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1話 レンタル恋人を辞めるには
しおりを挟む「うーん……」
リビングのソファで、スマホ片手に唸る、志乃。
章は、そんな彼に背後から両腕を伸ばして、軽く抱擁した。
「どうしたの? 何か、悩んでるの?」
「うん……」
湿った返事の、志乃だ。
章は回り込んで志乃の隣に来ると、彼に寄り添いソファに掛けた。
「私で良ければ、相談に乗るよ?」
「ありがとう。実は、ね」
志乃は、事務所が一度、顔を見せに来るように要求してきた、と打ち明けた。
「足を治療してる間は、休養中、ってことにしてくれてたんだけど」
「うん」
それに関しては、医師が快く診断書をくれたので、問題は無かった。
章も、知っている。
「だけど。ケガはもう治ったんだから、ちゃんとご利用者様とデートを始めなさい、って」
「職場復帰、か」
志乃がレンタル恋人を続けることには、章は反対だった。
たとえ仕事と割り切っても、彼が自分以外の人間とデートをすると考えると、胸がかきむしられる。
志乃もそれは解ってくれて、退職する、とうなずいてくれたのだ。
だのに、なぜ。
「僕の契約は、三年間だ、って。それまでは、辞められないんだ、って」
「そんな」
僕どうしよう、と下を向いてしまう志乃だ。
章は、そんな彼の肩を抱くと、顔をあげさせた。
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