47 / 63
しつこい男
しおりを挟む賠償請求で、マライア様をネブロス帝国第二皇子の婚約者に────?
「……王配になりたいということでしょうか?」
「うーん……それがねぇ、父親と息子で言ってる事が違うのよね。だからふざけてんのかと両陛下はお怒りなんだけど……」
え、──つまりどういうこと?
混乱していると父がため息を漏らして真相を話し出した。
「つまり、親子で思惑が違うんだ。第二皇子はマライア様が手に入るなら、王配でもなんでもいいと言っている。だが皇帝は賠償でマライア様をネブロス帝国に嫁がせろと言ってるんだよ」
「それ、要は女王制度を撤廃しろと言ってるんですよね?内政干渉じゃないですか」
「そうだ。だから私達はそうなるに至った情報を集めていたんだ。まあ、実に馬鹿馬鹿しい理由だったがな。さすが脳筋帝国といったところか」
どうやらネブロス帝国は内乱続きで軍事に国庫を注ぎ込みすぎて財政難に陥り、近隣国に借金までして回しているが、だんだん首が回らなくなっているらしい。
そこで目をつけたのが我が国で、女が治めている弱小国なら、簡単に属国にできるだろうと考えているのだとか。
「何で財政難だからってブランケンハイム王国を狙うの?」
「アイツらの目的はな、マライア様とウチの商会だよ。もっと平たく言えば、ブリジットとエゼルバートの作る魔道具の販売権が欲しいんだ」
「は?」
これには隣に座っていたエゼルも驚いていて、二人で顔を見合わせてしまう。
「貴方達のお陰で今じゃカーライル製の魔道具は世界的に有名だからね。エゼルが魔法陣を組んでいるから大量生産も可能になって輸出が増えたし、自国の経済成長に大きく貢献してるのよ。ネブロス帝国で販売権を持てれば大きな利益を得る事ができるし、マライア様を嫁がせて人質に取れば、あちらに有利な販売契約を結ぶ事もできるでしょう?」
「何それ、結局お金じゃない!女と金を寄越せって遠回しに言ってるだけじゃない」
「そういうこと。そもそも、この賠償請求のきっかけになった公爵令嬢の件だって、皇子がブランケンハイム王国に瑕疵を作るために引き起こした事件だしね」
まさか────、
「マライア様を手に入れる為に公爵令嬢が邪魔だから、婚約者の資格がなくなるように仕向けたってこと?」
よく考えれば、公爵令嬢で皇子の婚約者が、簡単に国を出て他国に旅行に行けること事態がおかしいわ。
裏で皇族が動いていたなら納得できる。
しかもその責任をブランケンハイム王国に被せて賠償請求するなんて、なんて性根の腐った男なのよ……っ。
「なかなかのクズでしょう?まあ、帝国の騎士団長を務めるくらいだから、あの国では優れた策略家なんでしょうけど、私達から見れば素人の雑魚だったわね」
「逆に利用して、王国のゴミの選別に役に立ってもらったから、むしろ俺達の仕事を手伝ってくれた皇子には感謝したいくらいだな」
はっはっはっ~。と高笑いする両親は流石というか、怖いというか……。
どうやらこのままいけば、かなりの数の貴族が粛正されるらしい。
仮面舞踏会は合法な出会いの場といっても、まともな貴族なら参加しない。
結局は、肉欲に溺れる事を目的とした男女が出会いを求めて参加する会なので、男女共に後ろ暗い事情がある為、一概に女性が被害者とは言い切れないのだとか。
媚薬の売買に関しても、中毒性があるといっても定期的に何度も常用しなければ中毒症状は起こらないらしく、結局は女性側も情事を楽しむ為に進んで服用していたということになる。
だから誰も被害届を出さない。
事実を明らかにされては困るからだ。
「第二皇子はなんでそんな事件まで起こしてマライア様にこだわっているの?王配になってこの国を乗っ取りたいとか?」
確か次期皇帝の座を巡って家臣達の間で後継者争いも起こってるって聞いたことがある。
争いを避ける為に王配になりたいとか?
「皇子は何年か前に外遊で我が国に訪れた時に、女性騎士達と訓練をしているマライア様に一目惚れしたみたいでね。それから何度も婚約の打診をしているけど、マライア様は皇子のこと嫌いらしくてずっと断っているのよ。それでも全然諦めないの。しつこい男よね」
「第2皇子は女癖が悪いと評判だからな。戦好きだからか、性欲が旺盛らしい。そんな男を王配なんかに出来るわけがない」
お父様が呆れたようにつぶやく。
「は?国内の政争を避けるためとか、外交が絡んでるとかではなく?ただ女の尻を追っかけてやらかしたってこと?」
両親が頷いたのを見て、改めて両陛下がブチ切れた理由を察した。
第二皇子ってバカなの──?
258
あなたにおすすめの小説
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる