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第二部 第0章 天啓子
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※アウリース視点
思わず笑みがこぼれ出してしまう。グレイズさんが商店街の人たちに茶化されて、照れている顔を見たら、心がポカポカして思わず笑顔になっていた。
私は冒険者になってから常に周りから疎外感を感じていたので、あまり笑わなかった。冒険者になる前は笑っていた記憶もあるけど、一五歳から冒険者になってから笑った記憶はなかった。
一番最初に組んでAランク冒険者までともに成長したパーティーの子たちは、常に私を立てつつも、自分たちとは違う存在だと見えない壁を感じていた。
圧倒的魔法攻撃力。私が彼らに必要とされたのは、その面だけで、探索を終えて地上に戻れば、何かと理由を付けて、私抜きの祝勝会や飲み会をしていたのは、きっと、この『天啓子』として与えられた力を妬んでいたのかもしれない。
でも、私は仲間が欲しかった。一緒にダンジョンに潜る人が欲しかった。一人は寂しいし、辛い。
冒険者になろうと決めたのは、両親が相次いで他界して、一人でいることが耐えられず、誰かと一緒にいたくて、それを吟遊詩人が歌っていた英雄物語出てくる冒険者パーティーのメンバーに求めていたからだ。
けど、現実の仲間たちは私の傍にいるどころか、力を気味悪がって、探索の時しか一緒にいてくれなかった。地上に戻れば、次潜るまでひとりぼっちの生活はとても辛い思いでしか残っていない。
事情があって初めて組んだパーティーの子たちとは、お別れしたけど、今思えば彼らからしたら、Aランク昇格を果たし気味の悪い私と縁が切れて清々したと思っていたのかもしれない。
実際、送別の会はやってもらえなかった。
そして、次に組んだパーティーも酷いところだった。連携はなく、ギスギスし、リーダーの男は私の身体を欲し、それを恋人の女が邪推して、巻き込まれた私は冒険資格の降格とパーティー追放の憂き目に遭っていた。
あの時は本当にこの世界を恨んだし、神様を呪った。なんで、私だけこんなに辛い目に遭うのってね。
でも、それはすべてグレイズさんと、彼の率いる追放者のメンバーに出会うための神様からの試練だったと思えば納得もできた。
いつでも元気いっぱいのファーマちゃん、言葉は少ないけどとっても頭のいいカーラさん、自立した女性として尊敬できるメリーさん、とても利口なオオカミのハクちゃんといった素晴らしい仲間と過ごす共同生活は、いつも笑いが溢れ、お互いを刺激し合い、ともに成長できる、私が夢にまで見ていた仲間たちだった。
そして、その仲間の中に女性として辱められ、冒険者としての信用も地の底に落とされた私の理不尽な境遇に怒りを現わし、元凶となった者たちを懲らしめてくれたグレイズさんがいる。
私はあの時のグレイズさんの姿を見て、自分の一生を捧げるべき人を見つけたと脳髄に電撃が走ったのを記憶している。
彼の傍であれば、私は常に笑って過ごせるだろうと脳が理解する前に、身体の方が反応していたのだから。
一緒に暮らしている子たちも私と同じように、グレイズさんに魅力を感じているのは薄々理解している。だから、独占する気もない。みんなで一緒にグレイズさんをお世話できたら、それは、それは楽しい大家族になりそうな気もしている。
いつかは仲間から家族に……。これが、今の私の最大の願い事になった。
※メリー視点
お父さんが築いた店は潰れた。私の判断ミスが原因だ。
フラマー商会の廉価攻勢はいつまでも続かないとタカを括っていた。一旦離れた客も新しい店に飽きれば、うちに帰ってくると思っていたこともある。けど、商売に絶対は無いということを、今回の件で思い知った。
それまで、父が築いた店の信用の上で商売をしていたに過ぎないことを思い知らされた私は、父の店を借金清算のために手放した時、私の心にはポッカリと大きな穴が空いて抜け殻のようになっていた。
きっと、グレイズさんとみんなが傍にいてくれなかったら、自責の念に駆られて、店で首を吊っていてもおかしくない精神状況だったのが、今振り返ると理解できた。
でも、あの時の私は、悔しさと無力さと恥ずかしさとが混然一体となって、心がかき乱されていたの。
つまり、あの時の私はこの世界から消えてしまいたいって常に思っている精神状態だった。
それを、みんなが引き留めてくれた。常に一緒に生活して、朝晩のご飯を一緒に食べて、今日あった他愛ない話をして、眠る。
ただ、それだけを飽きるまで続けてくれた。本当にグレイズさんといい、みんなといい、人の好い人たちばかりのおかげで、立ち直るための時間を得ることができた。
なので、みんな私の命の恩人だ。
生きていたからこそ、新たな商売である『ブラックミルズ商店街連合会』の代表という仕事にも巡り合えたし、グレイズさんと一緒にダンジョンに潜る決心も付いたので、きっと、今回の件はおとうさんが、いつまでも自分が作った店にこだわって婚期を逃すなと背中を押してくれたのかも思うことにした。
それにしても、ファーマちゃんもカーラちゃんもアウリースちゃんもいい子たちだし、ハクちゃんも可愛い。
アルマを加えた女子会では、常にグレイズさんの話題でみんなと盛り上がれるし、彼に向ける好意を全員が持っていることも薄々察している。
本当ならライバルって感じなんだろうけど、みんなと和気あいあいとグレイズさんのお世話をして過ごす生活もそれはそれで楽しいと思えている自分がいる。
グレイズさんの家での共同生活は、女性が四人ということで、グレイズさんの方が居候っぽい感じがでているが、家事は共同で行っている。
ちょっと手狭かもと思うけど、何だかんだで、お互いに助け合って共同生活していると、一人娘だった私には姉妹が増えた気がして、色々と年下の子の面倒も見てあげたくなる。
私が稼いで、グレイズさんを養い、みんなで共同生活とかしたら、きっと楽しい家族になれると思う。そのために今日も商売に精を出さないと。
思わず笑みがこぼれ出してしまう。グレイズさんが商店街の人たちに茶化されて、照れている顔を見たら、心がポカポカして思わず笑顔になっていた。
私は冒険者になってから常に周りから疎外感を感じていたので、あまり笑わなかった。冒険者になる前は笑っていた記憶もあるけど、一五歳から冒険者になってから笑った記憶はなかった。
一番最初に組んでAランク冒険者までともに成長したパーティーの子たちは、常に私を立てつつも、自分たちとは違う存在だと見えない壁を感じていた。
圧倒的魔法攻撃力。私が彼らに必要とされたのは、その面だけで、探索を終えて地上に戻れば、何かと理由を付けて、私抜きの祝勝会や飲み会をしていたのは、きっと、この『天啓子』として与えられた力を妬んでいたのかもしれない。
でも、私は仲間が欲しかった。一緒にダンジョンに潜る人が欲しかった。一人は寂しいし、辛い。
冒険者になろうと決めたのは、両親が相次いで他界して、一人でいることが耐えられず、誰かと一緒にいたくて、それを吟遊詩人が歌っていた英雄物語出てくる冒険者パーティーのメンバーに求めていたからだ。
けど、現実の仲間たちは私の傍にいるどころか、力を気味悪がって、探索の時しか一緒にいてくれなかった。地上に戻れば、次潜るまでひとりぼっちの生活はとても辛い思いでしか残っていない。
事情があって初めて組んだパーティーの子たちとは、お別れしたけど、今思えば彼らからしたら、Aランク昇格を果たし気味の悪い私と縁が切れて清々したと思っていたのかもしれない。
実際、送別の会はやってもらえなかった。
そして、次に組んだパーティーも酷いところだった。連携はなく、ギスギスし、リーダーの男は私の身体を欲し、それを恋人の女が邪推して、巻き込まれた私は冒険資格の降格とパーティー追放の憂き目に遭っていた。
あの時は本当にこの世界を恨んだし、神様を呪った。なんで、私だけこんなに辛い目に遭うのってね。
でも、それはすべてグレイズさんと、彼の率いる追放者のメンバーに出会うための神様からの試練だったと思えば納得もできた。
いつでも元気いっぱいのファーマちゃん、言葉は少ないけどとっても頭のいいカーラさん、自立した女性として尊敬できるメリーさん、とても利口なオオカミのハクちゃんといった素晴らしい仲間と過ごす共同生活は、いつも笑いが溢れ、お互いを刺激し合い、ともに成長できる、私が夢にまで見ていた仲間たちだった。
そして、その仲間の中に女性として辱められ、冒険者としての信用も地の底に落とされた私の理不尽な境遇に怒りを現わし、元凶となった者たちを懲らしめてくれたグレイズさんがいる。
私はあの時のグレイズさんの姿を見て、自分の一生を捧げるべき人を見つけたと脳髄に電撃が走ったのを記憶している。
彼の傍であれば、私は常に笑って過ごせるだろうと脳が理解する前に、身体の方が反応していたのだから。
一緒に暮らしている子たちも私と同じように、グレイズさんに魅力を感じているのは薄々理解している。だから、独占する気もない。みんなで一緒にグレイズさんをお世話できたら、それは、それは楽しい大家族になりそうな気もしている。
いつかは仲間から家族に……。これが、今の私の最大の願い事になった。
※メリー視点
お父さんが築いた店は潰れた。私の判断ミスが原因だ。
フラマー商会の廉価攻勢はいつまでも続かないとタカを括っていた。一旦離れた客も新しい店に飽きれば、うちに帰ってくると思っていたこともある。けど、商売に絶対は無いということを、今回の件で思い知った。
それまで、父が築いた店の信用の上で商売をしていたに過ぎないことを思い知らされた私は、父の店を借金清算のために手放した時、私の心にはポッカリと大きな穴が空いて抜け殻のようになっていた。
きっと、グレイズさんとみんなが傍にいてくれなかったら、自責の念に駆られて、店で首を吊っていてもおかしくない精神状況だったのが、今振り返ると理解できた。
でも、あの時の私は、悔しさと無力さと恥ずかしさとが混然一体となって、心がかき乱されていたの。
つまり、あの時の私はこの世界から消えてしまいたいって常に思っている精神状態だった。
それを、みんなが引き留めてくれた。常に一緒に生活して、朝晩のご飯を一緒に食べて、今日あった他愛ない話をして、眠る。
ただ、それだけを飽きるまで続けてくれた。本当にグレイズさんといい、みんなといい、人の好い人たちばかりのおかげで、立ち直るための時間を得ることができた。
なので、みんな私の命の恩人だ。
生きていたからこそ、新たな商売である『ブラックミルズ商店街連合会』の代表という仕事にも巡り合えたし、グレイズさんと一緒にダンジョンに潜る決心も付いたので、きっと、今回の件はおとうさんが、いつまでも自分が作った店にこだわって婚期を逃すなと背中を押してくれたのかも思うことにした。
それにしても、ファーマちゃんもカーラちゃんもアウリースちゃんもいい子たちだし、ハクちゃんも可愛い。
アルマを加えた女子会では、常にグレイズさんの話題でみんなと盛り上がれるし、彼に向ける好意を全員が持っていることも薄々察している。
本当ならライバルって感じなんだろうけど、みんなと和気あいあいとグレイズさんのお世話をして過ごす生活もそれはそれで楽しいと思えている自分がいる。
グレイズさんの家での共同生活は、女性が四人ということで、グレイズさんの方が居候っぽい感じがでているが、家事は共同で行っている。
ちょっと手狭かもと思うけど、何だかんだで、お互いに助け合って共同生活していると、一人娘だった私には姉妹が増えた気がして、色々と年下の子の面倒も見てあげたくなる。
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