺旋状に回った後、消えてしまうのだが…。
どうやら、フィオナは近くにいるようだ。
私はスイスイと泳いでいく光を追いかけた。
そんなわたしを見ている人陰がいることも知らずに。
「…。」
ーーー
みつけた!
私は心の中でガッツポーズをした。
フィオナは小川のほとりで体育座りをして1人ポツネンといた。
これはチャンスだ。
いきなり現れて、捕まってくれというのも彼女に不審がられるだろうか。
私は頭の中でどうするか思考した。
よし、作戦はこうだ!
以下、私の痛い妄想、いや作戦である。
「フィオナ。つーかまえたー♪」
「きゃっ。シェリア、背後から抱きつくなんてびっくりするじゃない!」
「うふふ。でも、これでフィオナは私の言うことを1つ聞かなくちゃね。」
「ええっ、そんなぁ。」
「私が捕まえたのだもの。言うこと聞いてね?」
「うぅ…」
「私と休日、お買い物に行きましょう!」
「シェリア…! ええ、ぜひ!」
「その日は一日、フィオナは私のものよ?」
「シェリア…。大好きよ!」
うふふふふふふ!
よし、これだ。この作戦で行こう!
そしてあわよくば買い物デート中に疲れたなとか言って最後に人気のない公園で彼女に膝枕してもらうのだ。
前世のギャルゲを思い出す。私は膝枕イベントが大好きだったらしい。
「いざ、膝枕!」
私はフィオナの元へと一歩踏み出した。
と、思ったが一歩も前へと進めなかった。
私は突如、背後から誰かに抱きしめられ拘束されたのだ。
「つーかまえたー♪」
それ、私のセリフううう!
「き、キリト先生!?」
おのれ。また、こやつか。
何処まで私の邪魔をする気なのだ?
おっ、今の言葉悪役っぽい。じゃなくて!
「裏の森に行く君を見かけてね。このレクリエーション。ルイスの提案で教師も強制参加なんだ。」
そういえば、副会長そんなこと言ってたなあ。
「いろんな子に追いかけられるのも疲れちゃったし、適当に誰かを捕まえて終わらそうと思ってね。」
ニコニコーっと彼は言う。
いや、じゃあ他の人を捕まえればいいだろう。わざわざ私を捕まえに来なくても。
私は少しでも離れようとジタバタともがくが、逆に拘束を強くされてしまった。
…苦しい。
「そしたら、1人で変な寸劇をしてる君を見かけたわけだ。」
…どうやら、私は妄想を頭で抑えきれず口や態度で出していたらしい。
ぎゃああああ!恥ずかしい!
「じゃっ、シェリアちゃん。校庭に戻ろうか?」
「い、いやです。なんで変態教師に捕まらなきゃいけないんですか!」
ぬおー、フィオナちゃんの膝枕がそこまで来ているのに、逃すわけにはいかないのだ!
「誰が変態教師だ。君は俺に捕まったんだから、言うことを聞かなきゃダメだろう?」
いつもはニコニコーという感じだが、今はニヤニヤといった感じで私に詰め寄る。
わざわざ、私の妄想のセリフをかじっている。性格の悪いやつだ。
「性格悪いですね。」
「俺はみんなに優しい教師だよ?」
私たち2人が牽制し合っていると
「きゃああああああ!」
フィオナの叫び声が聞こえてきた。
「!」
私と変態教師は同時にフィオナの方を見る。
すると彼女は水棲モンスターの群れに囲まれていた。数十匹はいるだろうか。
「水棲モンスターか。下級のゼリー種…。まだ、学園に紛れ込んでたのがいたのか。」
キリトがぼそりと呟く。
これは、俺様会長のイベントだ!
会長が現れてフィオナを助けてくれるのだ。そうして仲が深まる。やはり、フィオナは俺様会長ルートに進んでいるようだ。
キリト先生はゼリーを倒すためだろう。魔法を使おうと呪文を唱え始めた。
いかん、恐らくここでキリト先生がモンスターを倒すとキリトルートにいってしまう。
キリトのルートはどう足掻いても私は死ぬし、唯一、私が死なないエンドはフィオナは監禁されてしまう。キリトルートに私たち2人の幸せは存在しない。キリトのフィオナへの思いを邪魔するようで申し訳ないが、ここは妨害させてもらう。
「えい。」
私は背後から抱きしめられていた体の向きを反転し、キリトの方へ向き直る。
そして、彼が唱えかけていた呪文を阻止するため自分の手で彼の口を塞いだ。
「ん!?」
予想外だったのだろう。キリトが呪文を中断され、それが私が原因だと知ると邪魔をするなと凍るような冷たい視線で私を見た。
こ、こえええええ
まあ、キリトからしたら危ない目に合っている生徒を助けようとしているわけだし、理にかなった行動をしている。
むしろ、私の行動が理解不能で間違っているだろう。
でも、こんな殺気のこもった目線で見られると恐ろしいわ!
「スノー・ブラスト!」
私たちがいる茂みとは逆方向から魔法をかける音がした。
会長だ。彼は水系統の魔法が得意なのだ。
ピキイイイイン
たちまち一斉に凍りつくゼリー達。
さすがスウォン会長。
「大丈夫か?フィオナ?」
スウォンは座り込んでいるフィオナの元へと駆けつけた。
…もう、大丈夫だろう。どうやら、無事にスウォンのルートへ行ったみたいだ。
ほっと胸をなでおろした時、指先にじわっと濡れた感触が伝わった。
「えっ?」
舐められた。と理解するには数秒かかった。
「ぎゃあっ……んぐ、んんーー!」
思わず悲鳴を上げかけたとき、キリトの手で口を塞がれる。
なななな、何すんじゃボケーーーーっ!!
悪態をついてやりたいところだが、口がふさがれているため言い返すこともできない。
「…君は、悪い子だね。スウォンが来たから良かったものの、来なかったらどうするつもりだったのかな?」
いや、来ること分かってたからなんですけども。流石に妹に危機が迫ってたら私だって手助けに入っていますって。
「んー、んー!」
そう言ってやりたいとこだが、口は塞がれてるし、言ったところで理解してもらえるとも思えない。少し前世の記憶があるんですー。なんて言っても頭がおかしいとしか思われないだろう。
「…スウォンとフィオナちゃんの邪魔をしちゃ悪いから、場所を変えようか。」
どうやら、あの二人はこちらに気づいていないようだ。二人の世界を気づき上げてるみたい。
流石にキリトも二人の邪魔をする気は無さそうだ。
よいしょっ…
そんな掛け声とともに私の体は宙に浮いた。キリトに持ち上げられたのだ。
…俗にいう、俵担ぎで。
「私は米か!?」
ツッコミを入れるが、彼は意に介さずスタスタと森を離れていく。
「ちょっ、ちょっと。この体制みぞおちが痛いんですが!」
「…。」
私の文句に一言も発さず、無言で歩いていくキリト先生。
怖い。怖すぎるようーーー。
なんだかんだで校舎付近まで来てしまう。他の生徒もまばらに見え始めた。
「あれって。キリト先生とシェリアさんよね?」
「教師に捕まるってついてないわね。シェリアさん。」
ひそひそとこちらを見て話す生徒の声が聞こえる。
やめてえぇぇ。
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「小説家になろう」でも公開しています。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
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