悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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 週末に家に戻ったイライザは、夕食時の食堂や、夕食後に家族でサロンでお茶を飲んでいる時、妹のブリジットの姿をじっと眺めていた。
 イライザとは違う、茶色の髪の毛、ヘーゼルの瞳。
 顔立ちはイライザと似ている。イライザほど華やかではないが、イライザほどキツイ印象もない。
 ロイ殿下がブリジットを好き、かあ。
 ブリジットの方は何かロイ殿下に特別な気持ちってあったりするのかしら?
「…何?何か言いたい事があるなら言えば?」
 イライザの座るソファの斜め向かいに座ったブリジットが紅茶のカップを持ったまま、訝し気にイライザを見ながら言う。
「ブリジット」
 兄アドルフがブリジットを止めるように言う。
 これ、今までのイライザなら「姉に向かってその口の聞き方は何よ!?」からの口喧嘩勃発間違いなしだわね。
「だってお兄様…」
「私、喧嘩を売るつもりはないし、買うつもりもないわ」
 イライザがそう言うと、ブリジットとアドルフ、父と母、その場に居た侍女や執事までもが「信じられない」という表情でイライザを見た。

 …まあ信じられないのも無理はないでしょうけど…それにしても、そんなに?
「じゃあ何でそんなに私の事見てるのよ?」
 眉を顰めてブリジットが言う。
「言いたい事と言うか、聞きたい事があって」
「聞きたい事?」
 ブリジットは一体何を聞かれるのか身構えていた。

「ブリジットって、ロイ殿下と接点があるの?」
「…は?」
 イザベラが発した言葉が予定外すぎたので、ブリジットは驚いて目を見開いてイライザを見る。

「ロイ殿下と…何?」
「接点があるのかどうか」
「何でそんな事が気になるのよ?あ!もしかして、ロイ殿下が最近グレイ殿下に似て来たって評判だし、グレイ殿下に嫌われてるからロイ殿下に乗り換えようとしてるとか?」
「なっ!?何言ってるの!?確かにグレイ殿下は超絶格好良いし、ロイ殿下がグレイ殿下に似て来たとなと思うけど、別に私、グレイ殿下の顔を好きになった訳じゃないんだから、乗り換えたりしないわよ!」
 思わずソファから立ち上がってイライザは言った。

「…あ。そう」
 イライザの迫力に気圧されたようにブリジットは頷く。
「そうよ」
 ふんっと鼻から息を吐くイライザ。

「じゃあ何でロイ殿下と私の接点なんて知りたがるの?」
 不審そうな表情。
 うーん、今まだロイ殿下がブリジットを好きとか、婚約とか話す段階じゃないわよねぇ。
 お父様お母様も、ロイ殿下の意向を聞いてしまったら何らかの対応を迫られるだろうし。
 それに何より、現状ロイ殿下の赤い糸の相手、ブリジットじゃないし。
「この間、ロイ殿下が花壇のお世話をされてる時、偶然会って少し話したら、会話の中にブリジットの名前が出て来たの。だから接点があったかしら?と思ったのよ。深い意味はないわ」
「ロイ殿下と偶然会って話した?殿下が自分の兄に付き纏ってる女と世間話をされたと?」
 ますます不審そうな表情をするブリジット。
「今は付き纏ったりしてないもん」
 拗ねたように唇を尖らせるイライザ。
 現にアレックス様にクッキーを渡した時以来グレイ殿下とは顔を合わせてないし。学園でお見掛けした時も見つからないように隠れてるし。
「確かに最近学園で騒ぎになっているのは見聞きしないけど…付き纏うのをやめたなんて俄に信じられないわ」
「信じられなくて当然よ。でも私、生まれ変わったの」
「…は?」
 ブリジットが眉を顰めて首を傾げる。
 
「イライザ、お前…死に掛けて改心したと言っていたが…本気なのか?」
 同じように眉を顰めたアドルフが言い、父と母も首を傾げていた。
「やめてよ!」
 ブリジットが叫ぶ。
「「ブリジット?」」
 イライザとアドルフが同時にブリジットの方を見る。
 ブリジットは紅茶のカップを手に取ると、カップごとイライザへ向けて投げつけた。
 カップはイライザの頬を掠めて床に落ちるとパリンッと音を立てて割れ、カップの中身はイライザの髪と顔を濡らす。
「今更何よ!改心?生まれ変わっだなんて誰が信じるの!?今更改心するくらいならそもそもグレイ殿下に付き纏ったり、ミア・サンライズを虐めたりしなければ良いじゃない!そのせいで私がどれだけ迷惑したか!私にもお兄様にも酷い事ばかり言って…そんな都合の良い事言っても、私は絶対に許さないから!」
 ブリジットは一息にそう言うと、サロンから出て行った。

 イライザの髪からポタポタと雫が落ちる。
「…冷めてて良かったわ」
 思わず呟くイライザに、侍女が駆け寄って手布で拭こうとすると、アドルフが侍女の手から手布を取り、イライザの髪を拭いた。
「お兄様?」
「紅茶を掛けられても怒らないなら…改心したと言うのは本当なのかも知れないな」
 イライザを信じて良いのか、アドルフはイライザの様子を見ながら髪から頬を拭いていく。

 その時、イライザの頬に指が触れ…イライザの身体はピンクの光に包まれた。



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