13 / 32
四章
知らないままでいてくれたら
しおりを挟むとある昼下がり。
昼食を終えたノーチェとエリオットは二人で屋敷の厨房にいた。
エリオットに出す前に密かにクッキーを作る練習をしようと思っていたのに、何故かエリオットも付いてくるから一緒に来てしまった。
「あの、エリオット様。そこで待たれても今日はまだ食べさせてあげられませんよ。多分失敗するんで」
「ノーチェが作ったものなら失敗しても食べるよ」
端に置いてあった椅子を持ってきてそれに座ると、調理台の向こう側でエリオットがにこにこと笑う。
「ダメですよ。今日のティータイム用のお菓子はメアリーがちゃんと用意してくれますから」
「なんで?僕はノーチェが作ったクッキーが食べたい」
いかにも純粋そうな瞳がぱちりと瞬いてノーチェを見つめる。
そんな顔をしてもダメですよ、と言うはずが思わず言葉に詰まって「うぐ、」と奇妙な音が漏れた。
(ずるいだろ、それは)
結局折れたのはノーチェだった。
常温に戻したバターをボウルに入れてやわらかくなるまで混ぜて、そこに砂糖や卵、クッキー特有のサクッとした食感を生むための粉を入れ、へらで切るようにして混ぜていく。
これが中々力業で、もったりと重たい生地の全体を混ぜようとするとそのうち腕が疲れてくる。
料理とは意外と簡単なように見えてこうやって力がいる場面も多いのだろう。それを考えると、朝昼晩の食事に加えてティータイムのお菓子まで作っているメアリーは素直に凄いと思う。さすがに全てを一人で行なっているわけではなく、ハンナも仕込みの手伝いなどはしているが。
自分には到底真似できないな、と混ぜ合わせた生地にメインのチョコレートチップを落としながらぼんやりと考える。
生地を一つずつ丸める段階になると、大人しくノーチェの手元を観察していたエリオットが僕も手伝っていい?と声を掛けてきた。
危険が生じるような作業ではないし大丈夫だろうと判断して、いいですよとノーチェは頷く。
「懐かしいな。昔ね、母さんとよく一緒にこうしてクッキーを作ったんだ」
「そうなんですか?」
「そう。って言っても、あの頃も僕が手伝っていたのはこうして生地を丸めるところだけなんだけどね」
銀色のトレーの上に丸めた生地を並べながらエリオットが苦笑する。
きっとエリオットの母親は、今日のノーチェのように危険が少なく病弱なエリオットが疲れずにできる工程だけを任せたのだろう。
愛されていたのだな、と思う。
エリオットはずっと一人だったわけではなく、誰かの唯一として確かに愛されていた。その事実があるというだけで、何故か自分が救われたような気持ちになる。
「だからエリオット様はチョコレートチップのクッキーがお好きなんですね」
「知ってたの?」
「はい。じゃなきゃわざわざ作らないですよ、俺料理とかしたことないですし」
「僕、君にチョコチップのクッキーが好きだって言ったことあったかな?」
ありますよ、と答えそうになる。
でもそれを聞いたのはノワであってノーチェではない。
「見ればわかります、少し嬉しそうな顔をしますから」
思い出して、代わりにそう答えた。嘘じゃない。
あの頃のエリオットは出されたものをいらないと拒否することが多かったが、そのクッキーだけはたまに食べた。今でも出せば口に運ぶ前に少し嬉しそうに笑う。
「…そんなことに気付いてくれるくらい、ノーチェは僕のことを見てるんだ?」
隣に立つエリオットがノーチェの顔を覗き込んで少し意地悪に笑う。
普段は優しく微笑むばかりのエリオットがそんな顔をして見せるのは自分だけだと知っているから、慣れることを知らない心臓が大袈裟に跳ねた。
浅はかな期待と、ほんの少しの優越感。
「いけませんか」
「ううん全く。そうやって君の瞳が僕を見てると安心する」
「え…?」
ふっ、と。
合わさった視線が緩む瞬間を見た。
「例えば、僕が今日死んだとしても誰もそれに気付かないかもしれない。時々そんな不安に襲われる事があるんだよ。僕はいつでもここにいて、だけどどこにもいないみたいだった。いっそ透明人間だったら無駄な期待もしなくていいのにって、馬鹿げたことを考えたりもした」
エリオットはいつもやわらかい微笑みを携えて、どれだけ苦しくても大丈夫としか言わない。
そんな人間が今、普段なら隠してしまうであろう弱さをノーチェに向けて吐き出していた。
「今は違うよ、いつだって君が僕を見ていてくれるからね」
そう言ったエリオットが、本当に嬉しそうに微笑むから。
ぎゅっと、知らないうちに力が入ってしまった喉が引き攣るように痛んだ。
「そんなの、当たり前ですよ」
当たり前だから、ノーチェはそれを惜しみなく態度に表して躊躇いもなく言葉にしてきた。
幼い子どもでもわかるように、何度も。
エリオットはその度に困ったように笑うか、あるいは少し不愉快そうに小さく眉を寄せるばかりでノーチェが差し出した好意を信じず、逃げるように目線を逸らして頑なに手を伸ばそうとはしなかった。
それが、今。
正しく愛されてきた子どもが、親の愛を無償のものだと知っているように、エリオットはノーチェから向けられる態度や言葉を当然のものとして口にした。
見返りは?といつか皮肉るように尋ねた人間が。
自分が他人から愛される存在なのだと、理解して甘えること。
出会った頃のエリオットにはなかったものだ。
そうしてきっと、母親と二人で暮らしていた幼いエリオットが知っていたこと。
少しはそれを思い出させてやれたのかもしれないと、喜びよりも何故か安堵が上回って目の奥がジンと熱くなるのをノーチェは必死で堪えた。
いつもそうだ。エリオットといると嬉しくても悲しくても、それが涙になって落ちようとする。
馬鹿みたいで、だけどそんな揺らぎさえどうしようもなく特別だった。
丸めた生地は一定時間冷やす必要がある。
空いた時間で花に水をやってきます、と言えばエリオットも一緒に行くと言うので散歩も兼ねて二人で庭へ出た。
今日は天気がいいな、と考えながら手にしたジョウロの先から陽光を反射してきらきらと落ちる水の粒を見ていると視線を感じた。
振り返ると予想通り、海の底を映したような濃い青色がノーチェを見つめていた。
いつもまるい瞳は何故か眩しいものを見るように細められている。
どうしたのかとノーチェが声をかけるよりも先にエリオットが口を開いた。
「綺麗だね、ノーチェ。天使様はきっと君のような姿をしているんだろうな」
どこか嬉しそうな声が、そう言って。
花が咲くようにふわりとわらう。
「…っ、」
悪気などどこにもなく、きっと褒め言葉でしかないはずのそれが形を変えて胸に突き刺さるのは、隠した秘密のせいだった。
素直に喜べたなら、どんなによかっただろう。
エリオットがノーチェを綺麗だと言うのはこれで2回目だ。
この見た目のことを言っているのならそれはそうだろうなと心の中で自嘲する。
人間を惑わせ籠絡する為の悪魔の見目は息を呑むほど美しい。瞬き一つするだけで、唇から吐息を一つ溢すだけでいとも簡単に心を奪う。そういうふうにできている。完璧に配色されたその色彩が失われても、ノーチェの美しさは損なわれない。
ばかだなぁ、とノーチェは思う。
天使だなんて、本当はノーチェはそんなものとは一番遠いところにいるのに。
なのにエリオットは待ち焦がれたはずの天使がきっと自分のような姿をしていると言う。
そんなことはない。
いつかエリオットが本物の天使を見た時にその答えがわかるだろう。
騙すためのものではなく純粋に美しいそれを目にすれば、きっと。
それを想像したら苦しくなって、この場をやり過ごすのに相応しい言葉も見つからないから、ただ静かに笑うことしかできなかった。
なにかを言えばそこからほつれていきそうで、これ以上取り繕うことができなくなりそうで。
知らずのうちに握りしめていた手の平に爪が食い込む。
また一つ、嘘を重ねたような気がした。
*
オーブンから取り出したクッキーは前回よりもよくできていた。
色は濃いが焦げてはいないし形もまあまあ悪くない。というかノーチェが作ったものは相変わらずひしゃげていたがエリオットが作ったものは綺麗に丸くなっていた。どうして同じ作業をしたのにこうなるのだろうか。
うーん、とクッキーを手に唸るノーチェを見て隣のエリオットがふふっと笑う。
「なんですか?」
「いや、ノーチェって結構不器用なんだ」
「…だから練習中なんですよ」
「ははっ、ごめんって。ねえ、食べていいでしょう?これ」
「いいですけど、エリオット様が作った綺麗な方を食べてくださいよ」
「どうして?僕が作ったのはノーチェにあげるから、ノーチェの作ったものは僕に頂戴」
にこりと笑ったエリオットは並べられたクッキーを数枚ずつ皿に分けて、形の綺麗なものだけを乗せた皿をノーチェの前に置いた。
対して、満足そうなエリオットの皿には歪な形のクッキーが盛られている。なんて見栄えが悪いのだろう。
「味は変わらないよ。いや、ノーチェが作ったクッキーの方がきっと美味しいだろうな」
だから僕はこっちね。
そんなはずないだろ、と思う間にそう言った指先がひしゃげたクッキーを一枚摘んで口の中へと放り込む。
大人しく従順なだけの生き物だと思っていたが、距離が縮まるとエリオットには案外強引な部分があるとわかる。
ついでに人のことを言えないくらいにはほぼ口説き文句のような言葉をさらりと言ってのけるのだからタチが悪い。
悪魔が打算的に選ぶような言葉もエリオットにとってはきっと本心でしかないのだから。
「うん。すっごく美味しいよ、ノーチェ」
甘やかすような、とびきりやさしい声がそう告げた。
エリオットが微笑む度に視界に星が落ちてくるような気になるのは一体どんな魔法だろうか。
浅く吸い込んだ息が喉の奥に詰まって苦しい。
「…それは、よかったです」
「ノーチェも食べてよ、ほら」
口元に差し出されたのはエリオットが作ったクッキーだ。
甘い匂いがして、もうなんでもいいか、と半ば諦めの感情で口を開ける。
「……っほんとだ、おいしいです。すごく」
ザクザクとした食感とチョコチップの甘さが口の中に広がる。
前に作ったものよりも遥かに美味しく感じるのは形が整っているからだろうか。
考えて、先程のエリオットの言葉が思い出された。
「なるほど」
口の端が自然とゆるむ。
「エリオット様が作ったものだから、こんなにおいしいんですね」
そんな馬鹿みたいな理屈があるかと思うのに、それがやけに腑に落ちた。
その手で作られたものは一際美味しく感じられるし、その声に名前を呼ばれればこの身の全てを賭けてもいいと思える。ふとした時に香るエリオットの匂いに幸福を感じて、触れる温もりに安堵を覚えて。そうして、エリオットが笑えばきらきらと視界いっぱいに星が落ちる。
ノーチェの世界はエリオットで出来ていた。
目の前にいるこの人間が自分にとっての全てだ。
真似をして同じ言葉を使っても、そこに含まれる重さはこんなにも違う。
エリオットのそれだってきっと本心ではあるけれど、ノーチェを特別に思うものではないだろう。
そんな当たり前の事実に、今さら心臓が悲鳴をあげるみたいに軋んだ。
「…ノーチェ」
何食わぬ顔でその痛みをやり過ごす。
その瞬間に、ささやくような声が名前を呼んだ。
言葉を返す代わりにエリオットを見つめたまま首を傾げると、よく整えられた美しい指先が伸びてくる。
どこへ向かうのかと思えば顔の横を通り過ぎて、躊躇うような仕草でノーチェの髪に触れた。
面白みもない、ありふれた茶色の髪。
大して長くもないそれに指を通して、こぼれ落ちたらまた最初から。
やさしい手つきが、ノワを撫でる時のものによく似ていた。
ああ、懐かしいな、そういえば代わりになると言ったんだった。
ならこれは、代替品への甘やかしか。
そんな感傷に浸りかけた時。
「…嫌だな、大切なものはいつかなくなっちゃうのに」
ほんの一瞬、泣き出しそうに顔を歪めて、上書きするみたいに淡い微笑みを浮かべる。
けれどもその青色は今にも崩れてしまいそうな様子でゆらゆらと揺らめいていた。
「エリオット様…?」
どうしてそんなに寂しそうな顔をするんだ。
何かおかしなことを言っただろうか。
「ねえノーチェ」
「はい」
「ずっとそばにいてって言ったら、君は頷いてくれるのかな」
するりと髪を通り過ぎた指先が、最小限の力で頰に触れた。
望んだ返事を乞うように、あるいは目の前にいるノーチェの存在を確かめるように。
力を入れてしまえば壊れてしまうとでもいうようなその触れ方に、少しだけ自虐的な気持ちで笑う。
(そんなに大事に扱わなくてもいいよ)
「…確かめたいなら、もっとちゃんと触ってください。ほら、ここにいるでしょ」
上から自分の手を重ねて、力加減を教えてやる。
不安になるならいつでもこうしてくれていい、好きに触って。それでお前が安心するならいいよ。
「ずっとそばにいますよ。エリオット様が望む限り」
なんて。
少しずるい言い方をした。
はいと頷けば多分いつか嘘に変わってしまうから、嘘にならないような言葉を選んだ。
正体が暴かれてエリオットに拒絶される日が来ても、ノーチェが自らエリオットのそばを離れる日は来ない。エリオットがそれを望んでくれるなら。
だからこの言葉にも、そばにいたいと思うこの気持ちにも、嘘は一つもないのだと。
この愛しい人間に裁かれる日が来ても、それだけは信じてもらえるように。
(俺だって、叶うならずっとお前のそばにいてやりたいよ)
だからどうか、何も知らないままで。
15
あなたにおすすめの小説
鈴木さんちの家政夫
ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。
生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。
静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。
それから十年。
かつて自分を救った玲に再会した静は、玲を自分に惚れさせた上でひどい別れ方をしようとするが…
【完結】浮薄な文官は嘘をつく
七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。
イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。
父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。
イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。
カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。
そう、これは───
浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。
□『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。
□全17話
欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点
愛と猛毒(仮)
万里
BL
オフィスビルの非常階段。冷え切った踊り場で煙草をくゆらせる水原七瀬(みずはらななせ)は、部下たちのやり取りを静かに見守っていた。 そこでは村上和弥(むらかみかずや)が、長年想い続けてきた和泉に別れを告げられていた。和泉は「ありがとう」と優しく微笑みながらも、決意をもって彼を突き放す。和弥は矜持を守ろうと、営業スマイルを貼り付けて必死に言葉を紡ぐが、その姿は痛々しいほどに惨めだった。
和泉が去った後、七瀬は姿を現し、冷徹な言葉で和弥を追い詰める。 「お前はただの予備だった」「純愛なんて綺麗な言葉で誤魔化してるだけだ」――七瀬の毒舌は、和弥の心を抉り、憎悪を引き出す。和弥は「嫌いだ」と叫び、七瀬を突き放して階段を駆け下りていく。
「……本当、バカだよな。お前も、俺も」
七瀬は独り言を漏らすと、和弥が触れた手首を愛おしそうに、そして自嘲気味に強く握りしめた。
その指先に残る熱は、嫌悪という仮面の下で燃え盛る執着の証だった。 毒を吐き続けることでしか伝えられない――「好きだ」という言葉を、七瀬は永遠に飲み込んだまま、胸の奥で腐らせていた。
劣等生の俺を、未来から来た学院一の優等生が「婚約者だ」と宣言し溺愛してくる
水凪しおん
BL
魔力制御ができず、常に暴発させては「劣等生」と蔑まれるアキト。彼の唯一の取り柄は、自分でも気づいていない規格外の魔力量だけだった。孤独と無力感に苛まれる日々のなか、彼の前に一人の男が現れる。学院一の秀才にして、全生徒の憧れの的であるカイだ。カイは衆目の前でアキトを「婚約者」だと宣言し、強引な同居生活を始める。
「君のすべては、俺が管理する」
戸惑いながらも、カイによる徹底的な管理生活の中で、アキトは自身の力が正しく使われる喜びと、誰かに必要とされる温かさを知っていく。しかし、なぜカイは自分にそこまで尽くすのか。彼の過保護な愛情の裏には、未来の世界の崩壊と、アキトを救えなかったという、痛切な後悔が隠されていた。
これは、絶望の運命に抗うため、未来から来た青年と、彼に愛されることで真の力に目覚める少年の、時を超えた愛と再生の物語。
推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです
一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお)
同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。
時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。
僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。
本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。
だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。
なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。
「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」
ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。
僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。
その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。
悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。
え?葛城くんが目の前に!?
どうしよう、人生最大のピンチだ!!
✤✤
「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。
全年齢向けの作品となっています。
一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。
✤✤
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる