206 / 232
王都編 グレイズ、冒険者ギルドに喧嘩を売る
9
しおりを挟む
「グレイズ殿は相変わらずの強運の持ち主ですな。さすが、超越者の腕輪の持ち主というところですな」
「な、何の話だ?」
初老のヒッグス・マイヤーはニヤリと笑っていた。
神器の話を知るのは、ブラックミルズの住人くらいしか知らないはずなのに、王都に住むこの男がなんで知っている。
「なんで知っているとかいう顔をされません方がよろしいですな。グレイズ殿のご活躍は情報に高い意識を持っている者の間では有名ですぞ。ですから、このわしも顔を見たくなり、あの場所まで押しかけたという次第でしたし」
「街道で馬車を転がしたのは、俺の顔を見るためだったと言うのか?」
「ええ、そうです。その時、グレイズ殿の人相を見て、わしの勘が囁きました。いずれ英雄となり神への道に入られる方だと」
「おいおい、それは買いかぶり過ぎだ。俺は確かに神器の所有者だが、しがない冒険者であり、一介の商人でしかない男だぞ」
「いいえ、貴方様は神器の所有者でありながら、孤独ではない。神に等しい力を持ちながらも、人であることを続け、人との交流を疎まれておられぬという稀有な資質を持ち合わせている方です」
ヒッグスが熱っぽい口調で俺を褒めるので、なんだかとてもこそばゆい気持ちである。
俺としては、いくら神器の力で超人になろうが、何度も失敗してきているし、全知全能の神などというところからは遠くかけ離れた存在のただの人間だ。
そして、ただの人間である俺は弱い生き物だ。
誰かに愚痴を聞いて欲しいし、誰かのために働きたいし、誰かと一緒に笑ったりもしたい、飯を食って騒いだりもしたい。
だから、パーティーメンバーたちやブラックミルズの住人、ジェネシスたちとも喧嘩もするが交流を続けているんだ。
こんな化け物みたいな力を持った俺が孤独に陥ったら、それこそアクセルリオン神が言ったダンジョン主になっちまう。
「ヒッグスさんの買いかぶりですよ。俺は神器の所有者ですけど、ただの弱い人間ですから人が恋しいんですって」
「わしも歴代のヒッグス・マイヤーも、多くの神器の所有者を見てきていますが、今のグレイズ殿のように言われたのは数名しかおられませぬ。そして、その数名はこの国の建国王を始め全て神への道を開いた者だったと記録されております。ですから、グレイズ殿にはこれからもこのままで突き進んで欲しいと願っております」
「多分、俺は死ぬまでこんな感じだと思いますよ。それに、俺が孤独に落ちようとも命を賭して救いに来てしまう彼女らがいるんでね。おちおちと闇落ちすることもできない身ですから」
俺は目の前でアルマを慰めているメンバーたちの姿を見て微笑んでいた。
彼女たちがいなければ、俺はすでに孤独に落ちて、神器の力に魅入られ、とうにダンジョン主になっていたかもしれなかった。
それを食い止めてくれたのは彼女たちの献身である。
「そのようですな。でしたら、早々に式を挙げられて逃げられないようにされた方が良いですぞ。歴代のヒッグス・マイヤーが残した神器の所有者で、婚約者に逃げられて闇落ちしダンジョン主になった者もおられますからな。早々に身を固める方に舵を切られた方がよろしいですぞ」
まさか、ヒッグス・マイヤーからも早期の結婚式を進められるとは思ってもみなかった。
婚約者に逃げられてダンジョン主か……。
チラリとみんなの姿を見る。
ま、まさかね……。
「い、一応、ご忠告として心に留めておきます」
「式を挙げられる際は、わしも参列させてもらいますぞ。それに色々とご支援もさせてもらいますので、なんなりとお申し付けください」
「いやいや、王都の影王とも言われるヒッグス殿に一介の冒険者の結婚式でご迷惑をかけるわけには……」
「いやいや、グレイズ殿の嫁にはブラックミルズ公爵で陛下の姉上にあたるメラニア様もおられるので、それなりの格式が必要でしょうし、遠慮せず申し付けてください」
そういえば、メラニアがいるんで結婚式となると、ジェネシス始め貴族たちも参列するのか。
まだ先のこととして忘れてた。
結婚式……挙げるにしても準備が大変そうだ……。
「そ、そうでしたな……。では、その節はヒッグス殿にもご助力を頂きましょう」
「それには及びません。グレイズ殿にもヒッグス・マイヤーの名を与えますので、各地の組織はご自由にお使い下さい」
「ちょっと!? ヒッグス殿? それはどういう意味です? 俺がヒッグス・マイヤーの名を持つということですか?」
「ええ、総領判断で与えます。グレイズ殿ならきっと組織の力をいい方に使うと判断しました。よって、組織の掟に従い有能な者へ名を与えることにしましたよ」
初老のヒッグス・マイヤーがさも当然とでも言いたげにそう告げていた。
王都で絶大な力を持ち、各地にも組織を持つヒッグス・マイヤーという共助組織のトップに当たる『ヒッグス・マイヤー』の名を俺に与えるとか、どうかしている。
「そ、そのような重大事を勝手に決めるとマズいのでは?」
「いいえ、すでに各地に散っているヒッグス・マイヤーたちとの議論はし尽くされました。グレイズ殿を迎え入れるのに反対する者はいません。正確にはさきほどの青年のヒッグス・マイヤーは除名処分が下っていたので、確認はしていませんが」
すでに議論を尽くしたとは……『ヒッグス・マイヤー』は相当に動きの早い組織なのだろうか……。
「この判断が下るまでに五年以上を要しましたからね。これ以上、議論することもないのです」
「五年以上? そ、そんな長期間です?」
「ええ、グレイズ殿が冒険者として活動を始められた頃から『ヒッグス・マイヤー』は、貴方が神器の所有者ではないかと思って捜査していたのです」
そ、そんな昔から……ムエルたちと冒険者を始めた頃からって……。
そんな時から俺を神器の所有者としてマークしていたのか……あの時だと、神殿長くらいしか知らなかったはず。
いったい誰がそんな情報を流しているんだろうか。
「『ヒッグス・マイヤー』はブラックミルズにも駐在員がいますので、彼を通して色々と情報が流れ込んでいます。ああ、大丈夫ですよ。悪い奴じゃないですし、結構貴方に近い人ですからご懸念なく」
「駐在員? 俺に近しい人だって?」
「ええ、本人からもバラしていいと言われてるので言いますが、ジェイミー君は『ヒッグス・マイヤー』のブラックミルズ駐在員ですので、彼を通してグレイズ殿の素行や実績、神器の所有者の有無といった情報が流れてきてました」
「え!? ジェ、ジェイミーですかっ!! あいつ、そんなこと一言も!」
「ああ、怒らないでやって下さい。彼も二〇年来の親友が神器の所有者らしいと知り、悩んでましたので……」
ジェイミーが冒険者ギルドのギルドマスターになった頃に俺が冒険者を始めたよな。
冒険の実績とパーティーメンバーの実力との差を感じ取って、色々と調べてのかも知れない。
「そ、そうだったのですか……」
「ですから、改めて申し上げます。グレイズ殿には『ヒッグス・マイヤー』の名を与えるので、存分にお使い下さい!」
「そこまで、言われるのでしたら謹んで『ヒッグス・マイヤー』の名をお引き受けいたします。この名を使い、この地に住む人の苦労を減らすことに身命を賭すことと致しましょう」
議論がしつくされているなら、断っても、どうせ与えられるはずと思い、俺は『ヒッグス・マイヤー』の名を引き受けることにした。
それに新しい冒険者ギルドと共助組織である『ヒッグス・マイヤー』が同一の組織と化していけば、より広範な共助組織になっていくと思われる。
それを作り出すのが俺がこの名を引き受けた大きな理由の一つであった。
「おぉ、やべーっすね。冒険者ギルドトップと全国共助組織トップを兼ねるグレイズさんに叛乱起こされたら、オレの首なんてすぐに飛んじゃうっすよ」
ジェネシスがそうおどけているが、周りから見たらそれを実行できるだけの力を与えられていた。
「そんな気はないし、それにジェネシスをそうならないように教育すればいいだろう。お前も頭はいい奴だし、いい王様になるようメラニアと教育していけばいい」
「そうっすね。グレイズさんはオレの義兄ですし、公式身分としては市井担当特任大臣とかいります? いや、どおせなら副王ってくらいにしときますか? 継承権三位ですし、欲しいなら上げますよ。ほら、オレ王様だし」
なんだか王都に来たことで話が大げさになってきてる気がするが、俺のやることはほとんど変わらん……はずだ。
「いらんぞ。これ以上役職をつけられても困る」
「あー、大丈夫っす! 肩書きなんてのは飾りですから、貴族連中にはよく効く薬になるんであって困るもんじゃないっすよ」
「いらん、いらん」
そう言って俺はその場から逃げ出すことにした。
後日、正式に新冒険者ギルドが発足し、俺がその新冒険者ギルド本部のギルドマスターに就任すると、同時に『ヒッグス・マイヤー』の名も与えられた。
同時刻にジェネシスの指示を忠実に実行したサイアス宰相からの布告が王都の民の眼に晒されていた。
『我が義兄グレイズ・ファルブラウを副王に任ずる』と書かれた立て看板が多数王都に立てられていたのだ。
してやられたと思ったが、王が出したものを撤回させるわけにもいかず、俺の肩書きには『副王』も追加されることになった。
そして、王都での目的の一つだったメラニアの養父母たちとの面会も、相手からは感謝されっぱなしで終始し、メリーたちは王都での仕入れ先を増やしてほくほく顔でブラックミルズへの帰路のつくことになった。
そんな俺たちの元にブラックミルズからの早馬が飛び込んできた。
冒険者ギルドから使者として送られてきた男が喘ぎながら口を開く。
「ま、街に魔物が流れ込んできています! 魔物は近隣で最近発掘された絶望都市から溢れ出している模様! ジェイミーさん以下、冒険者たちが総力を挙げて街に侵入した魔物の撃退には成功していますが、依然魔物は数を増やし、街道周囲に溢れ出しています! このままだとブラックミルズは物資が無くなり立ち枯れてしまいます」
その報告を受け、俺たちは大急ぎでブラックミルズに戻ることを決めた。
「な、何の話だ?」
初老のヒッグス・マイヤーはニヤリと笑っていた。
神器の話を知るのは、ブラックミルズの住人くらいしか知らないはずなのに、王都に住むこの男がなんで知っている。
「なんで知っているとかいう顔をされません方がよろしいですな。グレイズ殿のご活躍は情報に高い意識を持っている者の間では有名ですぞ。ですから、このわしも顔を見たくなり、あの場所まで押しかけたという次第でしたし」
「街道で馬車を転がしたのは、俺の顔を見るためだったと言うのか?」
「ええ、そうです。その時、グレイズ殿の人相を見て、わしの勘が囁きました。いずれ英雄となり神への道に入られる方だと」
「おいおい、それは買いかぶり過ぎだ。俺は確かに神器の所有者だが、しがない冒険者であり、一介の商人でしかない男だぞ」
「いいえ、貴方様は神器の所有者でありながら、孤独ではない。神に等しい力を持ちながらも、人であることを続け、人との交流を疎まれておられぬという稀有な資質を持ち合わせている方です」
ヒッグスが熱っぽい口調で俺を褒めるので、なんだかとてもこそばゆい気持ちである。
俺としては、いくら神器の力で超人になろうが、何度も失敗してきているし、全知全能の神などというところからは遠くかけ離れた存在のただの人間だ。
そして、ただの人間である俺は弱い生き物だ。
誰かに愚痴を聞いて欲しいし、誰かのために働きたいし、誰かと一緒に笑ったりもしたい、飯を食って騒いだりもしたい。
だから、パーティーメンバーたちやブラックミルズの住人、ジェネシスたちとも喧嘩もするが交流を続けているんだ。
こんな化け物みたいな力を持った俺が孤独に陥ったら、それこそアクセルリオン神が言ったダンジョン主になっちまう。
「ヒッグスさんの買いかぶりですよ。俺は神器の所有者ですけど、ただの弱い人間ですから人が恋しいんですって」
「わしも歴代のヒッグス・マイヤーも、多くの神器の所有者を見てきていますが、今のグレイズ殿のように言われたのは数名しかおられませぬ。そして、その数名はこの国の建国王を始め全て神への道を開いた者だったと記録されております。ですから、グレイズ殿にはこれからもこのままで突き進んで欲しいと願っております」
「多分、俺は死ぬまでこんな感じだと思いますよ。それに、俺が孤独に落ちようとも命を賭して救いに来てしまう彼女らがいるんでね。おちおちと闇落ちすることもできない身ですから」
俺は目の前でアルマを慰めているメンバーたちの姿を見て微笑んでいた。
彼女たちがいなければ、俺はすでに孤独に落ちて、神器の力に魅入られ、とうにダンジョン主になっていたかもしれなかった。
それを食い止めてくれたのは彼女たちの献身である。
「そのようですな。でしたら、早々に式を挙げられて逃げられないようにされた方が良いですぞ。歴代のヒッグス・マイヤーが残した神器の所有者で、婚約者に逃げられて闇落ちしダンジョン主になった者もおられますからな。早々に身を固める方に舵を切られた方がよろしいですぞ」
まさか、ヒッグス・マイヤーからも早期の結婚式を進められるとは思ってもみなかった。
婚約者に逃げられてダンジョン主か……。
チラリとみんなの姿を見る。
ま、まさかね……。
「い、一応、ご忠告として心に留めておきます」
「式を挙げられる際は、わしも参列させてもらいますぞ。それに色々とご支援もさせてもらいますので、なんなりとお申し付けください」
「いやいや、王都の影王とも言われるヒッグス殿に一介の冒険者の結婚式でご迷惑をかけるわけには……」
「いやいや、グレイズ殿の嫁にはブラックミルズ公爵で陛下の姉上にあたるメラニア様もおられるので、それなりの格式が必要でしょうし、遠慮せず申し付けてください」
そういえば、メラニアがいるんで結婚式となると、ジェネシス始め貴族たちも参列するのか。
まだ先のこととして忘れてた。
結婚式……挙げるにしても準備が大変そうだ……。
「そ、そうでしたな……。では、その節はヒッグス殿にもご助力を頂きましょう」
「それには及びません。グレイズ殿にもヒッグス・マイヤーの名を与えますので、各地の組織はご自由にお使い下さい」
「ちょっと!? ヒッグス殿? それはどういう意味です? 俺がヒッグス・マイヤーの名を持つということですか?」
「ええ、総領判断で与えます。グレイズ殿ならきっと組織の力をいい方に使うと判断しました。よって、組織の掟に従い有能な者へ名を与えることにしましたよ」
初老のヒッグス・マイヤーがさも当然とでも言いたげにそう告げていた。
王都で絶大な力を持ち、各地にも組織を持つヒッグス・マイヤーという共助組織のトップに当たる『ヒッグス・マイヤー』の名を俺に与えるとか、どうかしている。
「そ、そのような重大事を勝手に決めるとマズいのでは?」
「いいえ、すでに各地に散っているヒッグス・マイヤーたちとの議論はし尽くされました。グレイズ殿を迎え入れるのに反対する者はいません。正確にはさきほどの青年のヒッグス・マイヤーは除名処分が下っていたので、確認はしていませんが」
すでに議論を尽くしたとは……『ヒッグス・マイヤー』は相当に動きの早い組織なのだろうか……。
「この判断が下るまでに五年以上を要しましたからね。これ以上、議論することもないのです」
「五年以上? そ、そんな長期間です?」
「ええ、グレイズ殿が冒険者として活動を始められた頃から『ヒッグス・マイヤー』は、貴方が神器の所有者ではないかと思って捜査していたのです」
そ、そんな昔から……ムエルたちと冒険者を始めた頃からって……。
そんな時から俺を神器の所有者としてマークしていたのか……あの時だと、神殿長くらいしか知らなかったはず。
いったい誰がそんな情報を流しているんだろうか。
「『ヒッグス・マイヤー』はブラックミルズにも駐在員がいますので、彼を通して色々と情報が流れ込んでいます。ああ、大丈夫ですよ。悪い奴じゃないですし、結構貴方に近い人ですからご懸念なく」
「駐在員? 俺に近しい人だって?」
「ええ、本人からもバラしていいと言われてるので言いますが、ジェイミー君は『ヒッグス・マイヤー』のブラックミルズ駐在員ですので、彼を通してグレイズ殿の素行や実績、神器の所有者の有無といった情報が流れてきてました」
「え!? ジェ、ジェイミーですかっ!! あいつ、そんなこと一言も!」
「ああ、怒らないでやって下さい。彼も二〇年来の親友が神器の所有者らしいと知り、悩んでましたので……」
ジェイミーが冒険者ギルドのギルドマスターになった頃に俺が冒険者を始めたよな。
冒険の実績とパーティーメンバーの実力との差を感じ取って、色々と調べてのかも知れない。
「そ、そうだったのですか……」
「ですから、改めて申し上げます。グレイズ殿には『ヒッグス・マイヤー』の名を与えるので、存分にお使い下さい!」
「そこまで、言われるのでしたら謹んで『ヒッグス・マイヤー』の名をお引き受けいたします。この名を使い、この地に住む人の苦労を減らすことに身命を賭すことと致しましょう」
議論がしつくされているなら、断っても、どうせ与えられるはずと思い、俺は『ヒッグス・マイヤー』の名を引き受けることにした。
それに新しい冒険者ギルドと共助組織である『ヒッグス・マイヤー』が同一の組織と化していけば、より広範な共助組織になっていくと思われる。
それを作り出すのが俺がこの名を引き受けた大きな理由の一つであった。
「おぉ、やべーっすね。冒険者ギルドトップと全国共助組織トップを兼ねるグレイズさんに叛乱起こされたら、オレの首なんてすぐに飛んじゃうっすよ」
ジェネシスがそうおどけているが、周りから見たらそれを実行できるだけの力を与えられていた。
「そんな気はないし、それにジェネシスをそうならないように教育すればいいだろう。お前も頭はいい奴だし、いい王様になるようメラニアと教育していけばいい」
「そうっすね。グレイズさんはオレの義兄ですし、公式身分としては市井担当特任大臣とかいります? いや、どおせなら副王ってくらいにしときますか? 継承権三位ですし、欲しいなら上げますよ。ほら、オレ王様だし」
なんだか王都に来たことで話が大げさになってきてる気がするが、俺のやることはほとんど変わらん……はずだ。
「いらんぞ。これ以上役職をつけられても困る」
「あー、大丈夫っす! 肩書きなんてのは飾りですから、貴族連中にはよく効く薬になるんであって困るもんじゃないっすよ」
「いらん、いらん」
そう言って俺はその場から逃げ出すことにした。
後日、正式に新冒険者ギルドが発足し、俺がその新冒険者ギルド本部のギルドマスターに就任すると、同時に『ヒッグス・マイヤー』の名も与えられた。
同時刻にジェネシスの指示を忠実に実行したサイアス宰相からの布告が王都の民の眼に晒されていた。
『我が義兄グレイズ・ファルブラウを副王に任ずる』と書かれた立て看板が多数王都に立てられていたのだ。
してやられたと思ったが、王が出したものを撤回させるわけにもいかず、俺の肩書きには『副王』も追加されることになった。
そして、王都での目的の一つだったメラニアの養父母たちとの面会も、相手からは感謝されっぱなしで終始し、メリーたちは王都での仕入れ先を増やしてほくほく顔でブラックミルズへの帰路のつくことになった。
そんな俺たちの元にブラックミルズからの早馬が飛び込んできた。
冒険者ギルドから使者として送られてきた男が喘ぎながら口を開く。
「ま、街に魔物が流れ込んできています! 魔物は近隣で最近発掘された絶望都市から溢れ出している模様! ジェイミーさん以下、冒険者たちが総力を挙げて街に侵入した魔物の撃退には成功していますが、依然魔物は数を増やし、街道周囲に溢れ出しています! このままだとブラックミルズは物資が無くなり立ち枯れてしまいます」
その報告を受け、俺たちは大急ぎでブラックミルズに戻ることを決めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。