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7章 偶像崇拝

真贋一致

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 ブルースフィアに入ると待ち構えたようにメッセージが飛んでくる。それはブランド女のものであった。内容は「聖女の雫を手に入れたダンジョン最深部で待つ」というものであった。

 聖女の雫を手に入れたダンジョン。

 ブランド女と罵り合いながらクリアしたダンジョンであった。

 何の意味があってそこで待つのか知らない。だが今の俺にはそこへ向かう以外の選択肢はなかった。

 当時は二人で罵り合い、瀕死間際になりながら進んだダンジョンであった。だが今は派生武器を解放しレベルも上がった今の俺にはぬるかった。派生武器である刀で立ちふさがるロボットたちを一刀のもとに切り伏せていく。敵の銃撃でさえ、大したダメージにならない。

 なんの障害もなくダンジョンを進んでいき、最深部に辿り着く。

 ブランド女は最深部の中心に佇んでいた。聖女の雫を手に入れられる密集して咲く花を踏みつぶして座っていた。まるで自分が聖女よりも偉いかのような尊大さを演出しているように見えた。

「待ってた」

 ブランド女は凛と張り詰めた声でそう言った。

「急いだつもりだったんだけどな」

「数年間待った気がした」

 今は冗談の応酬も罵り合いによるノーガード戦法もする気はない。

「どうしてシオミンが告知することを知っていたんだ?」

 ブランド女はひどくつまらなそうな顔をする。

「もう少しお喋りしようよ」

「悪いな。今はそういう気分じゃない」

「ふーん、そんなに大事なの?」

「ああ、シオミンは――汐見柚子は命の恩人だからな」

 ブランド女のつまらなそうな顔に少し色が差した。

「……ねえ、どうしてここに呼んだかわかる?」

「俺らが一緒に遊んだ場所だからか」

「うん、君と遊べた初めての場所だから」

 少し意味が変わったような気がした。

 ブランド女は俺に微笑む。

「さて、汐見柚子が告知するのがわかった理由が知りたいのだったね」

 ブランド女が三つ指を立てる。

「三つ理由があるの。一つ、私は汐見柚子のことを誰よりも理解してる。二つ、私は君のことをずうっと昔から知っている。三つ、もう汐見柚子が活動する理由がなくなったから。ああ、最後のは趣旨からずれたかな。なら心痛めたっていうのはちょうどいい言い訳にできると踏んだから、でいいよ」

 ありえない推理が頭によぎる。

 そんなはずがないという感情の反面、そうであることが自然だと理性が告げてくる。

 ブランド女は優しい笑みを向けてくる。

「私が汐見柚子。ファン第一号との約束を果たすために活動してきた歌手志望だったものだよ」
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