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「ほら見ろ、クロッサの名前聞いた途端、シンの顔に蕁麻疹が出たじゃないか!!」
ウカノ兄ちゃんが叫ぶ。
クレイ兄ちゃんは、蕁麻疹が出た俺を見てケラケラ笑った。
「ほんと、お前苦手だよなぁクロッサ兄ちゃんのこと。
あとウカノ兄ちゃん、シンの蕁麻疹は顔だけじゃなくて全身に出てるよ」
クレイ兄ちゃんに続くように、エリィさんが訊いてくる。
「誰だ?」
俺は答えた。
「昔から俺の事、虐めてきた四番目の兄ちゃんです」
ここでクロッサ兄ちゃんの悪行が思い出されてしまって、死にたくなった。
俺とクロッサ兄ちゃんの思い出その一。
たぶん、いちばん古い記憶だ。
ウチを含めた兄弟姉妹が多い家は、上の兄、姉たちが下の子の面倒を見ることが殆どだ。
その日はクロッサ兄ちゃんが俺の面倒を見ていたらしい。
ニコニコと手招きされるがままクロッサ兄ちゃんの後を、たぶんヨチヨチとついて行ったのだろう。
「ほぅら、命綱なしのバンジーだぞー」
と、断崖絶壁から投げ落とされた。
俺とクロッサ兄ちゃんの思い出その二。
次に古い記憶だ。
たぶん近所の川でフィリップ兄ちゃんやクレイ兄ちゃんと水遊びをしていたのだと思う。
そこに縄を持ったクロッサ兄ちゃんがやって来て、俺を縄でぐるぐる巻きにして川へ投げ入れた。
「これでこの川のヌシ(そこそこデカいドラゴン)を釣り上げてやるー!!」
ということで、見事に餌になった。
まぁ、命懸けの遊びだったがなんとかこうして生き延びているので、微笑ましい兄弟のやり取り、そんな1ページに過ぎない。
俺とクロッサ兄ちゃんの思い出その三。
ここからは記憶はハッキリしている。
手伝いやらで小遣いを稼いで貯めていたのに、貯金箱からその金を盗まれた。
新品の道具を買い与えられたのに、クロッサ兄ちゃんが使ってたものと強引に交換させられた。
そして、すぐそれは壊れた。
物は壊されるか盗むし、親やウカノ兄ちゃん、フェイ兄ちゃん、カイ兄ちゃんにそのことを訴えて叱ってもらうと、逆ギレして木に縛られて一晩放置された。
人格否定は普通だし。
何かあれば俺に八つ当たりしてくるし。
俺だけじゃなくて、自分より下の兄弟にはキツく当たってきた。
そうそう、一番俺がいまだに許せずいるのは、やはりアニキに教えて貰って、今でもずっと信じている【創世邪神】のダンジョンや伝説を全否定されたことだ。
あの人は、自分以外が楽しんでいることが、何かに夢中になっていることがとにかく気に食わないタイプだった。
常に知識でマウントを取ろうとしてくるし、会話だって基本否定しかし無かった。
とにかく、一番親父と似ているのがクロッサ兄ちゃんだった。
生死不明の行方不明と聞いた時は、心の底からホッとしたものだ。
しかし、生きてたのか。
死んでてくれた方が良かった。
「とにかく、やることなすこと、昔から非常識だし。
俺が必死で貯めてた金は取るし。
人格否定は普通だし。
俺、あの人、大嫌いなんです」
まぁ、そのお陰で他者からの悪意、その耐性が身についたのは事実だが、感謝する気にはなれなかった。
「……お前が非常識って言うのはなかなか奇妙な感じだな」
ウカノ兄ちゃんが苦笑する。
「兄弟の中で一番のきかん坊なんですよ。
絶対勝てないって分かってるのに、俺やフェイにすら気に食わないと飛びかかってきましたもん。
負けず嫌いなんですよねぇ」
クレイ兄ちゃんが疲れた顔をして、ウカノ兄ちゃんへ言う。
「でも結局勝てずに、下の俺たちに当たってくるから。
俺もクロッサ兄ちゃんのことは、好きじゃなかったなぁ。
正直、どっかでくたばってくれてたら良かったのに」
俺はそんなクレイ兄ちゃんの言葉につづける。
「とにかく、兄弟の中で一番性格が悪いんですよ。
クロッサ兄ちゃんは」
エリィさんが顔を引きつらせる。
「どんだけ嫌われてるんだ。その兄は」
俺は力なく答えた。
「え、少なくとも俺やクレイ兄ちゃんが今言ったように、斃れとか、死んでてほしいと思う程度には嫌われてますよ」
兄弟だからって無条件に仲がいい、なんてことはないのだ。
エリィさんは、いたたまれなさそうに顔を背けた。
たぶん、俺や、話していてクレイ兄ちゃんもいろいろクロッサ兄ちゃんにされただろう嫌なことを思い出してきたのか、目が死んでいたからだろう。
ウカノ兄ちゃんが叫ぶ。
クレイ兄ちゃんは、蕁麻疹が出た俺を見てケラケラ笑った。
「ほんと、お前苦手だよなぁクロッサ兄ちゃんのこと。
あとウカノ兄ちゃん、シンの蕁麻疹は顔だけじゃなくて全身に出てるよ」
クレイ兄ちゃんに続くように、エリィさんが訊いてくる。
「誰だ?」
俺は答えた。
「昔から俺の事、虐めてきた四番目の兄ちゃんです」
ここでクロッサ兄ちゃんの悪行が思い出されてしまって、死にたくなった。
俺とクロッサ兄ちゃんの思い出その一。
たぶん、いちばん古い記憶だ。
ウチを含めた兄弟姉妹が多い家は、上の兄、姉たちが下の子の面倒を見ることが殆どだ。
その日はクロッサ兄ちゃんが俺の面倒を見ていたらしい。
ニコニコと手招きされるがままクロッサ兄ちゃんの後を、たぶんヨチヨチとついて行ったのだろう。
「ほぅら、命綱なしのバンジーだぞー」
と、断崖絶壁から投げ落とされた。
俺とクロッサ兄ちゃんの思い出その二。
次に古い記憶だ。
たぶん近所の川でフィリップ兄ちゃんやクレイ兄ちゃんと水遊びをしていたのだと思う。
そこに縄を持ったクロッサ兄ちゃんがやって来て、俺を縄でぐるぐる巻きにして川へ投げ入れた。
「これでこの川のヌシ(そこそこデカいドラゴン)を釣り上げてやるー!!」
ということで、見事に餌になった。
まぁ、命懸けの遊びだったがなんとかこうして生き延びているので、微笑ましい兄弟のやり取り、そんな1ページに過ぎない。
俺とクロッサ兄ちゃんの思い出その三。
ここからは記憶はハッキリしている。
手伝いやらで小遣いを稼いで貯めていたのに、貯金箱からその金を盗まれた。
新品の道具を買い与えられたのに、クロッサ兄ちゃんが使ってたものと強引に交換させられた。
そして、すぐそれは壊れた。
物は壊されるか盗むし、親やウカノ兄ちゃん、フェイ兄ちゃん、カイ兄ちゃんにそのことを訴えて叱ってもらうと、逆ギレして木に縛られて一晩放置された。
人格否定は普通だし。
何かあれば俺に八つ当たりしてくるし。
俺だけじゃなくて、自分より下の兄弟にはキツく当たってきた。
そうそう、一番俺がいまだに許せずいるのは、やはりアニキに教えて貰って、今でもずっと信じている【創世邪神】のダンジョンや伝説を全否定されたことだ。
あの人は、自分以外が楽しんでいることが、何かに夢中になっていることがとにかく気に食わないタイプだった。
常に知識でマウントを取ろうとしてくるし、会話だって基本否定しかし無かった。
とにかく、一番親父と似ているのがクロッサ兄ちゃんだった。
生死不明の行方不明と聞いた時は、心の底からホッとしたものだ。
しかし、生きてたのか。
死んでてくれた方が良かった。
「とにかく、やることなすこと、昔から非常識だし。
俺が必死で貯めてた金は取るし。
人格否定は普通だし。
俺、あの人、大嫌いなんです」
まぁ、そのお陰で他者からの悪意、その耐性が身についたのは事実だが、感謝する気にはなれなかった。
「……お前が非常識って言うのはなかなか奇妙な感じだな」
ウカノ兄ちゃんが苦笑する。
「兄弟の中で一番のきかん坊なんですよ。
絶対勝てないって分かってるのに、俺やフェイにすら気に食わないと飛びかかってきましたもん。
負けず嫌いなんですよねぇ」
クレイ兄ちゃんが疲れた顔をして、ウカノ兄ちゃんへ言う。
「でも結局勝てずに、下の俺たちに当たってくるから。
俺もクロッサ兄ちゃんのことは、好きじゃなかったなぁ。
正直、どっかでくたばってくれてたら良かったのに」
俺はそんなクレイ兄ちゃんの言葉につづける。
「とにかく、兄弟の中で一番性格が悪いんですよ。
クロッサ兄ちゃんは」
エリィさんが顔を引きつらせる。
「どんだけ嫌われてるんだ。その兄は」
俺は力なく答えた。
「え、少なくとも俺やクレイ兄ちゃんが今言ったように、斃れとか、死んでてほしいと思う程度には嫌われてますよ」
兄弟だからって無条件に仲がいい、なんてことはないのだ。
エリィさんは、いたたまれなさそうに顔を背けた。
たぶん、俺や、話していてクレイ兄ちゃんもいろいろクロッサ兄ちゃんにされただろう嫌なことを思い出してきたのか、目が死んでいたからだろう。
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