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しおりを挟む初夏とはいえ、まだ肌寒い海風が吹く。
例のいかがわしいスイムパンツの上にパーカーを羽織って、蓮は撮影現場へ現れた。
「よろしく、篠原くん」
「綺麗に撮るからね!」
「張り切って行こう!」
スタッフに励まされ、蓮は少しだけ顔を上げた。
すると、ラフな服装の男たちの中に、一人だけスーツで身を固めた男がいる。
違和感を覚えていると、五木が紹介してくれた。
「篠原くん。この方、うちの大口スポンサーで、加賀 巴(かが ともえ)さんだ」
「加賀さん、って。あの」
『いい子だ。期待してるよ』
五木のスマホに、即反応してくれた人だ。
長めのジェントルマンヘアに、スクエアフレームのサングラスを掛けている。
鼻も口もしっかりとした、無骨な印象だ。
体格も良く、周囲のスタッフより頭一つ分背が高い。
「加賀だ。よろしく」
だが、サングラスを取った眼差しは、優しかった。
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