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1話 思わぬ事態
しおりを挟む「志乃くんとのデートも、もう7回目か」
季節は深まり、晩秋を迎えた。
志乃と初めて会った頃は、まだ残暑も厳しかったというのに。
ほぼ10日に一度は予約を入れ続け、すっかり常連になってしまった、章だ。
「大丈夫かな。しつこい男だ、とか思われてないかな」
もう馴染みになった、公園の真ん中に立つ時計塔。
ベンチに掛けて、章は志乃を待っていた。
「珍しいな。志乃くんの方が遅いなんて」
しかも、定刻を過ぎている。
章が心配になってきたころ、志乃の姿が見えた。
片手を上げ、こちらに歩いてくる、志乃。
しかし、その様子はおかしかった。
やけにゆっくりと、しかも、片足をぎこちなく浮かせている。
「ごめんね、遅くなっちゃって」
「そんなことより、足をどうかした?」
「ちょっと、転んじゃった」
志乃は笑顔を作ってはいるが、明らかに痛そうだ。
「すぐに、病院へ行こう」
「え!? いいよ、大丈夫。ほら、ね?」
志乃は浮かせた片足を、地面に少し強く落として見せたが、顔を歪めてうずくまってしまった。
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