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第二部 第十章 飛ばされた先
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俺を先頭にして、ファーマ、ハクといった順番で隊列を組み、アウリースが掛けてくれた魔法の光を灯した棒を手に、苔むした石積みの通路を進んでいく。
慎重に魔物の気配を探りつつ通路を進むうちに、俺の記憶に残っている地形が一致する箇所が何個か出てきた。
石でできた玉座の場所や、謁見の間と思われる馬鹿でかい広間、それに併設された石造りのテラスなどを見たところで、自分たちがどの階層に飛ばされたのかを確信していた。
「こりゃあ、第二二階層の不死王の宮殿だ。マズいな。深層階まで飛ばされてるぞ。こりゃあ……」
「不死王の宮殿? ここってそんなに凄いところなのー?」
息を殺して周囲の気配を窺っているファーマが、自分たちがいる階層について質問してきた。
「ああ、Aランク以上推奨の場所だ。雑魚でもかなり強い魔物が出る場所で、みんなアンデット系という厄介な場所なんだ。光が届かないダークゾーンもあるし、駆け出しや中堅になりたての冒険者たちだけだと一瞬で全滅しかねないな」
「わふうぅ! (腐った匂いが前方からしますよ!)」
ハクが警戒の声を上げたと同時にファーマも俺も、魔物の気配を感じていた。
敵もこちらに気付いたようで、数体の気配がこちらに向けて素早く動き出している。
「来るぞ! 多分、気配の種類からリザードマンゾンビかと思う。倒せなくはないが、とにかく固いから油断はしないようにな」
「ゾンビさん嫌いだよー!」
「わふぅうう! (強い相手、強い相手だわ。滾ってくる)」
魔法の光を灯した棒を腰のベルトに挟むと、俺も応戦体制を整える。ムエルのパーティーに居た際、仲間を助けるため、何度か陰の支援したことはあったが、本格的に戦うのは今回が初めてであるのだ。
一応、敵の強さを確認しておかないと、地上脱出に向けて戦うべき相手なのかの判断をつけられないため、戦闘を挑むことにした。
しばらく、その場で待ち受けると、バタバタと足音を立て、身体が半分腐った蜥蜴人が、この場所で亡骸と化したであろう冒険者ゾンビを数体引き連れて現れていた。
「冒険者ゾンビ付きか。この場で息絶えた奴らだから、最低でもAランク冒険者たちか……。ゾンビ化で能力が下がっているとはいえ、油断はできないな」
探索の途中で倒れ、命を失った冒険者はダンジョン内に満ちる魔素に汚染され、ゾンビ化し、ダンジョンの魔物一員になるのだが、魔法やスキルなど使用不可になり、素早さや知力、器用さなどのステータスは下がるが、筋力が大幅に上がるため結構な強敵となるゾンビも多い。
階層が深くなるにつれ、元となった冒険者たちの能力も高いために起きる現象であった。
その冒険者ゾンビが、リザードマンゾンビとともに現れていた。
「リザードマンゾンビは俺がやる。ファーマとハクは冒険者ゾンビを頼んだ」
「了解なのー!」
「わっふうう! (そのくっさい肉を爪で引き裂いて、骨を噛み砕いてくれる)」
指示を受けた二人が、冒険者ゾンビの方へ向けて駆けだしていく。俺も同時にリザードマンゾンビに向けて駆けだしていた。
目の前に対峙することとなったリザードマンゾンビは、ゾンビ化したことで、元々高いリザードマンの耐久力が更に増している魔物で、筋力もその分増大し、当たると普通の冒険者であれば、一発のダメージで重傷を負う可能性もある個体だ。
武器も地底湖エリアで見た槍から、凶悪そうな両手斧に変更されていた。
「だが、当たらなければどうということはないってな。誰か偉い人が言っていたぞ」
唸り音を上げて、目の前を掠めていった両手斧の刃先を躱していく。
ゾンビになった分、俊敏さは失われているため、攻撃を回避するのは容易であった。
デカイ一発も当たらなければ、負傷することも無いのだ。
ウボウウウウウゥ!!!
攻撃を躱されたリザードマンゾンビが、苛立ったように奇声を上げて突進をしてくる。
「体当たりなど、なおさら当たりなどしないさ」
ひらりと身体を傾け、体当たりを躱すと、その勢いを利用して、俺の膝をリザードマンゾンビの腹に向けて打ち込んでやった。
だが、さすがにこの階層の敵となると、腕輪付きでは大ダメージを与えることはできても、一発で退治することは厳しそうだ。
続けざまに身体をくの字に曲げたリザードマンゾンビに拳を繰り出していく。
一発、二発、三発入ったところで、リザードマンゾンビの膝が崩れ、地面に倒れ込んでいった。
「ふぅ、固いねぇ。倒せない相手ではないし、苦戦をするとまではいかないが、あの大勢の駆け出しや中堅なりたての冒険者たちを引き連れての帰還と考えると、これは結構まずい事態に陥ったかもしれんなぁ」
リザードマンゾンビを撃破すると、周りで戦っているファーマとハクの方へ視線を向けた。
さすがに敵もスピードが落ちているため、ファーマとハクを捉えることはできていないが、やはり耐久力が増しているため、致命的なダメージまでは出せていない状況であった。
「グレイズさん、このゾンビさん固いよー。何回、攻撃しても倒れないのー」
まだ、能力が成長しきっていないファーマの筋力で出せるダメージでは、この階層の冒険者ゾンビを倒すためには何度も攻撃を加える必要がある様子であった。
「深層階の敵だからな。今まで通りには行かない。ファーマ、援護する」
俺はリザードマンゾンビのドロップした大きな両手持ちの戦斧を手にすると、冒険者ゾンビに斬りかかっていく。
他人の目を恐れるあまり、神器によって授けられた力を使うことを抑えてきたが、今回は緊急事態過ぎるので、生き残るために戦うことを選択せざるを得ない気がしてた。
ファーマの攻撃に気を取られていた冒険者ゾンビの首を戦斧で跳ね飛ばすと、身体を蹴って遠くに飛ばしていく。
「わふう!! (グレイズ殿、後ろ!)」
ホッと息を吐く暇もなく、ハクからの警告が飛び、振り向くと後ろには冒険者ゾンビの顔があった。
慣れていないと、とても心臓に悪い絵だが、びびっている暇はないので、肘鉄を喰らわして身体との距離を取ると、振り向きざまに首を戦斧で首を跳ね飛ばしてやる。
「凄い。さすがグレイズさん。ファーマも頑張らないと」
「ファーマとハクとは違い、力に頼った無様な戦い方だがな」
残った冒険者ゾンビは二体で、ハクを攻撃しようとしていたが、ファーマの爪によって腕を斬り飛ばされ、続く攻撃を繰り出したハクの牙を首筋に受けて、身体を痙攣させて絶命していった。
二人のコンビネーションはSランク冒険者も脱帽するほどの完璧なタイミングで行われ、冒険者ゾンビはなすすべなく地面に身体を横たえていく。
「ナイス! 上手いぞ」
最後に残った冒険者ゾンビの首を斬り飛ばしながら、見事な連携を見せた二人をほめたたえる。
あのコンビネーションであれば、お互いの不足分を補い合って、この階層でもそこそこ戦えそうであった。
「ハクちゃんとなら、ファーマはどんな敵でも戦るよ」
「わふぅうう! (あたしとファーマちゃんは最凶コンビなのですよ)」
最後の冒険者ゾンビを退治して、戦斧に付着したどす黒い血を振り落とすと、みんなの元に戻り、地上脱出に向けての方策を決めなければならないとの結論に達していた。
駆け出しや中堅なり立ての冒険者たち一〇〇名近くを引き連れての第二二階層という深層階からの脱出。
誰もが無理だ、無謀だというかもしれない、とても骨が折れる難事であるが、かといってメラニア捜索という俺のわがままに巻き込んだ彼らを見捨てることもできないので、持てる範囲の能力を使い切ってでも成し遂げるつもりだ。
すべて俺の甘い判断が招いた事態であり、非常に困難が伴うと思われる目標の達成に際し、この事態を乗り越えるには俺に与えられたすべての能力を使い切ってでも、彼ら一人も欠けることなく無事に地上にまで帰還させるしかないと決めていた。
最悪、腕輪を外し、能力を限界まで使い切った俺がボロボロの身体になったとしても、みんなが無事に地上に戻れさえすればいい。そう割り切って今まで隠してきた力を使う覚悟を決めた。
前までとは違い、今の俺には真の仲間とも言える者がいる。今回の脱出行で力を気味悪がって離れる者も出るだろうが、それでも俺は一人ぼっちになるということはないという確信が、この決断の後押しをしてくれていたのだ。
そう決意した俺は、魔物が変化したドロップ品を集めていたファーマに話かけた。
「ファーマ、もし俺がブラックミルズのみんなから嫌われても、俺の仲間で居てくれるか?」
決意したものの、ほんのちょっとだけ、安心感が欲しくて、思わず質問をしてしまった。
だが、質問を聞いたファーマはドロップ品収集の手を止め、すぐに俺の手を握ってきた。
「当り前だよ。ファーマはグレイズさんの真の仲間だもん! みんなが、グレイズさんのことを嫌ってもファーマは絶対に嫌いにならないよ!」
その言葉を聞けただけで、俺にもう恐れることはなくなった。全てをさらけ出してでも、メラニアや飛ばされた冒険者、それに追放者のメンバー全員を生きて地上に帰還させよう。
「わふうう! (グレイズ殿、あたしも忘れてもらっては困りますよ。アクセルリオン神からはしっかりと近侍して可愛がってもらいなさいと言われていますからね。邪魔だと言われてもお傍は離れませんよ)」
ハクも俺の身体にすり寄ってきて、甘えるように身体を擦り付けていく。
二人のやさしい心に触れ、ほんのちょっとだけ欲しかった安心感を得て、ありがたさに心がポッと温かくなる。
「よし、じゃあ。みんなのところに戻って、脱出への作戦会議だ! 急いで戻ろう! メラニアもみんなも生きて絶対に地上に戻るぞ!」
「はーい! じゃあ、戻ろうかー! ハクちゃん、ファーマと先頭で索敵するよー!」
俺の身体から離れた二人が、来た道を戻るように先行していく。
そんな二人を追うように俺も来た道を、メリーたちが待つ通路の方へ向けて駆けだしていった。
慎重に魔物の気配を探りつつ通路を進むうちに、俺の記憶に残っている地形が一致する箇所が何個か出てきた。
石でできた玉座の場所や、謁見の間と思われる馬鹿でかい広間、それに併設された石造りのテラスなどを見たところで、自分たちがどの階層に飛ばされたのかを確信していた。
「こりゃあ、第二二階層の不死王の宮殿だ。マズいな。深層階まで飛ばされてるぞ。こりゃあ……」
「不死王の宮殿? ここってそんなに凄いところなのー?」
息を殺して周囲の気配を窺っているファーマが、自分たちがいる階層について質問してきた。
「ああ、Aランク以上推奨の場所だ。雑魚でもかなり強い魔物が出る場所で、みんなアンデット系という厄介な場所なんだ。光が届かないダークゾーンもあるし、駆け出しや中堅になりたての冒険者たちだけだと一瞬で全滅しかねないな」
「わふうぅ! (腐った匂いが前方からしますよ!)」
ハクが警戒の声を上げたと同時にファーマも俺も、魔物の気配を感じていた。
敵もこちらに気付いたようで、数体の気配がこちらに向けて素早く動き出している。
「来るぞ! 多分、気配の種類からリザードマンゾンビかと思う。倒せなくはないが、とにかく固いから油断はしないようにな」
「ゾンビさん嫌いだよー!」
「わふぅうう! (強い相手、強い相手だわ。滾ってくる)」
魔法の光を灯した棒を腰のベルトに挟むと、俺も応戦体制を整える。ムエルのパーティーに居た際、仲間を助けるため、何度か陰の支援したことはあったが、本格的に戦うのは今回が初めてであるのだ。
一応、敵の強さを確認しておかないと、地上脱出に向けて戦うべき相手なのかの判断をつけられないため、戦闘を挑むことにした。
しばらく、その場で待ち受けると、バタバタと足音を立て、身体が半分腐った蜥蜴人が、この場所で亡骸と化したであろう冒険者ゾンビを数体引き連れて現れていた。
「冒険者ゾンビ付きか。この場で息絶えた奴らだから、最低でもAランク冒険者たちか……。ゾンビ化で能力が下がっているとはいえ、油断はできないな」
探索の途中で倒れ、命を失った冒険者はダンジョン内に満ちる魔素に汚染され、ゾンビ化し、ダンジョンの魔物一員になるのだが、魔法やスキルなど使用不可になり、素早さや知力、器用さなどのステータスは下がるが、筋力が大幅に上がるため結構な強敵となるゾンビも多い。
階層が深くなるにつれ、元となった冒険者たちの能力も高いために起きる現象であった。
その冒険者ゾンビが、リザードマンゾンビとともに現れていた。
「リザードマンゾンビは俺がやる。ファーマとハクは冒険者ゾンビを頼んだ」
「了解なのー!」
「わっふうう! (そのくっさい肉を爪で引き裂いて、骨を噛み砕いてくれる)」
指示を受けた二人が、冒険者ゾンビの方へ向けて駆けだしていく。俺も同時にリザードマンゾンビに向けて駆けだしていた。
目の前に対峙することとなったリザードマンゾンビは、ゾンビ化したことで、元々高いリザードマンの耐久力が更に増している魔物で、筋力もその分増大し、当たると普通の冒険者であれば、一発のダメージで重傷を負う可能性もある個体だ。
武器も地底湖エリアで見た槍から、凶悪そうな両手斧に変更されていた。
「だが、当たらなければどうということはないってな。誰か偉い人が言っていたぞ」
唸り音を上げて、目の前を掠めていった両手斧の刃先を躱していく。
ゾンビになった分、俊敏さは失われているため、攻撃を回避するのは容易であった。
デカイ一発も当たらなければ、負傷することも無いのだ。
ウボウウウウウゥ!!!
攻撃を躱されたリザードマンゾンビが、苛立ったように奇声を上げて突進をしてくる。
「体当たりなど、なおさら当たりなどしないさ」
ひらりと身体を傾け、体当たりを躱すと、その勢いを利用して、俺の膝をリザードマンゾンビの腹に向けて打ち込んでやった。
だが、さすがにこの階層の敵となると、腕輪付きでは大ダメージを与えることはできても、一発で退治することは厳しそうだ。
続けざまに身体をくの字に曲げたリザードマンゾンビに拳を繰り出していく。
一発、二発、三発入ったところで、リザードマンゾンビの膝が崩れ、地面に倒れ込んでいった。
「ふぅ、固いねぇ。倒せない相手ではないし、苦戦をするとまではいかないが、あの大勢の駆け出しや中堅なりたての冒険者たちを引き連れての帰還と考えると、これは結構まずい事態に陥ったかもしれんなぁ」
リザードマンゾンビを撃破すると、周りで戦っているファーマとハクの方へ視線を向けた。
さすがに敵もスピードが落ちているため、ファーマとハクを捉えることはできていないが、やはり耐久力が増しているため、致命的なダメージまでは出せていない状況であった。
「グレイズさん、このゾンビさん固いよー。何回、攻撃しても倒れないのー」
まだ、能力が成長しきっていないファーマの筋力で出せるダメージでは、この階層の冒険者ゾンビを倒すためには何度も攻撃を加える必要がある様子であった。
「深層階の敵だからな。今まで通りには行かない。ファーマ、援護する」
俺はリザードマンゾンビのドロップした大きな両手持ちの戦斧を手にすると、冒険者ゾンビに斬りかかっていく。
他人の目を恐れるあまり、神器によって授けられた力を使うことを抑えてきたが、今回は緊急事態過ぎるので、生き残るために戦うことを選択せざるを得ない気がしてた。
ファーマの攻撃に気を取られていた冒険者ゾンビの首を戦斧で跳ね飛ばすと、身体を蹴って遠くに飛ばしていく。
「わふう!! (グレイズ殿、後ろ!)」
ホッと息を吐く暇もなく、ハクからの警告が飛び、振り向くと後ろには冒険者ゾンビの顔があった。
慣れていないと、とても心臓に悪い絵だが、びびっている暇はないので、肘鉄を喰らわして身体との距離を取ると、振り向きざまに首を戦斧で首を跳ね飛ばしてやる。
「凄い。さすがグレイズさん。ファーマも頑張らないと」
「ファーマとハクとは違い、力に頼った無様な戦い方だがな」
残った冒険者ゾンビは二体で、ハクを攻撃しようとしていたが、ファーマの爪によって腕を斬り飛ばされ、続く攻撃を繰り出したハクの牙を首筋に受けて、身体を痙攣させて絶命していった。
二人のコンビネーションはSランク冒険者も脱帽するほどの完璧なタイミングで行われ、冒険者ゾンビはなすすべなく地面に身体を横たえていく。
「ナイス! 上手いぞ」
最後に残った冒険者ゾンビの首を斬り飛ばしながら、見事な連携を見せた二人をほめたたえる。
あのコンビネーションであれば、お互いの不足分を補い合って、この階層でもそこそこ戦えそうであった。
「ハクちゃんとなら、ファーマはどんな敵でも戦るよ」
「わふぅうう! (あたしとファーマちゃんは最凶コンビなのですよ)」
最後の冒険者ゾンビを退治して、戦斧に付着したどす黒い血を振り落とすと、みんなの元に戻り、地上脱出に向けての方策を決めなければならないとの結論に達していた。
駆け出しや中堅なり立ての冒険者たち一〇〇名近くを引き連れての第二二階層という深層階からの脱出。
誰もが無理だ、無謀だというかもしれない、とても骨が折れる難事であるが、かといってメラニア捜索という俺のわがままに巻き込んだ彼らを見捨てることもできないので、持てる範囲の能力を使い切ってでも成し遂げるつもりだ。
すべて俺の甘い判断が招いた事態であり、非常に困難が伴うと思われる目標の達成に際し、この事態を乗り越えるには俺に与えられたすべての能力を使い切ってでも、彼ら一人も欠けることなく無事に地上にまで帰還させるしかないと決めていた。
最悪、腕輪を外し、能力を限界まで使い切った俺がボロボロの身体になったとしても、みんなが無事に地上に戻れさえすればいい。そう割り切って今まで隠してきた力を使う覚悟を決めた。
前までとは違い、今の俺には真の仲間とも言える者がいる。今回の脱出行で力を気味悪がって離れる者も出るだろうが、それでも俺は一人ぼっちになるということはないという確信が、この決断の後押しをしてくれていたのだ。
そう決意した俺は、魔物が変化したドロップ品を集めていたファーマに話かけた。
「ファーマ、もし俺がブラックミルズのみんなから嫌われても、俺の仲間で居てくれるか?」
決意したものの、ほんのちょっとだけ、安心感が欲しくて、思わず質問をしてしまった。
だが、質問を聞いたファーマはドロップ品収集の手を止め、すぐに俺の手を握ってきた。
「当り前だよ。ファーマはグレイズさんの真の仲間だもん! みんなが、グレイズさんのことを嫌ってもファーマは絶対に嫌いにならないよ!」
その言葉を聞けただけで、俺にもう恐れることはなくなった。全てをさらけ出してでも、メラニアや飛ばされた冒険者、それに追放者のメンバー全員を生きて地上に帰還させよう。
「わふうう! (グレイズ殿、あたしも忘れてもらっては困りますよ。アクセルリオン神からはしっかりと近侍して可愛がってもらいなさいと言われていますからね。邪魔だと言われてもお傍は離れませんよ)」
ハクも俺の身体にすり寄ってきて、甘えるように身体を擦り付けていく。
二人のやさしい心に触れ、ほんのちょっとだけ欲しかった安心感を得て、ありがたさに心がポッと温かくなる。
「よし、じゃあ。みんなのところに戻って、脱出への作戦会議だ! 急いで戻ろう! メラニアもみんなも生きて絶対に地上に戻るぞ!」
「はーい! じゃあ、戻ろうかー! ハクちゃん、ファーマと先頭で索敵するよー!」
俺の身体から離れた二人が、来た道を戻るように先行していく。
そんな二人を追うように俺も来た道を、メリーたちが待つ通路の方へ向けて駆けだしていった。
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