15 / 20
第15話 デイジー、チャラ男にドキドキする
しおりを挟む
ルーファスが帰ったあと、クロに「あんなガキンチョにドキドキしてんなよ」とデイジーは言われた。
デイジーはたしかにそのとおりだと思いつつも「だって、可愛い子が生意気なこと言ってんだもん。最高じゃん」と言い返していた。
「ばーか」
クロはデイジーの肩から降りて貯蔵庫のほうにいってしまった。
「クロ、どこいくの?」
「呑むんだよ。お子様はご飯食べて、お風呂入って、ハミガキしてから寝な!」
細かい注文をつけてしっぽをふりふり行ってしまった。
「はーい」
デイジーは素直に返事した。
デイジーの家の湖面には、二つの月が映っていた。
今日はめずらしくどちらも満月であった。
湖の前でクロはワインを吞んでいた。
このまえデイジーに買わせた逸品だった。
ぎー、ぎー
ワイバーンのアレキサンダーのイビキが夜の静けさに響く。
まったく、ずいぶんうるさくなってしまったものだ、とクロは思う。
単純なうるささであれば、デイジー対軍のような過去何度もあったシチュエーションの方がうるさいだろう。
しかし、最近のうるささは格別だった。
人間関係が増えるということは、そういう格別なうるささが増えるということなのだろう。
過去、クロはデイジーをただ静かに見ていた。
しかし、最近ではルーファスに見つかってしまった。
うるささのなかにすこしだが入ってしまった。
困ったものだ、と思う。
そんなことを考えていたら、いつの間にか満月が二つとも頂点に達していた。
「あっ、やべ…」
クロの影がむくむくと大きくなっていった―。
「キャー!」
いつの間にかクロの背後にはデイジーが立っていた。
「お、お前どうして、もう寝たんじゃ」
「あ、アンタがいないから探しに来たのよ。いつも一緒に寝てるじゃない!そ、それなのに…!それなのに、なんで大きくなってってるのよ!しかも、人間!」
クロは猫から大人の人間の姿に変わっていった。
「い、いや、これはだな…」
「やだ!服着てよ!前隠して!」
クロは猫から人間にいきなりなったから、当然全裸だった。
「やだ!止まって!それ以上大きくならないで!」
「む、無理だ。オレには止められん…!」クロは苦しそうに言った。
クロの変化がとうとう止まった。
クロは立派な体躯の美青年に変わっていた。
やや長めの黒髪の下にはたれ目気味な大きな目、品の良い高さの鼻、愛らしさまで感じさせる口にはキラリと八重歯が光り、猫らしいワイルドさが残っている。
「ああ…かわいいクロが…死んじゃった…」
デイジーは茫然とつぶやいた。
「勝手に殺すな!ここにおるわ!」
「アンタなんかクロじゃない!うっ…うぅ、うわ~ん!」
デイジーは泣いてしまった。マジ泣きだった。
「お、おい、なにも泣くことないじゃないか…。泣き止んでくれよ…」
湖の前で全裸の男がオロオロし、その前で女の子が泣いていた。
完全に事案だったが、見ているのはワイバーンのアレキサンダーだけだった。
アレキサンダーは「またデイジーとクロがへんなことしてる…」と思ってすやすやと眠り続けた。
クロは二つの月が満月になる日、頂点にのぼった月光を浴びると人間になってしまうことを話した。
「いや、だから、クロだって!」
「やだ、信じないことにした」
家のなかである。
泣いているデイジーをどうにか伴って、クロは家へと入った。
全裸の男が泣いている女の子を伴ってだれもいない家に入った。
やはり事案であるが、ここはマルグリット家の私有地であり、いわば無法地帯であった。
「なんでだよ!ちゃんと服だって来たし、こっち見てくれよ!」
クロは家の奥から引っ張り出してきた年代物の礼服を着ていた。
サイズが合わないからか、胸がはだけている。その胸には普段おでこについている青色の宝玉がネックレスになって輝いている。
「やだ!なんか見たくない!」
「なんでだよ…」
クロはしょぼんとした。
月明りでわからなかったが、人間となったクロの肌は褐色であった。
髪色も完全な黒ではなく、どことなく銀色がかっている。
デイジーは思った。
なんか…、なんか…、このクロ、チャラい…!
目の前にいる男がクロだということは認めていた。なんといっても変化するところを自身の目で見ているのだ。認めるしかない。
しかし、信じたくなかった。
だって…、だって…。
デイジーはチラリとクロを横目で見た。
クロの胸ははだけ、褐色の肌がのぞいている。筋肉質で引き締まっており、ふしぎと甘い香りが漂ってくるような気さえする。
つい、目が吸い寄せられてしまう。
…やばい、わたし初めて男の人をカッコいいって思ってるのかも…。
それは長いデイジーの人生のなかで初めての経験だった。
そしてショックだった。
わ、わたしの好みってこんなチャラい男だったの…!?
デイジーはこれを信じないことにしたのである。
「なあ~、デイジ~」
クロがいつもの調子で肩に体重をのっけてくる。
だが、今のサイズだとデイジーをバックハグしていることになる。
「ちょっ…!」
「な~、いつものオレの匂いだろ~?」
クロはデイジーに頬ずりした。
「ひっ!?」
「おぼろっ!?」
デイジーはつい反射的にテツザンコウを決めていた。
「あ」
クロは壁にぶつかり、目を回して気絶してしまった。
翌日。
「あの~?」ルーファスがおそるおそる聞く。「お二人、どうかしたんですか?」
デイジーの肩にクロはのっていず、しかも絶対に目を合わせようとしなかった。
異口同音に「別に!」と不機嫌に言ったのだった。
クロはもういつもどおりの猫らしき姿にもどっていた。
デイジーはたしかにそのとおりだと思いつつも「だって、可愛い子が生意気なこと言ってんだもん。最高じゃん」と言い返していた。
「ばーか」
クロはデイジーの肩から降りて貯蔵庫のほうにいってしまった。
「クロ、どこいくの?」
「呑むんだよ。お子様はご飯食べて、お風呂入って、ハミガキしてから寝な!」
細かい注文をつけてしっぽをふりふり行ってしまった。
「はーい」
デイジーは素直に返事した。
デイジーの家の湖面には、二つの月が映っていた。
今日はめずらしくどちらも満月であった。
湖の前でクロはワインを吞んでいた。
このまえデイジーに買わせた逸品だった。
ぎー、ぎー
ワイバーンのアレキサンダーのイビキが夜の静けさに響く。
まったく、ずいぶんうるさくなってしまったものだ、とクロは思う。
単純なうるささであれば、デイジー対軍のような過去何度もあったシチュエーションの方がうるさいだろう。
しかし、最近のうるささは格別だった。
人間関係が増えるということは、そういう格別なうるささが増えるということなのだろう。
過去、クロはデイジーをただ静かに見ていた。
しかし、最近ではルーファスに見つかってしまった。
うるささのなかにすこしだが入ってしまった。
困ったものだ、と思う。
そんなことを考えていたら、いつの間にか満月が二つとも頂点に達していた。
「あっ、やべ…」
クロの影がむくむくと大きくなっていった―。
「キャー!」
いつの間にかクロの背後にはデイジーが立っていた。
「お、お前どうして、もう寝たんじゃ」
「あ、アンタがいないから探しに来たのよ。いつも一緒に寝てるじゃない!そ、それなのに…!それなのに、なんで大きくなってってるのよ!しかも、人間!」
クロは猫から大人の人間の姿に変わっていった。
「い、いや、これはだな…」
「やだ!服着てよ!前隠して!」
クロは猫から人間にいきなりなったから、当然全裸だった。
「やだ!止まって!それ以上大きくならないで!」
「む、無理だ。オレには止められん…!」クロは苦しそうに言った。
クロの変化がとうとう止まった。
クロは立派な体躯の美青年に変わっていた。
やや長めの黒髪の下にはたれ目気味な大きな目、品の良い高さの鼻、愛らしさまで感じさせる口にはキラリと八重歯が光り、猫らしいワイルドさが残っている。
「ああ…かわいいクロが…死んじゃった…」
デイジーは茫然とつぶやいた。
「勝手に殺すな!ここにおるわ!」
「アンタなんかクロじゃない!うっ…うぅ、うわ~ん!」
デイジーは泣いてしまった。マジ泣きだった。
「お、おい、なにも泣くことないじゃないか…。泣き止んでくれよ…」
湖の前で全裸の男がオロオロし、その前で女の子が泣いていた。
完全に事案だったが、見ているのはワイバーンのアレキサンダーだけだった。
アレキサンダーは「またデイジーとクロがへんなことしてる…」と思ってすやすやと眠り続けた。
クロは二つの月が満月になる日、頂点にのぼった月光を浴びると人間になってしまうことを話した。
「いや、だから、クロだって!」
「やだ、信じないことにした」
家のなかである。
泣いているデイジーをどうにか伴って、クロは家へと入った。
全裸の男が泣いている女の子を伴ってだれもいない家に入った。
やはり事案であるが、ここはマルグリット家の私有地であり、いわば無法地帯であった。
「なんでだよ!ちゃんと服だって来たし、こっち見てくれよ!」
クロは家の奥から引っ張り出してきた年代物の礼服を着ていた。
サイズが合わないからか、胸がはだけている。その胸には普段おでこについている青色の宝玉がネックレスになって輝いている。
「やだ!なんか見たくない!」
「なんでだよ…」
クロはしょぼんとした。
月明りでわからなかったが、人間となったクロの肌は褐色であった。
髪色も完全な黒ではなく、どことなく銀色がかっている。
デイジーは思った。
なんか…、なんか…、このクロ、チャラい…!
目の前にいる男がクロだということは認めていた。なんといっても変化するところを自身の目で見ているのだ。認めるしかない。
しかし、信じたくなかった。
だって…、だって…。
デイジーはチラリとクロを横目で見た。
クロの胸ははだけ、褐色の肌がのぞいている。筋肉質で引き締まっており、ふしぎと甘い香りが漂ってくるような気さえする。
つい、目が吸い寄せられてしまう。
…やばい、わたし初めて男の人をカッコいいって思ってるのかも…。
それは長いデイジーの人生のなかで初めての経験だった。
そしてショックだった。
わ、わたしの好みってこんなチャラい男だったの…!?
デイジーはこれを信じないことにしたのである。
「なあ~、デイジ~」
クロがいつもの調子で肩に体重をのっけてくる。
だが、今のサイズだとデイジーをバックハグしていることになる。
「ちょっ…!」
「な~、いつものオレの匂いだろ~?」
クロはデイジーに頬ずりした。
「ひっ!?」
「おぼろっ!?」
デイジーはつい反射的にテツザンコウを決めていた。
「あ」
クロは壁にぶつかり、目を回して気絶してしまった。
翌日。
「あの~?」ルーファスがおそるおそる聞く。「お二人、どうかしたんですか?」
デイジーの肩にクロはのっていず、しかも絶対に目を合わせようとしなかった。
異口同音に「別に!」と不機嫌に言ったのだった。
クロはもういつもどおりの猫らしき姿にもどっていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」
公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。
忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。
「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」
冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。
彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。
一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。
これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
「魔法を使わない魔術師を切り捨てた国は、取り返しのつかない後悔をする
藤原遊
ファンタジー
魔法を使わない魔術師は、役に立たない。
そう判断した王国は、彼女を「不要」と切り捨てた。
派手な魔法も、奇跡も起こさない。
彼女がしていたのは、魔力の流れを整え、結界を維持し、
魔法事故が起きないよう“何も起こらない状態”を保つことだけだった。
代わりはいくらでもいる。
そう思われていた仕事は、彼女がいなくなった途端に破綻する。
魔法は暴走し、結界は歪み、
国は自分たちが何に守られていたのかを知る。
これは、
魔法を使わなかった魔術師が、
最後まで何もせずに証明した話。
※主人公は一切振り返りません。
役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く
腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」
――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。
癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。
居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。
しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。
小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。
1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました
竹桜
ファンタジー
誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。
その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。
男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。
自らの憧れを叶える為に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる