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───アノ子と添野を引き合わせてから1週間が立った。
特に進展はないらしい。
昼休みに二度、三人でランチを取ったが、話も弾まず、添野の私に対する態度は相変わらずの素っ気のなさだった。
喫煙所で会う事が会っても元カレの件があり、ただ気まずいだけなので差し障りのない話しかしなかった。
……そんな日々が続く中、元カレが海外に戻るとの噂が耳に入る。
「余計なお節介なのよ!何でアンタから聞かされなきゃならないの!」
「たまたま知ったから教えてやったんだから、有難く思え」
喫煙所で出くわした添野に聞かされたのだ。
私と元カレの関係は、社内では同期の仲の良い女の子とアノ子の二人しか知らないはずなのだ。
社内では目立った行動も起こしてしなかったと思うし、元カレの噂と言えば社長令嬢との噂をほとんどの社員が信じてたのだから、私の事など蚊帳の外だった。
添野が知っているとしたら…情報提供はアノ子からなの?
「真っ青な顔しちゃって!可愛いね、…モモちゃん」
「な、何よ!そんな呼び方しないでよっ!」
不敵な笑みを浮かべてクスクスと笑っている底意地の悪い、目の前に居る男が憎らしい。
「前みたいにふわふわの髪の毛に戻したら?背伸びしたって、モモちゃんはモモちゃんなんだから…」
「はぁ?何で前の髪型を知ってるの?」
「さぁね?」
添野は灰皿で煙草の火を消しながらサラりと言って、颯爽と喫煙所から消えた。
私は精神的に崩壊しそうで二本目の煙草に火をつけようとしたが、ライターをカチカチと何度押しても火が点かない。
溜め息だけが溢れて、目尻に涙が溜まる。
思い出したくなかった元カレとの別れが無理矢理に回想されて、いてもたってもいられなくなる。
今度こそ、『さようなら』ときちんと告げよう。
誰と付き合っても、頭の中に元カレの存在がチラついている時点で消去出来てないのだと悟った。
社内で海外転勤になった元カレを探し出し、仕事の合間を見て使われてない会議室に呼び出した。
元カレは「モモ…」と言って優しく笑いながら私の事を抱擁しようとしたが、全力で拒否する。
「私、もう忘れたいから。きちんとさよならするね。それから…社長の娘さんと結婚するんだってね。おめでとうございます」
添野が元カレを知っていた事実に対して、アノ子に聞いて見たところ、話の流れで元カレが社長令嬢と結婚する為に一時帰国したと聞いた。
社長令嬢との噂は本当の事で、私の方が二股をかけられていた。
そんな事実も知らずに日々を過ごしていたなんて、私は何て馬鹿なのだろう。
「……一番好きなのは…好きだったのはモモだ。これだけは信じてくれ」
弱々しい態度で語る元カレに興味はなく、心底、疲労感だけが漂う。
裏切られて来たのだから、言葉に信憑性など感じられない。
「さようなら…お元気で」
長居しないように別れを切り出して会議室の扉を開ける。
もう振り回されなくて良いんだ。
過去に囚われずに前に進む為に元カレの姿を視界に入れないように振り向きもせず、会議室を後にした。
過去を清算したい。その為にやるべき事とは───……
「モモさん、髪型戻したんですね。可愛いですっ」
「気分転換にね…。ほら、元カレの件もあったでしょ?」
昨日の夕方、仕事を定時に切り上げて予約しないで入れる美容室へと向かい、昔みたいなふわふわウェーブに戻した。
周りからも評判は良く、アノ子も気に入ってくれた。
「今更だから言いますけど…先輩が元カレと別れて良かったと思ってます。先輩がボロボロになって、仕事に打ち込んでるのを見てて辛かったですもん!」
「……バレバレだった?」
「バレバレでしたよ!今度こそ、上手く行くと良いですよね」
「え?」
「添野さんなら一途だから大丈夫ですよ。だって、6年越しの片思いですからね」
「ん?」
「………今のは聞かなかった事にして下さいね。では、外回り行って来ます」
「あっ、はい…」
………………?
アノ子の言っている意味がよく分からない。
6年越しの片思い?
アノ子は朝から外回りの仕事があり、午後にならないと戻らないから今は聞けない。
気になるのに状況が分からない。
モヤモヤしたままデスクワークをこなし、お昼休憩の時間になった。
昼食を済ませ、喫煙所に向かうと中から添野が出てきた。
驚いた様子で私を見ては、右手で顔を隠して小さな声で「ヤバイ…」と呟いた。
「ヤバイって何よ!聞こえてるからね、私には。似合わないって言いたいの?」
「否、そうじゃなくて…。ちょっと、こっち来て…!」
添野に手を惹かれるままに同じ階にある会議室へと誘導された。
カチャリ。
中に入ると添野が何やら鍵を閉めた様だった。
「……率直に聞くが、お前、俺の事を本当に分からないのか?」
「えぇ、何の事だか分からないけれど、貴方には今年の春に会ったばかりよ!」
「そこまで断言されると悲しくなるけど…総務課に居た同期の眼鏡君を覚えてない?」
「眼鏡君?……何となくは覚えているわ。冴えない感じの人だったと思うけど、何か関係ある?」
眼鏡君には元カレと付き合い出した直後に告白されたと思う……、記憶が確かであればだけれども。
名前は……何だったのだろう?
「……何にも覚えてないんだ?それはそれで好都合でもあるけど…」
「はぁ?何が?」
「アノ子は俺の秘密を握って居るから近づきたかっただけで、何の興味もない」
「……ふぅん、そうなんだ」
秘密を握られてるから、顔が赤くなっただけなのか……。人の噂って適当なんだな…、だから噂なのかもしれないけれど…。
特に進展はないらしい。
昼休みに二度、三人でランチを取ったが、話も弾まず、添野の私に対する態度は相変わらずの素っ気のなさだった。
喫煙所で会う事が会っても元カレの件があり、ただ気まずいだけなので差し障りのない話しかしなかった。
……そんな日々が続く中、元カレが海外に戻るとの噂が耳に入る。
「余計なお節介なのよ!何でアンタから聞かされなきゃならないの!」
「たまたま知ったから教えてやったんだから、有難く思え」
喫煙所で出くわした添野に聞かされたのだ。
私と元カレの関係は、社内では同期の仲の良い女の子とアノ子の二人しか知らないはずなのだ。
社内では目立った行動も起こしてしなかったと思うし、元カレの噂と言えば社長令嬢との噂をほとんどの社員が信じてたのだから、私の事など蚊帳の外だった。
添野が知っているとしたら…情報提供はアノ子からなの?
「真っ青な顔しちゃって!可愛いね、…モモちゃん」
「な、何よ!そんな呼び方しないでよっ!」
不敵な笑みを浮かべてクスクスと笑っている底意地の悪い、目の前に居る男が憎らしい。
「前みたいにふわふわの髪の毛に戻したら?背伸びしたって、モモちゃんはモモちゃんなんだから…」
「はぁ?何で前の髪型を知ってるの?」
「さぁね?」
添野は灰皿で煙草の火を消しながらサラりと言って、颯爽と喫煙所から消えた。
私は精神的に崩壊しそうで二本目の煙草に火をつけようとしたが、ライターをカチカチと何度押しても火が点かない。
溜め息だけが溢れて、目尻に涙が溜まる。
思い出したくなかった元カレとの別れが無理矢理に回想されて、いてもたってもいられなくなる。
今度こそ、『さようなら』ときちんと告げよう。
誰と付き合っても、頭の中に元カレの存在がチラついている時点で消去出来てないのだと悟った。
社内で海外転勤になった元カレを探し出し、仕事の合間を見て使われてない会議室に呼び出した。
元カレは「モモ…」と言って優しく笑いながら私の事を抱擁しようとしたが、全力で拒否する。
「私、もう忘れたいから。きちんとさよならするね。それから…社長の娘さんと結婚するんだってね。おめでとうございます」
添野が元カレを知っていた事実に対して、アノ子に聞いて見たところ、話の流れで元カレが社長令嬢と結婚する為に一時帰国したと聞いた。
社長令嬢との噂は本当の事で、私の方が二股をかけられていた。
そんな事実も知らずに日々を過ごしていたなんて、私は何て馬鹿なのだろう。
「……一番好きなのは…好きだったのはモモだ。これだけは信じてくれ」
弱々しい態度で語る元カレに興味はなく、心底、疲労感だけが漂う。
裏切られて来たのだから、言葉に信憑性など感じられない。
「さようなら…お元気で」
長居しないように別れを切り出して会議室の扉を開ける。
もう振り回されなくて良いんだ。
過去に囚われずに前に進む為に元カレの姿を視界に入れないように振り向きもせず、会議室を後にした。
過去を清算したい。その為にやるべき事とは───……
「モモさん、髪型戻したんですね。可愛いですっ」
「気分転換にね…。ほら、元カレの件もあったでしょ?」
昨日の夕方、仕事を定時に切り上げて予約しないで入れる美容室へと向かい、昔みたいなふわふわウェーブに戻した。
周りからも評判は良く、アノ子も気に入ってくれた。
「今更だから言いますけど…先輩が元カレと別れて良かったと思ってます。先輩がボロボロになって、仕事に打ち込んでるのを見てて辛かったですもん!」
「……バレバレだった?」
「バレバレでしたよ!今度こそ、上手く行くと良いですよね」
「え?」
「添野さんなら一途だから大丈夫ですよ。だって、6年越しの片思いですからね」
「ん?」
「………今のは聞かなかった事にして下さいね。では、外回り行って来ます」
「あっ、はい…」
………………?
アノ子の言っている意味がよく分からない。
6年越しの片思い?
アノ子は朝から外回りの仕事があり、午後にならないと戻らないから今は聞けない。
気になるのに状況が分からない。
モヤモヤしたままデスクワークをこなし、お昼休憩の時間になった。
昼食を済ませ、喫煙所に向かうと中から添野が出てきた。
驚いた様子で私を見ては、右手で顔を隠して小さな声で「ヤバイ…」と呟いた。
「ヤバイって何よ!聞こえてるからね、私には。似合わないって言いたいの?」
「否、そうじゃなくて…。ちょっと、こっち来て…!」
添野に手を惹かれるままに同じ階にある会議室へと誘導された。
カチャリ。
中に入ると添野が何やら鍵を閉めた様だった。
「……率直に聞くが、お前、俺の事を本当に分からないのか?」
「えぇ、何の事だか分からないけれど、貴方には今年の春に会ったばかりよ!」
「そこまで断言されると悲しくなるけど…総務課に居た同期の眼鏡君を覚えてない?」
「眼鏡君?……何となくは覚えているわ。冴えない感じの人だったと思うけど、何か関係ある?」
眼鏡君には元カレと付き合い出した直後に告白されたと思う……、記憶が確かであればだけれども。
名前は……何だったのだろう?
「……何にも覚えてないんだ?それはそれで好都合でもあるけど…」
「はぁ?何が?」
「アノ子は俺の秘密を握って居るから近づきたかっただけで、何の興味もない」
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