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しおりを挟む「実は、この目前に迫った危機を、回避する方法がある」
「えっ?」
「麻衣くんは今、妊娠している。そういうことに、でっちあげるんだ」
「つまり、嘘をつくんですか?」
そうだ、と哲郎は顔を上げた。
「検査結果のデータは、俺が改ざんする。陽性反応が出た、ということにする」
とにかく今日を何とかしのいで、後日本当に赤ちゃんができれば、良し。
できなければ……。
「残念ながら流産した、と報告するんだ。そうすれば、猶予ができる」
どうだ? と哲郎は表情で響也に訊いた。
我ながら、巧い考えだ。
これなら、響也も納得してくれるはず……。
だがしかし。
「ありがとう、哲郎。しかし、その名案は気持ちだけ、いただいておくよ」
「響也?」
私も、それはいい考えだと思う。
響也は落ち着いた口調で、そう言った。
「だが嘘をつけば、その嘘を守るために、新しい嘘が生まれる。それに……」
「それに?」
「麻衣に、嘘で辛い思いをさせたくないんだ」
あっ、と哲郎は手で口を覆った。
確かに、この嘘で一番傷つくのは、麻衣だ。
お腹に子どもはいないのに、妊娠しているふりをする。
これは、当人が最も辛いことだった。
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