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第1部
#18 アクア編
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「やっぱりキャンディーは美味しいなぁ……」
殆ど誰も手を付けていない棒付きキャンディーの山に張り付いてから、どれくらい経っただろう。レイセン君には「自分とお菓子を食い散らかすモンスターを一緒にするな」とは言ったものの、もう半分も山を削ってしまっていた事に気がついて手を止めた。
「ん?」
「やっぱりケーキはうめーなぁ!! ……はっ!?」
ふと隣を見ると、僕よりも背の高い女性がケーキを食していた。手の内に収まらないくらい大きなケーキを、いとも簡単に、ひとくち、ふたくち、み──。
「…………」
「な、何でこっち見てるの」
女性は緋色の長い髪を棚引かせて、僕を睨む。
「それはその、えっと……よ、よく食べるなぁーと思って。だって、ケーキ三つともを一口で……」
「あーもう!! どうしてそれを言うんだよ!!」
僕はこの女性を否定するわけではない。しかし、大食い宛らの胃袋と、美貌とは裏腹に発せられる荒い口調が、僕を惑わせた。
「へ? 今なんて?」
「ごほんっ……な、なんでもない。……で、何? あんたもケーキ食べたいの?」
「一つ分けてくれない?」
「ああ、いいよ」
きっと情緒の上がり下がりが激しい人格なのだろう。僕は女性の手の先にあるデザートが、ナイフで切られていくのを眺めた。
「はい、どうぞ」
桃色のムースをふんだんに塗ったスポンジ生地の上に、ルビー色のナパージュが輝いている。横を覗くと、マカロンが埋め込まれていた。
「ありがとう、これは何て言うケーキ?」
「フランボワーズ」
「ふーん……。綺麗な色だね。食べるのが勿体無いくらいだ」
「そう? なんならあたしが食べてやろうか?」
女性は怪しい笑みを僕に見せながら、鼻の先がくっつきそうな距離まで顔を近づけた。僕は一歩後ずさり、無理やり口角を引き攣ってみせた。
「……ん??」
王国フォシルの本城から離れた場所にある時計塔。その鐘が、零時を知らせた。
「あ!! いけない。もうあたし帰らなきゃ」
ふと我に返った青い瞳の女性は、深緑色のドレスを翻して手を振った。
「朝まで踊らないの?」
「そんな訳ないでしょ。……急がないと、ママに怒られる。じゃあね」
「ああ……うん」
「…………」
僕は去っていく女性と、フランボワーズを交互に見つめただ、ひとこと。
「……変なの」
殆ど誰も手を付けていない棒付きキャンディーの山に張り付いてから、どれくらい経っただろう。レイセン君には「自分とお菓子を食い散らかすモンスターを一緒にするな」とは言ったものの、もう半分も山を削ってしまっていた事に気がついて手を止めた。
「ん?」
「やっぱりケーキはうめーなぁ!! ……はっ!?」
ふと隣を見ると、僕よりも背の高い女性がケーキを食していた。手の内に収まらないくらい大きなケーキを、いとも簡単に、ひとくち、ふたくち、み──。
「…………」
「な、何でこっち見てるの」
女性は緋色の長い髪を棚引かせて、僕を睨む。
「それはその、えっと……よ、よく食べるなぁーと思って。だって、ケーキ三つともを一口で……」
「あーもう!! どうしてそれを言うんだよ!!」
僕はこの女性を否定するわけではない。しかし、大食い宛らの胃袋と、美貌とは裏腹に発せられる荒い口調が、僕を惑わせた。
「へ? 今なんて?」
「ごほんっ……な、なんでもない。……で、何? あんたもケーキ食べたいの?」
「一つ分けてくれない?」
「ああ、いいよ」
きっと情緒の上がり下がりが激しい人格なのだろう。僕は女性の手の先にあるデザートが、ナイフで切られていくのを眺めた。
「はい、どうぞ」
桃色のムースをふんだんに塗ったスポンジ生地の上に、ルビー色のナパージュが輝いている。横を覗くと、マカロンが埋め込まれていた。
「ありがとう、これは何て言うケーキ?」
「フランボワーズ」
「ふーん……。綺麗な色だね。食べるのが勿体無いくらいだ」
「そう? なんならあたしが食べてやろうか?」
女性は怪しい笑みを僕に見せながら、鼻の先がくっつきそうな距離まで顔を近づけた。僕は一歩後ずさり、無理やり口角を引き攣ってみせた。
「……ん??」
王国フォシルの本城から離れた場所にある時計塔。その鐘が、零時を知らせた。
「あ!! いけない。もうあたし帰らなきゃ」
ふと我に返った青い瞳の女性は、深緑色のドレスを翻して手を振った。
「朝まで踊らないの?」
「そんな訳ないでしょ。……急がないと、ママに怒られる。じゃあね」
「ああ……うん」
「…………」
僕は去っていく女性と、フランボワーズを交互に見つめただ、ひとこと。
「……変なの」
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