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とりあえず、長男のことについては考えないようにしよう。
クロッサはそう決めて、オーウェン達に与えた任務、その成果報告について精査することにした。
これは、今後このギセル帝国のために必要なことだからだ。
実家にいたころ、盲目的に伝説を信じていたシンのことを馬鹿にしていたが、家を出てこの大陸を周り、そしてここ魔族領にたどり着いてから、クロッサはその考えを改めざるを得なくなった。
そう、散々馬鹿にしていた弟が信じていた邪神、それもこの世界を作ったとされる創世邪神は実在したと確証を得てしまったのだ。
それだけではない、その邪神にまつわるダンジョンの存在も確認した。
ほとんどが、そのダンジョンを攻略すると邪神の力、その一部が与えられ、ステータスの能力値が爆上がりするらしいのだ。
実際それをクロッサは目の当たりにした。
かつて、冒険者だったころ。
当時の仲間達が、そのダンジョンを攻略して力を手に入れ、そして力に飲まれ破滅してしまった。
それだけではない、創世邪神のダンジョンがいくつ存在するのか。
明確な数字はわからない。
しかし、その中に十二将と呼ばれる邪神の眷属が封じられているという情報があるのだ。
攻略するだけで、まず手に入らないような能力値を手に入れることができるのだ。
これが本当だったということは、眷属が封じられているという話も信ぴょう性が出てくる。
なぜ封じられているのか、ということはわかっていない。
何故なら魔族領でもこれは都市伝説の域を出ない話とされている。
だから詳しい調査も行えない上、鑑定をしてもそれが創世邪神のダンジョンなのかはわからないのだ。
攻略してみて初めてわかる仕様になっている。
いや、もしかしたら、このダンジョンの詳細を知っているだろう者たちが存在しているかもしれない。
それが、クロッサの弟であるシンに創世邪神のことを吹き込んだ、【アニキ】達である。
おそらくこの世界でどんな魔族よりも、創世邪神のことを知っている者たちだ。
一度接触しようと、クロッサも情報を集めてみたが無駄に終わった。
さて、そもそも何故クロッサがわざわざ創世邪神の力などを求めているのか、だが。
一言で言ってしまえば、国のためだった。
国というよりも、彼が協力し王にしてしまった者のためだ。
もともと魔族領は戦争の絶えない場所だ。
この魔族領を統一しようという動きは帝国のみならず、あちこちにある。
近年、それが特に顕著なのだ。
他の国より先に力を手に入れる。
もしくは、その力が他国に渡らないようにするために、クロッサはオーウェン達を使い、かつての故郷に向かわせていた。
それだけではない。
集めていた情報の中に、どうも故郷の国と同盟を結ぼうとしている国があると知り、これは王に直接情報を流しておいた。
最近これに関しては、王の方でなにやら動いていたようだが、管轄外なのでクロッサはよく知らなかった。
また報告も来ていない。
しかし、あの長男の伝言が気になった。
まるでクロッサが何かしらの黒幕のようにとらえられているようだ。
「長男のことは、まぁいいや。
とりあえず、お前らが調べてたダンジョンは、創世邪神のダンジョンかもしれないってことでいいんだな?」
クロッサの確認に、オーウェンは頷いた。
「可能性は高いかと思われます。
ダンジョン内のトラップなどは他のダンジョンと大差ありませんでした。
問題は最奥でした。
扉を開けるのに六十万近い魔力を必要としました」
その辺のことも先ほどの報告に含まれていた。
重複するが大切なことである。
普通だったら開けられることのない扉。
それだけ守りを強固にしていた部屋の中にはいったいなにがあったのだろうか?
「で、それを開けたのが俺の身内だった、と」
「えぇ、そうです」
「なるほど。
それで、俺の身内たちは何を手に入れたんだ?」
「それは、」
オーウェンは言い淀んでしまう。
正直に報告してもいいものなのだろうか?
いや、どうしたって叱責はまぬがれないのだ。
オーウェンは続けた。
「見届ける前に、その、閣下のお兄様から伝言を預かって、無理やり転移させられたもので」
気づいたら魔族領の端っこで、瀕死のザックとともに放置されていたのだ。
だから、彼らが何を手に入れたのかはオーウェンは知らず終いだった。
「なるほど」
以外にも、クロッサの反応は淡白だった。
「わかった。
お前らはしばらくここで休んでいけ。
今後のことはおって知らせる」
それだけ言うとクロッサは客間を出て行った。
出てすぐ、イルルに彼らの世話をするよう伝える。
それから自室に行き、ベッドに寝転がる。
ダラダラ、ゴロゴロとベッドの上で動いたあと、クロッサは呟いた。
「よし。シンを攫ってこよう」
情報を吐かせて、協力させるのが近道だという考えにいたったのだ。
現時点で、クロッサの知り合いで創世邪神のダンジョンや、何よりも創世邪神について情報を持っているのはシンしかいないのだ。
長男のウカノにはそもそも勝てる気がしないし、クレイやフィリップは多少シンから邪神について聞いていたとしても、シンより詳しくなさそうだ。
それと、クロッサが確実に言うことを聞かせることができるのがシンだからだ。
ちょっと殴って泣かせれば一発で言うことを聞くだろう。
少なくとも実家ではそうだった。
クロッサはそう決めて、オーウェン達に与えた任務、その成果報告について精査することにした。
これは、今後このギセル帝国のために必要なことだからだ。
実家にいたころ、盲目的に伝説を信じていたシンのことを馬鹿にしていたが、家を出てこの大陸を周り、そしてここ魔族領にたどり着いてから、クロッサはその考えを改めざるを得なくなった。
そう、散々馬鹿にしていた弟が信じていた邪神、それもこの世界を作ったとされる創世邪神は実在したと確証を得てしまったのだ。
それだけではない、その邪神にまつわるダンジョンの存在も確認した。
ほとんどが、そのダンジョンを攻略すると邪神の力、その一部が与えられ、ステータスの能力値が爆上がりするらしいのだ。
実際それをクロッサは目の当たりにした。
かつて、冒険者だったころ。
当時の仲間達が、そのダンジョンを攻略して力を手に入れ、そして力に飲まれ破滅してしまった。
それだけではない、創世邪神のダンジョンがいくつ存在するのか。
明確な数字はわからない。
しかし、その中に十二将と呼ばれる邪神の眷属が封じられているという情報があるのだ。
攻略するだけで、まず手に入らないような能力値を手に入れることができるのだ。
これが本当だったということは、眷属が封じられているという話も信ぴょう性が出てくる。
なぜ封じられているのか、ということはわかっていない。
何故なら魔族領でもこれは都市伝説の域を出ない話とされている。
だから詳しい調査も行えない上、鑑定をしてもそれが創世邪神のダンジョンなのかはわからないのだ。
攻略してみて初めてわかる仕様になっている。
いや、もしかしたら、このダンジョンの詳細を知っているだろう者たちが存在しているかもしれない。
それが、クロッサの弟であるシンに創世邪神のことを吹き込んだ、【アニキ】達である。
おそらくこの世界でどんな魔族よりも、創世邪神のことを知っている者たちだ。
一度接触しようと、クロッサも情報を集めてみたが無駄に終わった。
さて、そもそも何故クロッサがわざわざ創世邪神の力などを求めているのか、だが。
一言で言ってしまえば、国のためだった。
国というよりも、彼が協力し王にしてしまった者のためだ。
もともと魔族領は戦争の絶えない場所だ。
この魔族領を統一しようという動きは帝国のみならず、あちこちにある。
近年、それが特に顕著なのだ。
他の国より先に力を手に入れる。
もしくは、その力が他国に渡らないようにするために、クロッサはオーウェン達を使い、かつての故郷に向かわせていた。
それだけではない。
集めていた情報の中に、どうも故郷の国と同盟を結ぼうとしている国があると知り、これは王に直接情報を流しておいた。
最近これに関しては、王の方でなにやら動いていたようだが、管轄外なのでクロッサはよく知らなかった。
また報告も来ていない。
しかし、あの長男の伝言が気になった。
まるでクロッサが何かしらの黒幕のようにとらえられているようだ。
「長男のことは、まぁいいや。
とりあえず、お前らが調べてたダンジョンは、創世邪神のダンジョンかもしれないってことでいいんだな?」
クロッサの確認に、オーウェンは頷いた。
「可能性は高いかと思われます。
ダンジョン内のトラップなどは他のダンジョンと大差ありませんでした。
問題は最奥でした。
扉を開けるのに六十万近い魔力を必要としました」
その辺のことも先ほどの報告に含まれていた。
重複するが大切なことである。
普通だったら開けられることのない扉。
それだけ守りを強固にしていた部屋の中にはいったいなにがあったのだろうか?
「で、それを開けたのが俺の身内だった、と」
「えぇ、そうです」
「なるほど。
それで、俺の身内たちは何を手に入れたんだ?」
「それは、」
オーウェンは言い淀んでしまう。
正直に報告してもいいものなのだろうか?
いや、どうしたって叱責はまぬがれないのだ。
オーウェンは続けた。
「見届ける前に、その、閣下のお兄様から伝言を預かって、無理やり転移させられたもので」
気づいたら魔族領の端っこで、瀕死のザックとともに放置されていたのだ。
だから、彼らが何を手に入れたのかはオーウェンは知らず終いだった。
「なるほど」
以外にも、クロッサの反応は淡白だった。
「わかった。
お前らはしばらくここで休んでいけ。
今後のことはおって知らせる」
それだけ言うとクロッサは客間を出て行った。
出てすぐ、イルルに彼らの世話をするよう伝える。
それから自室に行き、ベッドに寝転がる。
ダラダラ、ゴロゴロとベッドの上で動いたあと、クロッサは呟いた。
「よし。シンを攫ってこよう」
情報を吐かせて、協力させるのが近道だという考えにいたったのだ。
現時点で、クロッサの知り合いで創世邪神のダンジョンや、何よりも創世邪神について情報を持っているのはシンしかいないのだ。
長男のウカノにはそもそも勝てる気がしないし、クレイやフィリップは多少シンから邪神について聞いていたとしても、シンより詳しくなさそうだ。
それと、クロッサが確実に言うことを聞かせることができるのがシンだからだ。
ちょっと殴って泣かせれば一発で言うことを聞くだろう。
少なくとも実家ではそうだった。
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