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 さて、俺たちはそんなこんなでダンジョンの中を進んでいく。
 もちろんモンスターとも遭遇した。
 その遭遇戦だが、はしゃいだ兄ちゃんが鎌を振るって片っ端から片付けていった。
 素材回収も忘れない。
 まぁ、ほとんどは倒しまくるウカノ兄ちゃんの取り分になっていた。
 このダンジョン、全部で五階層あり、その階層ごとにやたら強いモンスターが配置されていた。
 守護者ガーディアンというやつである。
 倒されても一定時間が過ぎればまた復活する系の、守護者ガーディアンである。
 ダンジョンの敵あるあるの一つだ。
 全部で五階層あるので、五体倒さなければならなかったのだが。
 はしゃいだウカノ兄ちゃんが、そのうちの四体をサクッと片付けてしまった。
 曰く、

 「落ちのびてきた魔族の畑泥棒の方が、骨がある」

 との事だった。
 分かりみしかないのが、なんとも言えない。
 まぁ、そんな感じで最後の階層にたどり着いたのだが。
 予想通りというか、今は蔦の栄養になっているだろう銀髪の魔族と昨日一緒にいた茶髪が、最後の階層の守護者ガーディアンを倒して、その先にある扉を開けようと苦戦していたのだ。
 俺たちの気配に気づき、振り返る。
 どうやら俺の顔を覚えていたのか、

 「昨日の冒険者か。いや、二人は違う顔だな」

 なんて言ってくる。
 あ、一応俺たち兄弟の顔の見分けはついてるのか。
 
 「しかし、ここまで来るとは。
 ザックは何をしてるんだ」

 おそらくザックというのが、今頃蔦の栄養になっているだろう銀髪魔族の名前なのだろう。
 うーん、これチャンス、だよなぁ。
 油断しているように見えたのだ。
 いや、ウカノ兄ちゃんのことをとくに警戒しているように見えたのだ。
 こちらに意識はほとんど向いていない。
 よし、ここまでウカノ兄ちゃんのおかげで、サクサク来れたんだし。
 時間は金なり、っと。
 俺はちょっと前にミナクさんから聞いていた、ミナクさんのお父さんが趣味で開発したという術式を使ってみた。
 秒で茶髪魔族がクリスタルに拘束された。
 驚愕の表情で、茶髪魔族がクリスタルの中で固まっている。

 「おおお!
 すっげぇ!!
 なにそれ、なにそれ?!」

 ウカノ兄ちゃんが子供のように興奮して聞いてくる。
 俺は簡単に、術式のことを説明した。

 「マジか!
 商業ギルド行けば買えるんだな!
 よし、帰ったら買いに行こう!」

 そんなウカノ兄ちゃんと、俺を見て、それから、秒でクリスタルの餌食になった魔族を見てエリィさんが、

 「はあ」

 なにやら盛大なため息を吐き出した。
 疲れてるのかなぁ。
 でも、今日はウカノ兄ちゃんのおかげで、そんな消耗してないはずだけど。
 ま、いいや。
 俺は扉を鑑定した。
 その鑑定結果を二人に伝える。

 「一定の魔力を流し込まないと開かないようになってる」

 エリィさんが聞き返してくる。

 「どれくらいの量の魔力が必要なんだ?」

 「六十万くらいですかねぇ」

 「ろくじゅっ?!!」

 俺の報告に、エリィさんが無理だこれ、という表情になる。
 まぁ、そうだろうなぁ。
 クリスタル漬けになってる人の魔力が、魔族でも多いとされてる五千だし。
 ちなみに人としての上限は、千とされている。
 魔力の容量を上げるには、赤ん坊の頃からの特訓が必要だ。
 しかし、たいがいそういう特訓は虐待と見られかねないのでせいぜい七、八歳くらいからになる。
 そうしてやっと上限に届くかどうかとされている。
 逆に言えば、赤ん坊の頃から魔力欠乏症になるくらい激しく魔力を消費し続ける訓練をしていればその上限が飛躍的にあがるのだ。
 さて、俺の報告を聞いたもう一人、ウカノ兄ちゃんは、淡々と指示を出してくる。

 「よし、じゃシンはクレイに連絡とれ。
 俺はフィリップに連絡取る」

 「了解」

 エリィさんが顔を引き攣らせた。

 「おい、念の為に聞くがなんでその二人を呼ぼうとしてる?」

 「なんでって、そりゃ俺とウカノ兄ちゃんの魔力量だとこの扉開けるのに足りないからですよ」

 「……そう言えば今更だが、お前達の魔力ってどれくらいあるんだ?」

 なんでそんなこと聞きたいんだろ?

 「え、俺が三十五万くらいで、ウカノ兄ちゃんが五万。
 クレイ兄ちゃんとフィリップ兄ちゃんが同じ十五万くらいですね」

 エリィさんが叫んだ。

 「それか! 前の冒険者ギルドで能力詐称とか言われてたのは!!」

 俺はパタパタ手を振って、答える。

 「えー、これくらいで詐称とか言われると二つ下の妹なんて百万超えてんですよ。
 とんだ詐欺師になっちゃうじゃないですか」

 何故か頭を叩かれた。
 
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