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絶対手に入れる② side エゼルバート
しおりを挟む向上心も夢も壊された俺は、目標を見失って何もかもやる気が失せ、そして引き篭もりとなった。
「・・・・・・魔術書が読めたって、魔力量の低い俺じゃ生活魔法くらいしか使いこなせない。出来損ないなのは変わらない」
「この国には生活魔法すら使えない人間が大多数なんだけど、つまりエゼルは国民のほとんどが出来損ないだと思ってるわけ?」
「ちっ、違う!そんなこと言ってない!」
「言ってるわよ。魔力量が低い事を恥だと思ってるから不貞腐れて引き篭もってるんでしょ?大体さ、エゼルをバカにしてる奴らだって魔力量低いじゃない。なんなら使用人の奴らなんてエゼルよりも遥かに下なのよ?下の下よ。そんな奴らに陰口叩かれたって羽虫やじゃが芋が嫉妬で何か喋ってるくらいに思ってればいいのよ」
「羽虫・・・じゃが芋・・・」
「そうよ。言われてムカついたなら「じゃあ自分より魔力量の低いアンタはカスですね」って笑い返してやりゃいーの。ドレイク家が人外並みに魔力量が飛び抜けてるだけであって、世間一般から見ればエゼルは中の上くらいのスペックなんだからね?」
「カス・・・・・・中の上・・・・・・?」
「そうよ。エゼルが出来損ないなら、国民の大多数がカスになってしまうわ。そんな馬鹿馬鹿しいことあるわけないでしょう?」
出来損ないは否定するけれど、決して優秀だとお世辞は言わない。客観的に中の上だと俺のスペックを評価する。
今思えば上から目線で失礼な言い方だと思うけど、あの時の俺は、そんなブリジットの言葉がストンと心に刺さった。
下手に慰められるより、自分の現状を的確に指摘してくれたブリジットの言葉だけは、素直に聞けたんだ。
そこに嘘は一つも混じってなかったから。
そして、世間一般から見て俺のスペックが『普通』の枠に入ってる事に安堵した。陰口を叩かれる程ではなかったのだとわかったから。
アレはブリジットの言う通り、ドレイク家に嫉妬する者や高位貴族に対するやっかみなのだろう。
当時の俺は子供だったから、それを真に受けて傷ついてしまった。でもその時のブリジットの言葉で救われたんだ。
「・・・ぶはっ、あははははっ」
「は?何よ急に笑い出して」
「だって、羽虫とかじゃが芋とか、カスとか・・・口悪すぎ・・・ははははっ」
「何よ、エゼルの代わりに怒ってあげてるんでしょ!」
俺から見たら陰口を言う奴らは自分を傷つける恐怖の存在でしかなかったけど、ブリジットから見たら羽虫やじゃが芋にしか見えないのだと思うと、面白すぎた。
そして、
「今日私とお母様がドレイク領に来たのは、エゼルが発明の天才である事を証明しに来たのよ」
「───何の話?」
詳しく話を聞くと、以前俺がブリジットとお遊びで作った魔法陣を、商品化して新商品として売り出したいとの事だった。
ブリジットと2人で読書をしていた時に、日が暮れて文字が見えづらくなった事でブリジットが文句を言い始めた事があった。
『あ~、もう!いい所なのに暗くて読みづらい!この世界って何で照明ないんだろう。誰か電気発明してくれないかな~。そしたら夜も本が読めるのに』
『ランタンじゃダメなの?』
『薄暗い中で読んだら目が悪くなるのよ!』
『その電気って何?ブリジットは時々難しい言葉使うよね』
『あー・・・うん、えーと、電気は・・・なんて言えばいいのかなぁ・・・化学物質・・・??うーん・・・とにかく電気はとても便利なもので、それがあれば照明が作れて夜でも本が読めるし字も書けるの。ランタンとは違って火を使わないし、とっても明るい光なのよ』
『光・・・?光魔法なの?』
『・・・・・・ん?───エゼル、今なんて言った?』
『え?光魔法?』
『・・・・・・っ!!そうかーー!!私何でそれに今まで気づかなかったんだろ!明るいランタンとか蝋燭を開発するより、電気の代わりに魔法使った方が早いじゃん!!盲点だった!!光魔法は治療だけにしか使えないとかそんな法律ないもんね!』
それからブリジットは、光魔法を部屋を明るくする『照明』というものに使いたいから、傷を治さずただ光るだけの魔法陣を作れと言い出した。
傷を治さない光魔法など、一体なんの意味があるのか当時の俺には意味のわからない注文だったけど、元々ある魔法陣の一部を抜いて組み替えるだけの簡単な奴だったので、その場でサラッと魔法陣を書いてブリジットに渡した。
そしてこれが、俺の人生の転機になった。
ブリジットはその頃から、俺の特別になったんだ。
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