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 ウカノ兄ちゃんが指折り数えながら教えてくれた。

 「まず、感謝状だろ。
 んで、礼金。俺たちが納めた血税がこんな形で帰ってきたわけだ。
 あとは、そうそう、昨日の今日だから準備ができなかったらしいけど今度騎士の位だかを証明する剣が届くとか言ってた」

 それが、今回農民によるトラブルに対処したことにより、結果的にウカノ兄ちゃんが王族を助けたことへのお礼になるらしい。

 「へぇ、すごいじゃん」

 「なー、普通こういうことで貰えるのって感謝状だけなのにな。
 さすがに、それだけだと王族のメンツが潰れるのかもな。
 けち臭いって」

 ジュージューと目の前では、とてもおいしそうに肉が焼けていく。
 
 「肉ばかりじゃなくて野菜も食べろ」

 エリィさんがドサドサと野菜を投入する。
 
 「いやぁ、普段から野菜は飽きるほど食べてますんで、ここは肉を食べたいんですよ」

 ウカノ兄ちゃんの言葉に、エリィさんの表情に『そういやこいつら農民だった』と書かれる。
 そんな感じで焼けてきた肉を各々取りながら、会話が続く。
 ウカノ兄ちゃんが肉をモグモグごっくんとしたあと、言葉を続けた。
 
 「でもほら、金額が金額だから銀行の俺の口座に振り込んでもらうことになった。
 そうそう、あと他に欲しいものがあったらくれるっていわれた」

 俺は聞き返した。

 「へぇ、何頼んだの?」
 
 「洗濯機、最新式のやつ。
 それを二台頼んでみた。
 一つは俺用、もう一つは実家つーよりも村用。
 ほら、村で今使ってるのだいぶガタが来てるだろ?
 もう少しすると芋もそうだけど枝豆もできてくるしさ」

 さらりと言ったウカノ兄ちゃん。
 そのウカノ兄ちゃんに言葉を受けて、エリィさんがむせた。
 
 「せ、洗濯機って、最近ようやく王家で設置されはじめたばかりの魔法道具だろ!?
 とても高価で、私の実家ですらまだ導入できていないんだぞ!!?」

 言外に、頼むにしてももっと他にあっただろうと言っている。

 「というか、最新式とはどういう意味だ?」

 俺が説明する。

 「いや、ようするに試作機を使わせてもらってたんですよ。
 錬金術ギルドとのつながりで。
 それで使った感想なんかを提供していたんです。
 んで、完成したはいいけれど最初は高くてそれこそ貴族でもなかなか買い手がつかなかったらしいです。
 でも、試作機とはいえ俺たち百姓の評判はそこそこよかった。
 本来の使い方では無いんですけどね。
 その話を聞きつけた農業ギルドが、最初の洗濯機を買い上げて、精米機のとなりに設置するようになったんです。
 うちの村でも集会場に洗濯機は二台設置されました。
 一つは本来の服の洗濯用、もう一つは芋や枝豆等を洗う用として」

 「……は?」

 エリィさんが訳が分からない、という表情になった。
 
 「いや、ほら農作業とか害獣退治とかで汚れた服とか洗うのに重宝しましたよ」

 ウカノ兄ちゃんも言った。

 「そうそう、でもそれよりも何よりも、芋の泥落とすのにちょうど良かったから設置された部落だと十割中十割が芋洗いに使ってたって話です。
 あと、枝豆洗うのにもちょうど良かったんですよ」

 エリィさんが全然理解できないという顔になった。

 「えーと、確認させてくれ。
 農家だと芋や枝豆を洗濯機で洗うのか?」

 「はい。あ、もちろん水洗いですよ?
 泥落とすだけなんで、洗剤なんて使わないし。使ったら食べられなくなっちゃうんで」

 ウカノ兄ちゃんも俺の言葉に続ける。

 「とくに、里芋洗うのにほんと丁度いいんですよ。
 あーでも、大根やニンジン洗ってる人はみたことないなぁ」

 俺たちを見るエリィさんの目が、『王族でもようやく手を出せるような高価な道具をつかってなにやってんだ、こいつら』と言っていた。
 しかし農家の常識は世間の非常識なので、これは通常運転である。




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