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しおりを挟む300万円に追加しての金額は、すぐに計算してメールで知らせる。
そんな小茂田の言葉に、章は考えた。
(おそらく、大きな額になるだろうな)
しかし、そんな大金をキャッシュで用意して、ここまで持って来い、とは。
なにやら、怪しい臭いがする。
「解りました。メールの確認後、現金を用意します」
素直に応じた章だったが、その後にこちらからも条件を出した。
「ただし、場所はここではなく、外で。そうですね、ホテル・アスカのロビーにしましょう」
「……いいでしょう」
章が事務所ではなく、外での取引を提案したのには、わけがあった。
(敵の懐真っただ中で。しかも、密室。危険すぎる)
どんな罠が用意されるか、解らない。
章は、慎重になっていた。
一方、そんな章に、小茂田は二度目の舌打ちをしていた。
(こいつ。若いくせに、頭が回りやがる!)
章の想像通り、小茂田は罠を張るつもりでいたのだ。
二度と逆らう気など起こさないよう、背後の組織を利用して脅す。
現金も、巻き上げる。
志乃はこれまで通り、スタッフとして働かせる。
組の若い者を数名借りて面談すれば、話は早いと目論んでいた。
しかし、外で。
しかも一流ホテルのロビーでとなると、第三者の目にさらされる。
あまり露骨に、乱暴な手を打つことができない。
表向きは柔和な笑顔の、だが心の内では不愉快極まりない表情の小茂田に見送られ、章と志乃は事務所を後にした。
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