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 酒が入ったから、というわけでは無いがその場の全員が聞きたかったことを、ウカノ兄ちゃんがハイラさんへ質問した。

 「邪神の眷属ってのはわかるが、そもそも十二将って何する人達なん?」

 ビールをあおって、ハイラさんが答える。
 
 「端的にいえば主の手足となりお仕えする存在、ですかねぇ。
 あ、お世話係といえばわかりやすいですね。
 私は主の身の回りのお世話をするのが与えられた仕事でした。そういう風に作られました。
 炊事洗濯、繕いもの、掃除、なんなら帳簿つけなんかもしてました」

 邪神でも帳簿って必要なのか。
 何でつけてたんだろ?
 ウカノ兄ちゃんが関心する。

 「へぇ」

 フィリップ兄ちゃんが冷静に呟く。

 「うちの母さんと同じだな」

 あー、たしかに。
 うちの親父は面倒な事務仕事、全部母さんに押し付けてるもんな。
 そんなフィリップ兄ちゃんの言葉に、ハイラさんもだが、エリィさんも首を傾げている。

 「農家も帳簿をつけるのか?」

 エリィさんに聞かれたので、俺は答えた。

 「そりゃそうですよ。
 個人営業主ですから、野菜や米の売上だけじゃなくて肥料とか細々とした支出を記録して国に提出してます。
 貴族の領地経営や、会社経営と一緒ですよ」

 クレイ兄ちゃんがそれに続く。

 「ケースバイケースですけどねぇ。
 うちは親父が税理士に頼むの嫌がってるからってのがあります。
 頼む家は頼んでますよ。
 大変ですもん」

 「?なんで嫌がるんだ?」

 エリィさんが不思議がる。

 「金に汚いんですよ。うちの親父。
 税理士さんに頼むのもお金かかりますからねぇ。
 なるべくタダで人を使おうとするんです」

 俺が答えたのを皮切りに、兄ちゃんたちが愚痴を零しはじめる。

 「あと仕事の段取りも悪いし」

 「そうそう、変に手出してきて逆に邪魔なんだよな。
 それを言うと逆ギレするし」

 「クレイとフィリップ、シンは家出たからしらないだろうけどな。
 俺が家出するちょっと前に、親父、爺さんと喧嘩して玄関壊すわ、作業小屋壊すわ、耕運機爺さんに投げつけるわ、八つ当たりで畑泥の魔族の首と手足引きちぎって粉砕機に入れて川に撒こうとしたり、大変だったんだぞ」

 フィリップ兄ちゃんが冷静に突っ込む。

 「え、それだとかなり飛び散るでしょ」

 「そ、だから、せめて冷凍してからやれって言ったよ。
 それなら飛び散る心配無いし」
 
 エリィさんが顔を青くして手元の肉を見つめている。
 あー、ご飯中にする話題じゃなかったな。
 クレイ兄ちゃんが、聞き返す。

 「え、マジで撒いたの? 粉砕機使って?」

 「まさか。さすがにそれは色々まずいから、止めたよ。
 でもイライラがおさまらなくてさ、スイカ狙ってきたドラゴンで八つ当たりしてた」

 ウカノ兄ちゃんがそう答える。
 ちなみに八つ当たりされたドラゴンは、その日の夜に美味しく頂かれたようだ。
 その話を聞いて、エリィさんがなんかホッとした顔になる。

 「そのコーウンキとやらを投げつけられたお爺さんはどうなったんですか?」

 ハイラさんが質問した。
 ウカノ兄ちゃんが答える。

 「あー、さすがに嫌気がさしたのか、おばさん、えっと親父のお姉さんが嫁に行った家に家出したんです。
 でもそこでも一悶着あって。親父がわざわざそこ行って、よそ様の家で爺さんのこと怒鳴り散らすわ、もう本当大変でした。やめてほしいですよ」

 「いえ、そうではなく。お怪我とか」

 俺と兄ちゃん達が顔を見合わせる。

 「爺さんって、怪我するの?」

 「どうだろ?」
 
 「生前のばあちゃんに浮気がバレて八つ裂きにされて入院したことあるとは聞いた」

 「え、俺は医者に酒止められてるのに、医者の許可が出たって嘘ついて酒飲んで八つ裂きにされたって聞いたぞ」

 俺たち兄弟の言葉に、エリィさんが冷静に呟いた。

 「なんで八つ裂きにされて生きてるんだ、お前の祖父は」
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