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第二部 第一二章 発覚
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「ジェネシス様、そのようなことはされてはなりませぬ。わたくしはヴィーハイブ家の養女に過ぎませぬ」
「いえ、余の姉上であるメラニア・ファルブラウその人であります」
メラニアが戸惑いながらも拝礼をするジェネシスの手を取り起こしていく。
急に現れた弟にメラニア自身が戸惑いを隠し切れないようである。
「ジェ、ジェネシス。いや、王様と呼ぶべきか。メラニアが君の姉だということは理解したが、事情が事情のためメラニアに整理する時間を与えてくれるか? ここ最近色々とあり過ぎて、彼女は精神的に弱っているんだ」
「分かっています。アルガドの奴が余の姉に対して行った数々の非道を許す気はない。余は大事な身内を痛めつけた者を許す寛容さは持ち合わせておらぬのでな」
いやいや、分かってないだろ。絶対に。
今ここで王様とクレストン家の嫡男が揉めれば、政争の再発を招きかねない。そうなれば、再びメラニアやジェネシスの身が危険に曝されかねない。
「メラニアの件は一旦俺に預けてくれるとありがたい。絶対に悪いようにはしないから、頼む。ジェネシス」
メラニアの身柄も含め、アルガドとの決着を俺に一任してくれるようにジェネシスに頼み込む。
下手に動けば事はブラックミルズでは収まらなくなり、国中を巻き込んだ惨事に発展しかねないのだ。
俺の申し出を考え込んでいたジェネシスが口を開く。
「で、あれば、グレイズさんが我が姉の伴侶となるという条件をもって余がこの件に手出しすることを自重しようと思う。ただ、グレイズさんにはメリーさん始め、ファーマ、カーラさん、アウリースさん、セーラさんといった嫁候補がいるのは知っておるので、その中に余の姉であるメラニアを加えてもらえば良い。どうであろうか?」
「ジェネシス様!? 何をおっしゃっているのですか? わ、わたくしはグレイズ様に多大なるご迷惑をかけた女ですからっ! そのような申し出は困ります。これ以上グレイズ様にご迷惑をおかけするわけには……」
「分かった。メラニアの身柄は俺が預かる。嫁にするかどうかは確約できないが、絶対に命に代えて守ることは約束するぞ」
「その言葉だけで余は安心できる。なにせ『英雄』グレイズさんの傍ほどこの世界で安全な場所はないからな。見せて頂いた力は頼もしい限りだ。余の姉上のこと頼みますぞ」
ジェネシスが手を差し出し握手を求めてきていた。
俺はその手を握ると固く握手を交わす。
「つまり、メラニアさんはファーマたちと一緒に暮らすことになるってことかなー? カーラさん、それで合ってる?」
「正解。メラニア、私たちと一緒に生活。部屋割りしないと」
「なら、私と相部屋ですかね。まだお部屋空いてますけど」
「あたしもグレイズさんのお家で暮らしたいけどお父さんがダメって言うしな。いいなぁ、メラニアさん」
「あら、セーラ。お父さんと喧嘩して家出してきたって言えば、グレイズさんのことだから、部屋くれるわよ。とりあえず準備しておくから、いつでも来ていいわよ」
「本当ですか!? でも、お父さんも心配だし」
「別にいつもグレイズさんの家で住まなくても気が向いた時にくればいいのよ。そのために部屋は空けておくからね」
「メリー社長、オレは認めないぞ! グレイズにセーラをやるとは言ってね……むぐうぅうう!!」
激高したグレイが『おっさんず』の同僚二人に口を塞がれて羽交い絞めにされていた。
「メ、メリーさん~。ありがとうございます~。あたし、たまにお邪魔しますからぁ」
背後で別の話がメリー主導で決まっている気もしないでもないが、とりあえずメラニアの身柄を俺が預かることで、ジェネシスが暴走するのを止めることができた。
「グ、グレイズ様。わたくしはお世話になるわけには……」
「どうも、うちの同居人たちがメラニアのことを気に入っているみたいでね。悪いが一緒に住んでやってくれるとありがたい。嫁云々とか、ジェネシスの件は時間をかけて取り組んでいこうか。今のメラニアに必要なのは穏やかな生活だと思う」
「本当に一緒に居てよろしいのですか?」
「ああ、いいぞ。部屋はいっぱいあるしみんなもそのつもりだ。俺もな」
みんなが一緒に住みたいと言っているので、うちの部屋であれば自由に使ってもらうつもりだ。
街からの外れた郊外であるし、色々と街の人の誤認が解けるまでにも時間はかかると思われる。
その間、メラニアにはうちでゆっくりとしてもらうつもりであった。
「グレイズさん、姉上との子は余の親戚になるので、早めに顔見せを頼むぞ。王位を継承する可能性もあるからな」
「ジェ、ジェネシス様!?」
「な、なにを言っているんだっ! 別に俺はメラニアに手を出すつもりなんてないぞ!」
「余は期待しておるということだ。『英雄』グレイズさんが余の縁戚に連なるとなれば、王権の復興も捗るであろうな」
ジェネシスは朗らかに笑いながらも抜け目の無さを見せていた。
王家は宰相の庇護の元で生きながられてえていると噂されているが、ジェネシスの出奔により宰相との関係もこじれる可能性があることを示唆していた。
そのため、ジェネシスは俺の持つ人外の力に期待をしているのかも知れない。
「悪いが俺に王家を守るつもりはないぞ。王位を捨てた一介の冒険者であるジェネシスなら守ってやらんでもないが……」
「さすが、グレイズさんは頭が回るな。余の目論見は簡単に見抜いたか。まぁ、良い。グレイズさんの傍に姉上がいると思えば余も無茶をできる。最悪、王家は姉上が継げるからな」
ジェネシスがメラニアを俺に任せたのは、そこまでのことを視野にいれた上での申し出だったかと驚いてしまう。
「あら、うちのグレイズさんは仲間と認めた人は見捨てないですよ。ね? グレイズさん」
メリーが俺に対して目配せを送って来ていた。
最悪、宰相とクレストン公爵家を敵に回してでも王家を守ると言って欲しいらしい。
だが、俺には手に余る事案な気がしてならない。
「ファーマはジェネシス君のことは絶対に守るよー。偉い人とか関係なく、ファーマの大事な仲間だもん!」
「メラニアの弟なら、私たちの弟同然、弟守る、姉の務め当然」
「私も微力ながらお手伝いさせてもらいますよ。一緒に死線を潜り抜けた大切な仲間ですからね」
「せっかく会えた弟が死んだら、メラニアさんが悲しむと思うから、あたしも手伝う」
「この小僧がいたからこそ皆が悲観せずにここまで戻って来られたからな。オレらも手を貸すつもりだ」
「す、すみません。わたくしだけでなく弟まで皆様にご迷惑をかけて……。本当にすみません」
「って、言うのがみんなの意見だけど。どうする? グレイズさん?」
メリーが隣で俺を見て微笑んでいた。みんなにここまで言わせておいて、俺がジェネシスを切り捨てる訳にはいかなかった。
「だぁあああっ! 分かったよ。ジェネシス、お前も守ってやるよ。最悪、国と喧嘩する羽目になって街が一個消えても文句言うなよ!」
「グレイズさん……すまぬ。余のために」
「俺は王様のためにお前を守るんじゃない。『仲間』であるお前を守ると決めたんだ。だから、俺はお前を王とは呼ばない。ただのジェネシスだいいな。これが、俺がお前を守る条件だからな」
「良い、許す。今この場に集っておる者は余を名で呼ぶ特典を授ける」
固唾を呑んで成り行きを見ていた冒険者たちが、一斉に喜びの声を上げると、俺とジェネシスを胴上げしていた。
しかし、そんな喜びに包まれる俺たちのもとにヒタヒタと迫りくるモノがいたことにまだこの時の俺は気が付いていなかった。
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本日を持ちまして本年のおっさん商人の更新は停止させてもらいます。明年は4日(金曜日)より更新を再開する予定です。明年もおっさん商人をよろしくお願い申し上げます<m(__)m>
本日より某所で書き溜めてた『異世界転生軍師戦記 ~脳筋女将軍の知恵袋として乱世を生きる~』を投稿していきます。10万字のストックあるので、一ヵ月程度は毎日更新できると思いますので、おっさん商人が中断するお正月の暇な時間にご一読頂ければ幸いです。カクヨムコン4に参加しているので、カクヨムさんのアカウントある方は応援してもらえるとありがたい(*´Д`) ページ下記に作品リンクあります(`・ω・´)ゞ
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メラニアが戸惑いながらも拝礼をするジェネシスの手を取り起こしていく。
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「分かっています。アルガドの奴が余の姉に対して行った数々の非道を許す気はない。余は大事な身内を痛めつけた者を許す寛容さは持ち合わせておらぬのでな」
いやいや、分かってないだろ。絶対に。
今ここで王様とクレストン家の嫡男が揉めれば、政争の再発を招きかねない。そうなれば、再びメラニアやジェネシスの身が危険に曝されかねない。
「メラニアの件は一旦俺に預けてくれるとありがたい。絶対に悪いようにはしないから、頼む。ジェネシス」
メラニアの身柄も含め、アルガドとの決着を俺に一任してくれるようにジェネシスに頼み込む。
下手に動けば事はブラックミルズでは収まらなくなり、国中を巻き込んだ惨事に発展しかねないのだ。
俺の申し出を考え込んでいたジェネシスが口を開く。
「で、あれば、グレイズさんが我が姉の伴侶となるという条件をもって余がこの件に手出しすることを自重しようと思う。ただ、グレイズさんにはメリーさん始め、ファーマ、カーラさん、アウリースさん、セーラさんといった嫁候補がいるのは知っておるので、その中に余の姉であるメラニアを加えてもらえば良い。どうであろうか?」
「ジェネシス様!? 何をおっしゃっているのですか? わ、わたくしはグレイズ様に多大なるご迷惑をかけた女ですからっ! そのような申し出は困ります。これ以上グレイズ様にご迷惑をおかけするわけには……」
「分かった。メラニアの身柄は俺が預かる。嫁にするかどうかは確約できないが、絶対に命に代えて守ることは約束するぞ」
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俺はその手を握ると固く握手を交わす。
「つまり、メラニアさんはファーマたちと一緒に暮らすことになるってことかなー? カーラさん、それで合ってる?」
「正解。メラニア、私たちと一緒に生活。部屋割りしないと」
「なら、私と相部屋ですかね。まだお部屋空いてますけど」
「あたしもグレイズさんのお家で暮らしたいけどお父さんがダメって言うしな。いいなぁ、メラニアさん」
「あら、セーラ。お父さんと喧嘩して家出してきたって言えば、グレイズさんのことだから、部屋くれるわよ。とりあえず準備しておくから、いつでも来ていいわよ」
「本当ですか!? でも、お父さんも心配だし」
「別にいつもグレイズさんの家で住まなくても気が向いた時にくればいいのよ。そのために部屋は空けておくからね」
「メリー社長、オレは認めないぞ! グレイズにセーラをやるとは言ってね……むぐうぅうう!!」
激高したグレイが『おっさんず』の同僚二人に口を塞がれて羽交い絞めにされていた。
「メ、メリーさん~。ありがとうございます~。あたし、たまにお邪魔しますからぁ」
背後で別の話がメリー主導で決まっている気もしないでもないが、とりあえずメラニアの身柄を俺が預かることで、ジェネシスが暴走するのを止めることができた。
「グ、グレイズ様。わたくしはお世話になるわけには……」
「どうも、うちの同居人たちがメラニアのことを気に入っているみたいでね。悪いが一緒に住んでやってくれるとありがたい。嫁云々とか、ジェネシスの件は時間をかけて取り組んでいこうか。今のメラニアに必要なのは穏やかな生活だと思う」
「本当に一緒に居てよろしいのですか?」
「ああ、いいぞ。部屋はいっぱいあるしみんなもそのつもりだ。俺もな」
みんなが一緒に住みたいと言っているので、うちの部屋であれば自由に使ってもらうつもりだ。
街からの外れた郊外であるし、色々と街の人の誤認が解けるまでにも時間はかかると思われる。
その間、メラニアにはうちでゆっくりとしてもらうつもりであった。
「グレイズさん、姉上との子は余の親戚になるので、早めに顔見せを頼むぞ。王位を継承する可能性もあるからな」
「ジェ、ジェネシス様!?」
「な、なにを言っているんだっ! 別に俺はメラニアに手を出すつもりなんてないぞ!」
「余は期待しておるということだ。『英雄』グレイズさんが余の縁戚に連なるとなれば、王権の復興も捗るであろうな」
ジェネシスは朗らかに笑いながらも抜け目の無さを見せていた。
王家は宰相の庇護の元で生きながられてえていると噂されているが、ジェネシスの出奔により宰相との関係もこじれる可能性があることを示唆していた。
そのため、ジェネシスは俺の持つ人外の力に期待をしているのかも知れない。
「悪いが俺に王家を守るつもりはないぞ。王位を捨てた一介の冒険者であるジェネシスなら守ってやらんでもないが……」
「さすが、グレイズさんは頭が回るな。余の目論見は簡単に見抜いたか。まぁ、良い。グレイズさんの傍に姉上がいると思えば余も無茶をできる。最悪、王家は姉上が継げるからな」
ジェネシスがメラニアを俺に任せたのは、そこまでのことを視野にいれた上での申し出だったかと驚いてしまう。
「あら、うちのグレイズさんは仲間と認めた人は見捨てないですよ。ね? グレイズさん」
メリーが俺に対して目配せを送って来ていた。
最悪、宰相とクレストン公爵家を敵に回してでも王家を守ると言って欲しいらしい。
だが、俺には手に余る事案な気がしてならない。
「ファーマはジェネシス君のことは絶対に守るよー。偉い人とか関係なく、ファーマの大事な仲間だもん!」
「メラニアの弟なら、私たちの弟同然、弟守る、姉の務め当然」
「私も微力ながらお手伝いさせてもらいますよ。一緒に死線を潜り抜けた大切な仲間ですからね」
「せっかく会えた弟が死んだら、メラニアさんが悲しむと思うから、あたしも手伝う」
「この小僧がいたからこそ皆が悲観せずにここまで戻って来られたからな。オレらも手を貸すつもりだ」
「す、すみません。わたくしだけでなく弟まで皆様にご迷惑をかけて……。本当にすみません」
「って、言うのがみんなの意見だけど。どうする? グレイズさん?」
メリーが隣で俺を見て微笑んでいた。みんなにここまで言わせておいて、俺がジェネシスを切り捨てる訳にはいかなかった。
「だぁあああっ! 分かったよ。ジェネシス、お前も守ってやるよ。最悪、国と喧嘩する羽目になって街が一個消えても文句言うなよ!」
「グレイズさん……すまぬ。余のために」
「俺は王様のためにお前を守るんじゃない。『仲間』であるお前を守ると決めたんだ。だから、俺はお前を王とは呼ばない。ただのジェネシスだいいな。これが、俺がお前を守る条件だからな」
「良い、許す。今この場に集っておる者は余を名で呼ぶ特典を授ける」
固唾を呑んで成り行きを見ていた冒険者たちが、一斉に喜びの声を上げると、俺とジェネシスを胴上げしていた。
しかし、そんな喜びに包まれる俺たちのもとにヒタヒタと迫りくるモノがいたことにまだこの時の俺は気が付いていなかった。
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