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あなたは、国英によく似ておられる、と尾崎は微笑んだ。
その眼差しに、かすかに光が宿る。
巴は、そこを突いた。
「祖父の名に免じて、役を貫き通してはくださいませんか?」
「彼はもう、この世にはいない。私より、ずいぶん早く死んじまうなんて、友達がいのない奴ですよ」
寂しげに笑う尾崎は、どんどん弱弱しくなっているように見える。
天下の名優・尾崎 義郎を、こんな形で失うなんて、あってはならないと巴は感じた。
「実は、祖父の遺言に奇妙なものがありました」
「遺言に?」
「棺には、一枚の写真を入れて欲しい、と」
それは、若き日の尾崎と国英が、仲良く肩を並べて笑っている写真だった。
「祖父が尾崎さんと、そこまで懇意にさせていただいていたとは、知りませんでした」
当時まだ幼かった巴は、国英が有名人とたまたま出会って、撮らせてもらったものだ、考えていたのだ。
「国英が、私の写真を……」
「祖父は、あなたを。尾崎 義郎を、推していた。心から」
そして私は、篠原 蓮を推しています。
巴は、深々と頭を下げた。
「どうか、あの新人に。篠原 蓮に、力を貸してやってください」
お願いします。
下げた頭をそのまま和室の畳に押し当て、巴は土下座した。
その眼差しに、かすかに光が宿る。
巴は、そこを突いた。
「祖父の名に免じて、役を貫き通してはくださいませんか?」
「彼はもう、この世にはいない。私より、ずいぶん早く死んじまうなんて、友達がいのない奴ですよ」
寂しげに笑う尾崎は、どんどん弱弱しくなっているように見える。
天下の名優・尾崎 義郎を、こんな形で失うなんて、あってはならないと巴は感じた。
「実は、祖父の遺言に奇妙なものがありました」
「遺言に?」
「棺には、一枚の写真を入れて欲しい、と」
それは、若き日の尾崎と国英が、仲良く肩を並べて笑っている写真だった。
「祖父が尾崎さんと、そこまで懇意にさせていただいていたとは、知りませんでした」
当時まだ幼かった巴は、国英が有名人とたまたま出会って、撮らせてもらったものだ、考えていたのだ。
「国英が、私の写真を……」
「祖父は、あなたを。尾崎 義郎を、推していた。心から」
そして私は、篠原 蓮を推しています。
巴は、深々と頭を下げた。
「どうか、あの新人に。篠原 蓮に、力を貸してやってください」
お願いします。
下げた頭をそのまま和室の畳に押し当て、巴は土下座した。
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