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まぁ、そうは言っても向こうも連れてこいと指示されているので、代理で俺か、ウカノ兄ちゃんに来て欲しいと言われてしまう。
「じゃ、仕方ないから行くか」
と、ウカノ兄ちゃん当人が言い出した。
お城行くのはとくに何とも思ってないんだな。
女装がバレないようにしたいだけなんだろう。
予定が狂ってしまうがいいのだろうか。
なんて考えていたら、そのウカノ兄ちゃんに頼まれた。
「時間があったら、不動産屋に行ってこの条件に合う部屋相談してきてくれ」
メモを渡される。
うぇー、めんどくせぇ。
「まぁ、行けたら行く」
とりあえず、そう返しておいた。
そうしてウカノ兄ちゃんを見送ってから、リアさんに聞かれた。
「お兄さん、ここに住まないの?」
「みたいですねぇ。
多分一人暮らしをしてみたいんだと思います。
憧れてましたから」
「えー、でも掃除に洗濯、仕事しながらの家事は大変だよ」
「大丈夫ですよ。
その辺は、ずっと家でもやってたんで」
親父やじいちゃんからは、そんなのは女の仕事なんだからやるな、恥ずかしいと散々言われていたのに、やり通した。
今ならわかる。
母や姉妹達への味方をするという意味もあったんだろうけど、きっとウカノ兄ちゃんなりの反抗だったんだと思う。
やりたいことも夢も否定されて、ずっとずっと押さえつけられていたのを見てきたし、知っている。
それでも、ヘラヘラ笑って受け入れて、八つ当たりは盗賊達へぶつけてきた。
今までなら、それで我慢出来たはずのウカノ兄ちゃんが、もう本当に我慢の限界に来ている。
弟としては、兄ちゃんが自由になるのはいい事だと思う。
あんな家にいるよりは、絶対に良いと思う。
「そっかー」
リアさんは、それだけ言って厨房に戻った。
それから、俺はエリィさんと合流して今日の仕事にあたる。
本当は、この前見つけたダンジョンの探索をしたかったけれど冒険者ギルドから直々にとある開拓村周辺に出る賞金首だらけの盗賊退治を依頼されたので、そちらを優先させることにした。
開拓村へ行って話を聞き、アジトを見つけ出して奇襲をかけて壊滅させた。
そうして昼過ぎには王都へ戻ってくることが出来た。
冒険者ギルドに行って、今日の仕事分の金をエリィさんと一緒に受け取る。
そして、さぁ、遅めの昼食だ、となったのだが。
「あ、兄ちゃん」
どこの店にしようか。
そうエリィさんと、話している時に城から帰ってきたらしいウカノ兄ちゃんとばったり遭遇した。
「お、お仕事おつかれー。
不動産屋は行ってきてくれたか?」
と、何気なく言ってくるウカノ兄ちゃんだが、とても変な格好をしていた。
いや、ウカノ兄ちゃんが貴族なら普通に仕立てのいいスーツだな、と思うだけだ。
そう、基礎様が来ているような、高価そうな服を着込んでいたのだ。
お礼としてお城で貰ったのかな?
そう思って聞けば、違った。
「んー、なんか曲者?
侵入者? そういう招かれざるお客さん的なのを、つい反射的にヤッちゃったら返り血で汚れちゃってさ」
「はい?」
「はい?」
俺とエリィさんが、同じ反応を返した。
「そしたら、それを見てたお前の友達だって言う、エル、エル?
エルドラド殿下?? とかいう子が服とお風呂かしてくれたんだ」
惜しい、エルドレッド殿下だよ、兄ちゃん。
「とりあえず、綺麗になったのはいいけど俺の服没収されちゃって。
洗濯終わったら届けるからって言われてさ。
その侵入者騒ぎでお城の中も外もバタバタしてるしで、やることも無いからしばらく着替えてぼぅっとしてたんだけど、しばらくしたらとりあえず今日は帰ってくれって言われたから帰ってきた」
えー、マジか。
「お前ら、これから昼か?
兄ちゃんも腹減ったよ。疲れたし。サッパリはしてるけどさ。
そうだ! この際だし肉でも食いに行くか?」
ひと仕事終えたウカノ兄ちゃんは、そう提案してきた。
「じゃ、仕方ないから行くか」
と、ウカノ兄ちゃん当人が言い出した。
お城行くのはとくに何とも思ってないんだな。
女装がバレないようにしたいだけなんだろう。
予定が狂ってしまうがいいのだろうか。
なんて考えていたら、そのウカノ兄ちゃんに頼まれた。
「時間があったら、不動産屋に行ってこの条件に合う部屋相談してきてくれ」
メモを渡される。
うぇー、めんどくせぇ。
「まぁ、行けたら行く」
とりあえず、そう返しておいた。
そうしてウカノ兄ちゃんを見送ってから、リアさんに聞かれた。
「お兄さん、ここに住まないの?」
「みたいですねぇ。
多分一人暮らしをしてみたいんだと思います。
憧れてましたから」
「えー、でも掃除に洗濯、仕事しながらの家事は大変だよ」
「大丈夫ですよ。
その辺は、ずっと家でもやってたんで」
親父やじいちゃんからは、そんなのは女の仕事なんだからやるな、恥ずかしいと散々言われていたのに、やり通した。
今ならわかる。
母や姉妹達への味方をするという意味もあったんだろうけど、きっとウカノ兄ちゃんなりの反抗だったんだと思う。
やりたいことも夢も否定されて、ずっとずっと押さえつけられていたのを見てきたし、知っている。
それでも、ヘラヘラ笑って受け入れて、八つ当たりは盗賊達へぶつけてきた。
今までなら、それで我慢出来たはずのウカノ兄ちゃんが、もう本当に我慢の限界に来ている。
弟としては、兄ちゃんが自由になるのはいい事だと思う。
あんな家にいるよりは、絶対に良いと思う。
「そっかー」
リアさんは、それだけ言って厨房に戻った。
それから、俺はエリィさんと合流して今日の仕事にあたる。
本当は、この前見つけたダンジョンの探索をしたかったけれど冒険者ギルドから直々にとある開拓村周辺に出る賞金首だらけの盗賊退治を依頼されたので、そちらを優先させることにした。
開拓村へ行って話を聞き、アジトを見つけ出して奇襲をかけて壊滅させた。
そうして昼過ぎには王都へ戻ってくることが出来た。
冒険者ギルドに行って、今日の仕事分の金をエリィさんと一緒に受け取る。
そして、さぁ、遅めの昼食だ、となったのだが。
「あ、兄ちゃん」
どこの店にしようか。
そうエリィさんと、話している時に城から帰ってきたらしいウカノ兄ちゃんとばったり遭遇した。
「お、お仕事おつかれー。
不動産屋は行ってきてくれたか?」
と、何気なく言ってくるウカノ兄ちゃんだが、とても変な格好をしていた。
いや、ウカノ兄ちゃんが貴族なら普通に仕立てのいいスーツだな、と思うだけだ。
そう、基礎様が来ているような、高価そうな服を着込んでいたのだ。
お礼としてお城で貰ったのかな?
そう思って聞けば、違った。
「んー、なんか曲者?
侵入者? そういう招かれざるお客さん的なのを、つい反射的にヤッちゃったら返り血で汚れちゃってさ」
「はい?」
「はい?」
俺とエリィさんが、同じ反応を返した。
「そしたら、それを見てたお前の友達だって言う、エル、エル?
エルドラド殿下?? とかいう子が服とお風呂かしてくれたんだ」
惜しい、エルドレッド殿下だよ、兄ちゃん。
「とりあえず、綺麗になったのはいいけど俺の服没収されちゃって。
洗濯終わったら届けるからって言われてさ。
その侵入者騒ぎでお城の中も外もバタバタしてるしで、やることも無いからしばらく着替えてぼぅっとしてたんだけど、しばらくしたらとりあえず今日は帰ってくれって言われたから帰ってきた」
えー、マジか。
「お前ら、これから昼か?
兄ちゃんも腹減ったよ。疲れたし。サッパリはしてるけどさ。
そうだ! この際だし肉でも食いに行くか?」
ひと仕事終えたウカノ兄ちゃんは、そう提案してきた。
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