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1話 志乃の告白
しおりを挟むうっすらと意識が覚めていき、志乃は目を開けた。
体は、上質なベッドに支えられ、温かな羽毛布団に包まれている。
ただ、けがをした左足だけが冷たく、疼く患部が癒されていた。
「あ、起こしちゃったかな? ごめん」
「章さん。まさか、ずっと……?」
枕を使って、心臓の位置より高く上げられた志乃の左足を、章が氷嚢で冷やしてくれている。
「ずっと、と言っても。ほんの30分くらいだよ」
しかし、志乃が見たベッドサイドの時計は、もう何時間も進んでいる。
『冷却時間は20~30分程度。1~2時間の間隔をあけて行う。皮膚に直接当てて、凍傷を起こさないように注意しなさい』
医師の言葉だ。
志乃は、それを思い出していた。
(じゃあ、章さんは。30分間ずっと、僕を冷やしてくれてたんだ)
しかもこれを、2~3日の間、日中に可能な範囲で行うようにと言われている。
「いけない。僕、早くよくならなきゃ。このままじゃ、章さんが過労死しちゃう!」
「大丈夫だよ。焦りは禁物だ、って、お医者さんも言ってただろう?」
中度の捻挫で靭帯が部分的に切れた場合は、完全に復活するまで、5~6週間ほどかかる。
靭帯の修復には、思ったより時間がかかるものなのだ。
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